竜の神様、友達が来る?
繁華街に着くと、オミさんは人の多さに驚いている。
うちの街も、それなりに人はいるけど、ここまでごった返す事はないしなぁ。オミさんの所にはこんなに人がいないのかな?
「オミさんの所は、こんなに人がいないんですか?」
「種族がそもそも少ないからな」
「そうなんだ‥。街はないんですか?」
「街はあるけど、こんな祭りの時みたいにはならねぇな」
「‥今日は祭りではないですよ?祭りになったら、もっと増えます」
私の言葉にオミさんの目が丸くなる。
そうか‥、イベントがあった時のすし詰めみたいな状態、後でスマホで見せてあげよう。更に驚きそうだ。
「まだ時間もありますし、街の中を歩いてみますか」
「‥おう、アイス食いてえ」
「食い気か!!」
じゃあ、どこかにアイス屋さんがあったはずだし‥、そう思ってスマホで検索していると、
「「ルディオミ!!!」」
へ?
オミさんを呼ぶ声がして、私とオミさんが声のした方を見ると、
褐色の肌にスタイル抜群の金髪美女が、こちらに笑顔で手を振ってやって来る。
う、うわぁあああああ!!モデルですか?!!
びっくりして目を見開くと、その美女はオミさんの腕に、自分の腕を絡めてじっとりと見上げる。
「もう!急にこっちに送られたって言うから、驚いちゃった!」
「‥なんで勝手に来てるんだよ。サッサと帰れ」
美女に腕を組まれても、サラッと返すオミさんにまたも驚いた。
もうちょっと照れるのかと思ったけど、全然平気なんだ!?
なんかちょっと意外だ。美女さんは帰れって言われてるし、もしかして神竜の国から来た神様の一人なのかな?
帰れと言われたその美女は、私をチラリと見る。
「ねぇ、私も一緒に遊んでもいいわよね?」
「え、ええと???」
お、オミさーーーん!!??
どうすればいいの??私はオミさんを見ると、美女をギロッと睨んで、
「ダメだ帰れ!勝手にこっちに来てるってバレたら叱られるだけじゃすまねぇぞ」
「じゃあ、少しだけ!ね、そこでお茶でも飲みましょう!」
そう言って、オミさんの腕をグイグイ引っ張って行こうとする。
金髪美女の押しがすごい‥。
「オミさん、私そこらの店で買い物してるからお茶して来なよ」
「「なっ、俺はお前と離れるのはダメで‥」」
「でもこの街にいれば大丈夫でしょ?せっかく訪ねに来てくれたのに‥」
「お前はっ、へ、平気なのかよ‥」
吐き捨てるようにそう言って、オミさんは私をジトリと睨む。
平気も何も‥。
そんな美女に捕まっていても平然としてるオミさんのが平気なのか?って私は思うけど‥。金髪の美女は、にっこり笑ってオミさんを見上げる。
「ね、ルディオミ、そこのお店にしましょう。貴方、そこの店に私達はいるから」
「あ、は、はい」
「「おい!俺はいいなんて一言も言ってねぇぞ!!」」
オミさんは、イライラした表情を隠さない。
でも美女は一緒にいたがってるし、私はどうすりゃいいのだ。美女は有無も言わせず連れて行こうとするので、私はそれを呆然と見送るしか出来ない。
チェーン店のカフェに入っていく姿を見て、私はちょっとため息が出る。
まぁ、あまり離れないようにすればいいか?
一応お店が見える距離の店に、私は入っていく。
ここ最近、何があろうとオミさんがくっ付いていたので、久々の開放感だな!!シャンプーとか新しい香りの買っちゃおうかな!と、ワクワクするけど‥、あのデカイ体が側にいないと視界が良好で、ガラ空きの隣を見て‥なんだか心にぽっかりと穴の開いた気分になる。
‥なんだこれ、寂しい‥なんて、引っ越して来た時以来だな。
シャンプー、ワクワクしながら物色してたのに‥。
急にシャンプーの香りに興味を失って、持っていたシャンプーのボトルを棚に戻そうと思って手を伸ばした時、背中がゾワりとする。
この間の時のような、嫌な視線。
周囲を見るけれど、何もいない。
ドキドキしながらシャンプーを棚に置いて店を出ようとした時、
棚の隙間ある黒い空間の中に目玉だけがこちらをギョロリと見ているのに気付いた。
「え‥」
慌ててシャンプーを他の場所に置いて、店から急いで出てきた。
なっ、なんだあれ!!なんだあれ〜〜!!!!
これはオミさんの所へ戻ったほうがいいと思って、オミさんのいるカフェを見ると、店がない!!なんで??さっきまでカフェだったじゃないか!??なんでただのビルになってるの?




