竜の神様、初のお出かけ。
どうして!
どうして、私をベッドに引きずり込むんだ!!
朝から「オミさん!!離して!」って起こすのも、もうそろそろ日課だ。おかしいでしょう、この日課。
朝ご飯のチーズパンを食べつつ、じとりとオミさんを見るとニヤニヤ笑ってるし‥。まったく反省の色が見えない。こっちに寄越したオミさんのお父さん、貴方の息子は問題ありとお見受けしましたが?
「まったくもう!!お店に連れていかないって言ったのに!!」
「でも行くだろ?お前、昨日すまほで予約してたろ」
「「クッソ〜〜!!目の前で予約するんじゃなかった!!」」
予約すれば、決まった時間に熱々のをすぐ食べられると説明したら嬉しそうにするから‥、つい目の前で予約した私のバカ!!!‥相手は、講義の傍ら大学を見学しつつ、あちこち情報を仕入れて来てるから油断大敵だ。最近は平気で姿を現わすから困るんだけど‥。
そんなことを考えていると、オミさんが私の食べ終えたお皿を
シンクへ持っていく。
「おい、俺が皿を洗っておいてやるから支度して来い」
「あ、ありがとうございます???」
うまく丸め込まれてしまった私は解せない気持ちで一杯だが、まぁお皿を洗ってくれるのはありがたいのでお礼を言って、クローゼットから服を出して洗面所で着替える。
うう、自分の家なのになぜこんな配慮をせねばならないのだ。
とはいえ、いつもは学校の後はバイトがあって動きやすいようにジーンズが多いのけど、今日は以前買っておいた膝丈のスカートとパーカーでちょっとスポーティーな感じの格好だ。うん、たまのスカートは気分が上がるな!
「オミさん支度終わりました〜。オミさんはなんに着替えます?」
洗面所からパジャマを持って出てくると、私の姿を見てオミさんが固まっている。
「オミさん?」
「あ、う、おう、何でもねぇ」
パッと顔を横に向けたけど、なんかおかしかったかな??
でもオミさんがいつも見てる雑誌の女の子なんか、似たような格好してるしなぁ。すっごい短いショートパンツを履いている女の子を見た時は驚いて雑誌を素早く閉じて、「なんだこれ!!」って顔を真っ赤にしてたから、あまりみだりに肌を見せない国なのかな?
‥いや待てよ、本人風呂から上がってくると、大体上半身裸だな。
オミさんの方が、みだりに肌を見せてるな。
うん、じゃあ私はきっと大丈夫だ。
そう納得してオミさんに雑誌に載っている男の子のスナップを指差して、「こんな感じどうですか?」って話しかけると、チラッとこっちを見たかと思うと、「おう」って言ってまた横を向きつつ雑誌を取っていった。‥器用だな。
オミさんは、黒の大き目のジャケットをぶかっと着て、中に白いパーカーと黒い細みのパンツを合わせた姿にあっという間に姿を変える。
真っ赤な髪に映えるな〜。
私が感心したようにオミさんを見上げると、オミさんは私をチラッと見て、
「‥髪、結んでくれ」
「はいはい」
あまりに綺麗な髪なんで、ちょっとアレンジさせて貰ったらそれ以来、出かける前に髪をまとめたり、結ったりするようになったオミさんと私。なんかどんどんお付きの者になっている感じがする。
ハーフアップにして、毛先をちょっと丸めてお団子にしてみた。
うん、これはファッションとなかなか合っている!
良い出来栄えに満足して鏡越しにオミさんを見ると、またも目を逸らされた。
「出来ましたよ」
「‥おう」
「素直にお礼を言えばいいのに‥」
「あ り が と う!!!」
「はい、よろしい」
「口の減らねぇ女だよな」ってブツブツ言ってるの聞こえてますよ?
本当に口の悪い神様だ。
と、オミさんが私の髪を引っ張る。
「お前、結ばねーの?」
「ああ、そうですね‥、ポニーテールならできるかな?」
ヒョイっと結んで、鏡の前でこの辺かな?
なんて思っていると、オミさんが私のパーカーのフードを頭に被せてきた。
「な、何するんですか!!」
「‥下ろしてる方がやっぱいい」
「え、そうですか?」
「‥‥おう」
それなら下ろしておくか。
サイドに飾りピンだけ付けておくと、オミさんはそんな私を見て、またなんというか複雑そうな顔をする。一体何が不満なんだね君は。
「ほら、支度も出来たし行きましょうか」
「おう、途中でアイスも食いたい」
「すっかり食いしん坊になってる‥」
修行はどうした。修行は。
思わず遠い目をしたけれど、突っ込むだけ無駄なのは分かってる‥。




