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竜の神様と契約しますか?  作者: のん
竜の神様とお付き合い。
217/254

竜の神様、一緒に引っ越しする。


びしょびしょになってしまった我が家‥ならぬ我が部屋。

大家さんは早急に引っ越し先を探すと言ってくれたけど、さてどうなるやら‥。


翌朝、スマホのアラームで起こされてオミさんのシートベルトのように私の腰に回された腕を外そうとしていると、部屋の呼び鈴が鳴らされた。



「こんな朝早く誰だろ‥」



不思議に思いつつ、オミさんも起きたのか腕を離して私と一緒に玄関まで行く。そっと扉を開けると、大家のおばさんが立っていた。


「おはようございます!昨日は大変だったでしょう?家は大丈夫?」

「あ、はい。お陰様で‥なんとかなりました」

「引っ越し先なんだけどね、すぐ近くに古い一軒家があるのよ。この間、手直し終わったばかりだから良かったら、そこに今までの値段でいいから引っ越ししない?」


一軒家??

それなのにお値段一緒でいいの?

私が驚いた顔をすると、大家さんはちょっと眉を下げて、



「古い家だからね。若い人は借りないし‥。かといってお年寄りの方は「自分には大きすぎる」って借りないし‥。処分してもいいかな?って思いつつ、思い入れがあるもんだから手直ししたの。だから住んで貰えるだけで嬉しいのよ」



そんな思い入れがあるのに、いいの?そう思ったけど、確かに住んでない家はどんどん悪くなっちゃうしなぁ。私は大家さんを見て、


「それでしたら、ぜひお引っ越しさせて頂けると‥」

「そう言って貰えて、こっちも嬉しいわ!はい、これ家の地図と鍵!もういつでも引っ越して貰っていいから!なんならあっちが気に入ったら、あっちにずっと住んでもいいから!!こっちの鍵は今度取りに行くから持っていて!」


‥どっちかというと、それが本音では?

まぁ、黙っておくに越したことはない。私はお礼を言って地図と鍵を受けると大家のおばさんは、機嫌良さげに帰っていった。



後ろを振り返ると、一部始終を聞いていたオミさんもちょっと驚いた顔をしている。



「‥と、いう事らしいです‥」

「いきなりだな。場所はどこだ?」

「えっと、ここらしいんですけど‥」



地図を開いてオミさんと見ると、よく行くスーパーにもコンビニにも近い。おお、結構いい場所ではないか?と思っていると、オミさんがハッとした顔をする。



「‥今度、神をする場所じゃねーか」

「え?」

「‥神になるっていうけど、社は持たないんだ。人間の神じゃねーから」

「ええええええ??!!そんな事ってあるんですか?!」

「人間が来たら、かえって危ないからな」

「それは私もでは??」

「お前は俺と同じ神になるだろーが」

「あ、そ、そうだった!!」



私は驚きつつ、その地図を見るけど‥民家なのに「モノ」の神様の社兼家になるのか?と不思議な感覚だった。


オミさんはちょっとワクワクした顔で私を見て、



「んじゃ、引っ越しするか!」

「そ、そうですね‥」

「荷物は、この家に力を使って移動させるから、とりあえず一纏めにするぞ」

「早い!何もかも早い!!」



手早く朝ご飯を食べると、早速オミさんと私とで荷物をリビングに集めて置く。ダンボールにたっぷり入った衣装も置いて、準備はバッチリだ。


オミさんは両手の手のひらを荷物にかざすと、荷物がパッと消えてしまった。


「すごい‥」

「まぁ、神だしな!」

「本当にオミさん神様なんですね〜」

「‥おい」


しみじみと呟くと、オミさんからツッコミが入ったけど気にしない。

ガランと何もない部屋を見渡して、ちょっと寂しくなる。


だってここに一杯思い出が詰まってる。

オミさんと出会って、沢山話して、しょっちゅう言い合って‥、でもいつも帰ってくる場所はここだった。



「青葉」



オミさんに呼ばれて後ろを振り返ると、オミさんにシャボン玉が手渡された。


「え、これ‥」

「この家での勝負はまだちゃんと決まってなかったろ。シャボン玉をどっちが長く残せるか勝負だ」


ニヤッと笑うオミさんの顔をまじまじと見つめる。



「‥俺も、ここ結構気に入ってた」

「オミさん‥」

「お前がいた場所だしな」



オミさんはそう言って、ベランダの窓を開ける。

ちょっとヒヤッと冷たい風が部屋に入ってくるけど、構わずオミさんはベランダへ歩いていくので私もついていく。



「‥新しい家でも勝負するぞ」

「負けませんよ」

「おし、じゃあここでの勝負を今こそつけるぞ!」

「望むところです!」



オミさんも同じように、ここを離れるのを寂しいと思っていたのが知れて嬉しいのと、そんな私を気遣ってくれて、こんな素敵な提案をしてくれるオミさんの優しさが胸をくすぐる。やっぱり神様だなぁと、好きだなぁ。



オミさんの「せーの‥」の声に合わせてシャボン玉を吹いた。

この家に「ありがとう」と「またね」の気持ちを込めつつ、私とオミさんはシャボン玉を吹いて、顔を見合わせて笑った。




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