竜の神様、モノの神様修行をする。
オミさんと新しい家に引っ越しをして、シキさんと蛇神様とお蕎麦を食べ終え、まったりしていると‥、
「ルディオミ、お前さん神の修行をしておくか」
「はぁああ!?」
「まぁ、まだ神にはなってないが、その前にできる修行をしておけば、3月結婚早々に青葉と離れ離れにならなくてすむぞ?どうする?」
そ、そうだったの?
結婚早々、離れて修行!?
驚いたけど、夏休みにそういえばちょっと離れて修行に行った事を思い出して、隣に座るオミさんを見上げると、オミさんは私をチラッと見てから蛇神様を睨むように見る。
「‥すりゃいいんだろ‥」
「うむ!話が早くて助かる!!では明日から修行開始だ!!」
「早ぇ‥」
「あと簡単なモノが相談に来るかもしれんから、頑張れよ!」
「早いだろーが!!まだ神じゃねーってのに!!」
「うむ、精進しろよ!」
拒否権一切無しだな。
神様の世界って、結構強引なんだな‥。
驚いている私を横目に、蛇神様はサクッと修行の約束を取り付けると、シキさんと一緒に軽やかに帰って行った‥。勢いは完全に嵐だけど。
ポカーンとする私をオミさんがちょっとブスくれつつ私を見る。
「お前は?」
「へ?」
「‥今度、文化祭ってのがあるんだろ?」
「そ、そうだった!!明日から忙しくなるんだった!」
「‥じゃあ、ゆっくりできるのはお互い今日だけか?」
「た、多分?」
私がそういうと、オミさんはふうっとため息を吐いて、私の手をぎゅっと握る。え、えーと、ちょっと照れるかな?
「‥大学へは送ってく」
「は、はい」
「あと白の様子もついでに見てくる」
「‥オミさん、なんだかんだ言って面倒見いいですね」
「俺は神だぞ?」
「そうでした、そうでした」
いつもの調子で話していると、オミさんが私をジーーッと見ているので照れ臭くて顔がじわじわ赤くなる。やめてくれ、結婚するけどやめてくれ。恥ずかしいんだってば!そんな凝視されるの慣れてないから!!
「お、オミさん、注目しすぎかなって‥」
「お前は寂しくないのかよ‥」
「へ?」
「‥俺は、その、」
小さい声で「ちょっとつまんねーって言うか」ってボソボソと話すので、私の中の審判が思い切り「ストラーーーーーイク!!!」と叫んだ。いや、本当、なんなのこの神様は!!うっかり胸がキュンとしたではないか!!
「‥どーなんだよ」
「同じ‥ですよ?」
「ふーん、そうか‥」
今度はなんか嬉しそうに、ちょっと横を見てニヤニヤするので確実にツーストライクである。やばい、あともう一回ストライク入れられたら、バッター交代だ。いや、バッターは私しかいないけど‥。
「‥オミさんは本当に心臓に悪いです」
「そうなのか?」
「‥なので、シャボン玉しましょうか」
「お、いいな!やっておこうぜ!!」
パッと顔を輝かせてオミさんがいそいそとコタツから出る様子で、すでにスリーストライク‥いや!まだデッドボールか、ファールだ!!そう自分に言い聞かせて、私もコタツから出てシャボン玉を取りに行く。
オミさんは縁側でやろうぜ!と張り切るので、一緒に縁側に座る。
小さな芝生の庭を眺めつつ、シャボン玉なんて贅沢だなぁなんて思っていると、オミさんがシャボン玉を吹き口に浸けつつ、ウキウキした顔で私を見る。
「今日はどんだけ長く保つか勝負な!」
「良いですよ。何を賭けます?アイスですか?」
なんか本当に可愛いなぁ〜なんて思っていると、オミさんは途端に目を横に逸らす。
「‥俺が勝ったら、青葉からキスな」
「なっ!!!???」
「‥‥‥忙しくなるし、寂しいだろ」
あ、ダメだ。
スリーストライク入ったわ。
ズバン!!と胸にオミさんのデレが入った私は真っ赤な顔になって、横を急いで向く。バッター!!バッター交代だ!!ヨロヨロと自分の体制を立て直そうとしていると、
「お前が勝ったらどうする?」
「‥アイス買って下さい」
「じゃあ食べさせてやる」
「いやなんでそうなる!!??」
「神からのありがたい配慮だ」
「配慮という意味ーーーー!!!!!??」
シャボン玉の勝負は熾烈なものになった。
結局引き分けになり、オミさんの「どちらも採用!」って言うけど、それ全部オミさんがしたいだけじゃないか!!私の叫びが新居に響き渡った。




