竜の神様、モノの神様修行をする。7
文化祭の準備を終えて、今日はシキさんがお迎えだ。
毎回何かあるとシキさんが来てくれて申し訳ないんだが、オミさんと蛇神様が心配しているから‥と、言ってくれるのでもう甘えてしまう事にした。
「シキさん、今日もすみません」
「いえ、本当ならばルディオミ様本人が来たい所でしょう。こちらは役得です」
何が役得なんだろう??
不思議に思いつつも、力を使ってあっという間に家の前に辿り着く。
いつもは狐や兎、タヌキの子も加わって、「結婚して!!」と言われているのに、今日に限って家が静かだな?首を傾げていると、シキさんが小さく笑う。
「今日は、言の葉の神様の所へ手鏡を受け取りに行きました。すぐに戻りますよ」
「鏡‥、あ、あれか!」
「ええ、なのでルディオミ様がお戻りになるまではこのシキ、青葉様をお守り致します」
ニコッと微笑んでくれるけど‥、いや、本当重ねがさねすみませんね。
しかし「モノ」の神様って、やる事が本当に多いんだな。なんだか本当にオミさんにおんぶに抱っこみたいで‥、何か手伝えたらいいのにな‥。
力は大してないのに、怖いのとか悪食に狙われるし‥、良い方法ないかなぁ〜。シキさんに家に入ってもらってお茶を飲みつつ悪食の話をすると、シキさんは少し考え込む。
「なるほど、悪食を祓う力ですか」
「シキさん、方法って知ってます?」
「そうですね‥」
「なんじゃ!!わしの出番か?!」
急に蛇神様がリビングに突入してきたので、思わずお茶を吹いた。きゅ、急に出てこないで?!!驚くから!!ゴホゴホとむせていると、シキさんが慌てて背中を撫でてくれた。す、すみません!!
そんなことを気にせず蛇神様はコタツにスルッと入って、
「まぁ、お主も祓えれば便利だけどのう。まだ人間だし、あやつのようには出来ない」
そ、そうなのか‥。
思わず俯くと、蛇神様が「だけど‥」と言葉を続ける。
「お主に、一つ「物」の声を聞こえるアイテムをやろう」
「物の?」
「そう。大概は力を持った「モノ」がここには来るが、力を持つ前の「物」の気持ちを解消出来れば、少しは助けになるかもしれんぞ?」
オミさんの助け‥。
いつも頼ってばかりのオミさんを助けられるなら、それは願ったり叶ったりだ。小さく頷くと、蛇神様はニマッと笑う。
「それじゃ、これをやろう」
蛇神様は、私の腕に細い銀色のブレスレットを留める。
真ん中にアクセントなのか薄いピンクの花が付いていて、なかなか可愛い。蛇神様はそのピンクの花を指差して、
「その花を指で擦ると、声が聞こえる。もう一度擦れば声が聞こえなくなる。ずーっと声を聞いていると疲れるからの。嫌な気配がしたら、擦ってみて周囲の声を聞いてみるといい」
「あ、ありがとうございます!」
「うむうむ、素直な反応がなんともいいのう」
私はもう一度手首のブレスレットを見つめる。
これがあれば大学の黒いもやの原因も分かるかな?
そうしたらオミさんを助けられるかな?そう思ったらちょっとワクワクしてしまう。私のそんな顔を見て、蛇神様は満足そうに笑う。
「そういえば、文化祭は明後日じゃったな?」
「はい。あ、そうだ‥これ招待状です」
「やったー!!シキ!当日はどデカイカメラを持っていくぞ!」
「ど、どデカイ‥」
「うむ、衣装はな、今日持ってきたぞ!これなら竜の子もうるさくないだろう!」
そう言って出してくれた衣装は、
猫耳のカチューシャに、ピンクのワンピース、ご丁寧に尻尾もついてる‥。
「えーと、もしやこれは猫ですか?」
「色々考えたんじゃよ?アリスの姿も可愛いなぁとか、兎の燕尾服をワンピース風なのもいいな!とか、やはりここは女王の華やかなドレスかな!?とか考えたんだがのう、せっかくだし何着かやはり送って‥」
「いえ、これで十分です!!ありがとうございます!!」
これ以上悩ませてしまったら、私はとんでもないことになりそうだ!!
力一杯止めて、冷蔵庫のプリンを渡すとようやく静かになってくれた‥。
よし!多分、蛇神様はこれできっと大丈夫?シキさんをチラッと横目で見ると、静かに頷いてくれたので、ホッと息を吐くとオミさんが帰ってきた。
「今帰った‥、あー疲れた」
「オミさんお帰りなさい」
オミさんに声を掛けると、私の腕の中の衣装を見て、ぎくっとした顔をする。
「そ、それ‥」
「あ、はい!蛇神様からの衣装です!今回は猫耳付きなんですよ」
そう言って、猫耳のカチューシャをつけてみせるとオミさんが目を丸くする。
「え、変ですか?」
「‥い、いや、その、」
「なんじゃ竜の子〜、素直に可愛いと言えんのか〜?」
「うっせぇ!!外野がいなけりゃ言うっつーの!!!」
オミさんの言葉に今度は私が目を丸くなるし、顔もついでに赤くなる。
そんな私の様子に蛇神様はニヤニヤするし、オミさんは「もう帰れ!」って怒鳴るのだった‥。




