竜の神様、火力は十分。
カフェに入ったと思ってたのに、オミさん達の行ったお店はただのビルに変わっていた。
私はというと、さっき私を見ていた嫌な視線を感じたお店をそっと振り返る。目玉‥は、見えないけど、視線をそこかしこから感じる。
まずい。
これはまずい。
何がどうまずいとは言えないけど、これはすごく刺すような視線だ。
胸がドクドクして、思わず手の甲のトカゲのようなマークを見る。
赤いトカゲのマークは、何も変化がない。
だよねー、これ‥契約者の証だけらしいし。
街中を沢山の人達が歩いているけれど、その人と人の間から、ジッと誰かがこちらを見ている視線にゾワゾワと寒気がする。
ここを離れた方がいい?
でも、どこへ行けばいいんだろう。
周囲を見回すと、公園が見えたのでそちらへ走って行く。
そうすると、人と人の間から受けていた視線が真っ直ぐに自分を追いかけてくる感覚がして、慌てて公園の中へ走って行く。ま、まずい!!どんどんこっちへ来てる感じがする。
「ううっ、お、オミさん〜〜!!!」
なんでこんな時に限っていないんだよ〜〜!!
タタッと公園の中へ入って行くと、周囲は芝生が一面に広がっている公園で、皆思いおもいに遊んだりのんびりしている。どこへ逃げればいいだろう。ふと横に東屋があるのが見えて、そちらへ隠れるように駆け込んだ。
と、視線が自分を見失ったのか、
急に楽になって、東屋の影に隠れてホッと息を吐く。
「これからどうしよう‥」
オミさんの入ったカフェはビルになってたし‥。
もしかして帰ってしまったんだろうか?でも、修行は終わったのか、そもそも始まっているのかも分からないし‥。
そんなことを考えていると、今まで周囲から人の声や車の排気音、雑踏の音が聞こえていたのに、無音になった事に気付く。
音が、してない?
ハッとして顔を上げると、東屋の屋根の上から黒い長い髪がスルスルと降りて来て、真っ黒な顔に目玉だけがギョロギョロと光ってこちらを見ているのに気付いた。
しまった!!
いつの間にかこっちへ来てた!??
黒い長い髪のお化けのようなものが、こちらへものすごい勢いで飛びかかってくる。
「「青葉さん!!!伏せて!!」」
誰かの声に思わず頭を抱えてしゃがむと、真っ白い丸い球体が私の体を包んで、黒いお化けのようなものが吹き飛ばされた。
「えっ‥」
びっくりして、目を開けてそちらを見ると、黒いお化けはクルッと一回転して地面に着地したかと思うと、私をじっとりと見てまた近付こうとしている。こ、こっちに来ないで〜〜!!!急いで逃げようとすると、
私の足元にコロコロと白いお饅頭‥ならぬ、言の葉の神様の使いの「まる」がちょこんと私を見上げている事に気付いた。
「ま、まるさん???」
「あらあら可愛らしい呼び方ですねぇ。うふふ、嬉しいです」
「ど、どうも??じゃない!!あ、あの黒いのが‥」
「大丈夫ですよ〜。もういらっしゃいましたから!」
何がいらっしゃったの?
そう思った瞬間、ものすごい火柱が黒いお化けを焼き尽くすかのように、轟音と共に立ち上がった。
「「え、えええええええっっっ!!!!!」」
「おやおや、やはり火竜の威力は桁違いですねぇ」
火竜??
って、ことはオミさん??
私が火柱の方を見ると、その中から鬼のような形相のオミさんが出てくる。で、出た〜〜〜!!!!??怖い!!!オミさん、鬼そのものなんだけど!!!!
私が思わずまるさんを手に持って、守るようにあとずさると、
まるさんはニコニコして、
「うふふ、守って貰える体験なんて初めてです!」
って喜んでるけど、そ、そうじゃないというか、なんというか?!!
怯えている私の事を構う事なく、オミさんがツカツカとこちらへ駆け寄るようにやって来ると、まるさんを持っている私ごと、ガバッと抱きしめた。
「っへ?」
思わず間の抜けた声が出ると、オミさんがちょっと離れて私の顔を見る。
「「アホか!!!なんで離れて行くんだよ!!!」」
「ええええ!!!なんで怒られるんですか!?」
全くもって意味が分からない!
両手に持っているまるさんが「あらあら、心配されてたんですね〜」なんて言うけど、ま、まるさん助けて‥。意味がわからないよ〜〜〜。




