竜の神様、モノの神様修行をする。8
結局、その晩は蛇神様が「ハンバーグ食べたいのう!」の一言で私とシキさんで、分厚いハンバーグを作った。オミさんも参加したがったけど、自分だけものすごく大きいのを作ろうとしたので、お風呂掃除をお願いした‥。
しっかり大きなハンバーグを3つも食べて、こっちは胸焼けしそうだったけど‥、隣の蛇神様も同じくらい食べてた。‥神様の胃袋って大きいのか?たんまり食べて満足そうな顔で蛇神様は帰って行った。
お風呂から上がって、オミさんに黒いもやのことを聞こうと思ってリビングへ行くと、オミさんはすでにコタツの中で撃沈していた‥。
「オミさん、ほら布団で寝ましょうね」
「眠い‥」
「わかります、わかりますけど私の力ではオミさんを運べません」
流石にコタツの中で寝るのは良くない。
できるかな〜?と思って、オミさんの両脇に腕を差し込んで、ぐっと引っ張るけど‥重い!!!
「うう〜〜〜!!!」
ググッと引っ張るけど、全然ビクともしない。
と、オミさんの体が小さく震えてる。
「お、オミさん?!」
心配して声を掛けたら、笑いを堪えながらオミさんが私を見る。
「いや、どーやっても無理だろ」
「起きてるなら早く言ってください!!」
「はいはい」
全くもう!!人が心配してコタツから出すのをちょっと頑張ってみたというのに!オミさんの体から腕を離して立ち上がろうとすると、オミさんは私の体を事も投げにヒョイッと自分の腕の中に抱きしめた。
「お、オミさん!!??」
驚いて、体がカチッと固まる私の肩にオミさんが自分の顎をのせる。ちょ、ちょっと!!恥ずかしいんですけど?!でも、オミさんはそんな私の様子を気にする事なくのんびりしている。
「文化祭、明後日だよな」
「あ、はい」
「絶対行くから。み、ミニスカは着るなよ」
「普通のワンピースですってば」
「‥蛇神だから、何か企んでいそうで怖ぇ‥」
「神をも恐れさせる蛇神様、すごいですね」
オミさんは私の言葉に、確かにとばかりに頷くので吹き出してしまった。‥けど、オミさん大好きなんだけどね、蛇神様。笑っていると、オミさんは私の体をぎゅうと抱きしめるので、顔が一気に赤くなる。あ、あの〜〜??本当にお付き合いをしてからというもの、こう、甘えられると気恥ずかしいんですけど‥。
と、オミさんが風呂上がりの私に向かって、
「長谷の匂いがする」
「へっ!!?」
「今日、一緒だったのか?」
「まぁ、一緒に作業はしましたけど‥」
そう言うと、オミさんは眉間にシワを寄せる。
「くそ‥、人がいねーと思って‥」
「神様らしかぬ言動をしないで下さい。長谷君、今日は庇ってくれたんですよ」
「庇った!?何があったんだ?」
まずい!!
オミさんから殺気が溢れ出てる!!!
慌ててオミさんの方を首をなんとか曲げて、見上げる。
「いや、ちょっとあったけど、何事もなく平穏に今日という日を終えられたので!ご心配には及びません!」
「じゃあ、何があったかも言えるだろ?」
「くっ!!!誤魔化されて!!!」
「アホか!!そんな簡単に誤魔化されるか!」
うう〜〜、なんて言って誤魔化そうかなぁ‥そう思っていると、玄関の扉がガラガラと開く音がする。
「ルディオミ様、狐です〜〜!!いなり寿司を作って参りましたぁ!」
「ルディオミ様、兎ですーー!!私は美味しいケーキ持って参りました!」
‥こんな夜更けに、女の子達の声。
思わずオミさんをじとっと見る。‥本当、モテモテで大変ですね。
「‥青葉?」
「なんでもないですよ?どうぞ、神様お呼び出しですよ」
「‥怒ってるだろ」
「怒ってませんよ?ほら早く行かないと失礼ですよ?」
「‥行かねー‥」
「じゃあ私が応対します」
「そ、それは危険だからやめておけ!!」
じゃあどうするつもりなのだ。
女の子達は「私が先に持ってきたのに!」とか「あんたは後よ!」って、構わず言い合っているあれをどうするのだ‥。
‥毎回毎回、結婚するのは青葉だってオミさんは言ってくれるけど、言ってくれるけども!私だってそれなりにちょっと複雑なんですけど?!
そう思った途端、積もっていた不安とか、不満がつい弾けてしまった。
「‥オミさんなんか知りません」
ボソッと呟いて、私はスクッと立ち上がると、目を丸くして体の動きを止めたオミさんを置いて、スタスタと寝室へ行くとベッドに倒れ込む。‥ちょっと置いていかれた子供みたいなオミさんの顔が瞼にちらついて、その度に胸がモヤモヤしたけれど、それを必死に振り払うように毛布を被って目を瞑った。




