竜の神様、家族の話。
今日は休日なので、オミさんと電車に乗って出かける。
「オミさん、バイト代も入ったし切符の買い方教えておきます」
「おー」
改札前に行って、電車の乗り方を地図を指差しながら教えると「飛べば良くねぇ?」っていうけど、飛べるの??
「え、待ってオミさん飛べるの?」
「俺は火竜だぞ?神だぞ?」
「ええええ、すごい!!」
そうかぁ!!
ファンタジー漫画だと飛んでるけど、オミさんは飛ぶ姿を見せなかったので飛べないのかなって思い込んでた!!驚いて目を丸くすると、オミさんはそれはそれは素晴らしいドヤ顔をする。
「乗せてやろうか?」
「え、いいんですか?あ、でも今日は切符の買い方と乗り方を教えておきます」
「‥‥オメーはよぉ‥」
「今度乗せて下さいよ。あ、でもちゃんと皆に見えないようにですよ?」
わーってるよ!って、オミさんはぶっきらぼうに話して、自分のバイト代から切符を買う。今日は久々にショッピング街に行くから私もちょっとワクワクする。
オミさんもワクワクしているのか、階段を二段くらい抜かして長い脚でひょいひょいと上がっていく。早い。そして長いな〜〜脚。私なんて一段ずつ確実に登っているというのに。階段を登りきったオミさんはえっちらおっちら階段を上る私を見て、面白そうに笑う。
「おら、青葉早く来いよ」
「オミさんみたいに脚が長くないんですー!」
「お前、足遅いなぁ」
「オミさんが早いんです」
まったくああ言えば、こう言う。
ブスッとしながら階段を登っていると、オミさんが私の方まで降りて来たかと思うと、手を繋いで「おら行くぞ」と手を引っ張ってくれた。介護???
とは言え、大きい手を急に繋がれて照れ臭い。
ちょっとドキドキしつつも、階段を登りきった私はそっと手を離す。
オミさんはそんな私の手を見て、それから向かいの電車を見るけど‥、ううう、顔、赤くないかな??
「‥あ、ありがとうございます」
「‥‥おう、もちっと足鍛えろよ」
「‥乙女に何を求めてるんですか」
神様で、しかも体力とかものすごくありそうな竜のオミさんと比較しないでくれ。
そんなことを思っていると、電車がやってくる。比較的空いている時間を狙って良かった。オミさんは電車の中を見て、「多くね?」って言ったけど、これはとても少ない方です。
電車から人が降りて来てから、乗り込むって話をしておいたので、オミさんはちゃんと約束通り人が降りてから乗り込んで行く。ヨシヨシ偉いぞ。
いつもと違う方向へ電車が向かって行くので、オミさんは窓から面白そうに風景を眺めている。‥なんかすっかり馴染んでいるなぁ。
オミさんの後ろで、女子高生の子たちがきゃっきゃと話しつつ、オミさんを興味深そうに見ている。
‥まぁ、顔はいいもんね。
体格も、筋肉でがっしりしているし。長身だし。
しかし中身は口は悪いし、大雑把だし、お風呂からビシャビシャの髪のまま出てくるし、肉をやたらと食べたがるし、人をベッドに引きずり込んで抱き枕にするのだ。
‥改めて思うけど、神様って色々いるんだな。
私がそんな事を思いつつ、オミさんをジッと見ていると、オミさんが私を見て、
「何、ジロジロ見てるんだよ」
「いやぁ〜、色々な神様がいるんだなって‥。オミさん私の家で祀ってる龍は知ってるんですか?」
「あ?あー、まぁな。俺は話には聞いた事あるけど、親父は直接会ってるかもな」
「そうなんですか。あ、親父って言ってましたけど何人家族なんですか?」
「‥親父と兄貴がいる」
「へ〜、いいなぁ、お兄ちゃんかぁ」
私が何の気なしにそう言うと、オミさんの顔が少し強張る。
「‥まぁ、な」
あんまり、仲が良くないのかな?
これはあまり話さない方が良さそうだと思って、私も窓の外を見る。
オミさんは窓越しに私を見て、
「お前は?」
「私は一人っ子です。お父さんが他界しちゃって、お母さんと爺ちゃんと婆ちゃんで、田舎の神社を守ってます」
「‥俺んとこと反対だな」
「そうですねぇ、夏休みにでも田舎にも行ってみます?竜の神様って行ったら驚きそうだし‥」
私がそう言うと、オミさんは私を直接見て、
「‥お前なぁ。‥肉は田舎にもあるのか」
「どんな秘境だと思ってるんですか、ジビエって言って山のイノシシとか美味しいのありますよ?」
それなら行くって言うけど、龍の神様にそうすると会えるのかな。
それはそれで楽しそうだな!!
うちの神社の神様はどんな姿なのかなって思ったら、ちょっと帰省も楽しみになって来た。その前にテストが待ってるけど‥。




