竜の神様、ドタバタデート終了。
爺ちゃんは私とオミさんをじろっと睨むと‥、
「蛇神様から話は聞いた。神にとって大事な髪の毛を龍神様に捧げてくれたそうで‥。それで龍神様だけでなく、わしと青葉の命を救ってくれたそうだな‥。礼を言う」
「爺ちゃん‥」
頭を下げる爺ちゃんにオミさんは「当然のことをしただけです」と慌てて話す。でも、オミさんのおかげで助かったのは事実だ。爺ちゃんは頭をあげて、私を見る。
「苗の話だと、とにかく夢の話なのか現実の話なのかわからなくてな‥。だから、青葉が騙されたのでは?と心配になって‥」
「‥まぁ、お母さんの説明だとね‥」
そこは否定できない。
なにせさっきも爺ちゃんが大変だって話をしたのに、「帰っちゃうの〜?」なんて話をしてたし‥。爺ちゃんはオミさんを見上げて、小さく笑う。
「今度の冬休みに青葉とぜひ一緒に遊びに来て下さい。」
「は、はい」
ちょっと緊張した顔のオミさんを満足げに見た爺ちゃんは、今度は私を見上げて、
「青葉、成績をこれ以上下げるなよ」
「うっ!!!」
「大学を卒業するまでは気を緩めないように」
「‥はいはい」
「部屋はちゃんと片付けているのか?」
「か、片付けてるよ!」
「自炊はしてるのか?」
「してるってば!」
うう、なぜ私になるとお小言のようになるのだ‥。
片付けも自炊もちゃんとしてるって‥口と尖らせつつ呟いていていると、
「‥神前式で結婚をするなら、ちゃんと早めに決めておきなさい。お前はいつも大事な事は後回しにしがちだからな。遅くとも年内にはちゃんと決めて、冬休みに報告するように!」
爺ちゃんはビシッと私を指差して、それから恥ずかしそうに目を逸らす。
それって‥、オミさんとの結婚を認めてくれるって事?
驚いて爺ちゃんの顔をまじまじと見ていると、
「お前は苗とそっくりで、こうと決めたら反対されても絶対そうするんだろ」
「うん」
「本当に親子でそっくりだ‥」
爺ちゃんは横を見たまま、そう呟く。
そういう爺ちゃんにお母さんはそっくりだって、昔お婆ちゃん言ってたけどなぁ‥。そう思いつつも、やっぱり認めて貰えたのが嬉しくて、オミさんを見上げるとニヤッと笑ってくれた。
と、爺ちゃんの携帯の着信音が最大か?ってくらい大きな音で鳴る。
「なんだ、話している側から苗か。もしもし、どうした?え??仕事??」
あらま、お仕事が入ったのか。
爺ちゃんは何やらいくつか確認してから電話を切る。
「‥仕事が入ったんで、すぐに帰る」
「もう帰っちゃうのか‥」
「冬休みに遊びに来い。年末年始こき使ってやる」
うう、それは嫌だな?
とはいえ忙しいのは知っているので頷くと、爺ちゃんはようやく私を見て笑ってくれた。
蛇神様と、シキさんが爺ちゃんの方へやって来て、何やら布で包んだ物を手渡す。
「祖父殿、これはお土産だ。持っていってくれ」
「いやいや、神様からお土産など‥」
「まぁ、ルディオミの親代わりだからの。そう言わず受け取ってくれ」
と、オミさんが「誰が親代わりだって?」って言うけど、ここは黙っておこう。色々とまた拗れるし?蛇神様が、玄関の方へ力を送ってくれたらしく、
「玄関を開ければ、もうそちらの神社に直通だ。気をつけて帰ってくれ」
「あ、ありがとうございます???」
爺ちゃんは蛇神様の言葉にちょっと目を白黒させつつ、荷物を持って玄関の扉を開く。と、本当に目の前に神社があるので、驚いて私を見る。わかるよ、わかる。すんごいびっくりするよね。横にいる蛇神様がめっちゃ面白そうな顔してますよ。
爺ちゃんは一つ咳払いをして真剣な顔をして、オミさんを見上げる。
「‥孫を頼む」
「はい」
オミさんがしっかり応えると、爺ちゃんは満足そうに笑って外へ出ると、会釈しながら玄関の扉を閉めた。そうして、シンと静まり返った別荘の玄関。私とオミさんは顔を見合わせたその時、ドサドサとオミさんの頭の上に色々な物が落ちてきた!!
「お、オミさん!!!」
「ルディオミ様〜〜〜!!!!!何やら大変な事態が起きたと竜王様から聞きまして、セキ馳せ参じました〜!!」
私の手の中に、セキさんが叫びつつ飛び込んで来て私は目を見開いた。蛇神様は大爆笑するし、色々な物が落ちてきた中からオミさんが不機嫌そうに顔を出す。
「あれ?青葉様のお爺様がいらしたというので、お土産を持って懐柔しようと思ったのですが何処に?」
「「アホか!!その前に主人の頭の上に、色々落としてきた詫びはどこだ!!」
セキさんは「あれ?そうでしたか!?」とすっとぼけるし‥。
一難去ってまた一難だなぁ。
爆笑する蛇神様と、言い合うオミさんとセキさん、申し訳なさそうに小さく笑うシキさんに私は遠くを見つめた。‥うん、まぁ、ひとまずなんとかなったしいいか?




