竜の神様、デートで警戒する。
オミさんとあちこち水族館の中を歩いたけど、結構大きいんだな!!
そんでもって雑誌に書いてあったけど、本当にこの水族館で結婚式なんてするの?!って思ったけど、どうやら夜の時間を借りて撮影ならオッケーらしい。ちょっとしたブースに結婚式の撮影した写真とか解説が飾ってあった。
私がその写真を見ると、オミさんの方が照れ臭そうにする。
「‥写真だけならありなんだな」
「ね。雑誌ではいかにも結婚式挙げてます〜って感じでしたけど」
「水族館で撮りたいか?」
「う〜ん、そこまでお魚大好き!って訳じゃないですし‥」
オミさんは私の返答にぶっと吹きだした。自分だってお魚より、肉ではないか。いや、それは食の好みか。
私とオミさんの結婚式なら、むしろ竜と龍だから、動物園の爬虫類コーナー?いや、それは完全に違うか。でも蛇神様がいたら、でっかい蛇と一緒に写真撮影しそうだな?セキさんとシキさんも大喜びしそうだな〜‥。それでもって、オミさんがすっごく嫌そうな顔しそうだな〜。
想像しただけで面白くて吹きだしそうになると、オミさんが笑いを堪える私を不思議そうな顔で見る。
「青葉?」
「あ、すみません‥。ちょっと蛇神様の事を‥」
「名前を言うな」
「え?」
「言ったら、すぐそこから出てきそうだ」
そんなまさか〜〜!
‥と、思ったけど‥、確かにあの角から「わしを呼んだか?」って言って出てきそうだ。口元を手で抑えると、オミさんが静かに頷く。すんごい警戒してますね‥。
「あっちにトンネル?って書いてあったぞ」
「あ!見つけました?そこが一番のおすすめなんですよ!」
オミさんの手を引いて、水中トンネルの中へ一緒に歩いていくと、頭上から青白い光が一面に広がって足元を照らし、大小の魚達が頭上でゆったりと泳いでいる。オミさんも流石に驚いてその光景に見惚れる。なんだかそんな顔を見られただけですごく満足である。
「すごいな‥」
「綺麗ですねぇ。やっぱり写真と違って本物は綺麗ですね!」
そう話すと、感心したように見上げていたオミさんが嬉しそうに笑う。
うん、可愛いなぁ‥。ニヤニヤでなくて、ニコニコの顔のオミさんで私も嬉しい。そう思って、チラッと横を見ると水中で魚に餌をあげている飼育員さんが見えたけど‥、白い髪がふわっと水中に揺れていて‥。えーと、私の見間違いでなければシキさんに似てない??
「青葉?」
「お、オミさん!あ、あっち!あっちに魚が!!」
「お、おう‥」
「あそこにエイもいますよ、エイも!!」
ちょっと背中を押して、飼育員さんから見えない位置に行ったけど‥。
まさか‥ねぇ?とは思うけど、なんせ面白いこと大好きな蛇神様だ。デート参戦やりかねない。
「青葉、屋上でイルカ?のショーがあるって」
「すぐ行きましょう!!!」
「お、おう?」
嬉しそうなこの笑顔。できる限り守ってあげたいし、気をつけよう。なにせ相手は百戦錬磨の神様だ。今度はオミさんの手を勢いよく引っ張って屋上へ上がる。
屋上へ出ると、半円のアーチ状になっている会場は、いくつも椅子があって‥階段の下にはプールの中でイルカ達が気持ちよさそうに泳ぎつつ、飼育員さんに餌をもらったりショーの練習をしている。キョロキョロと周囲を見回すけど‥、うん、蛇神様達はいないな?
ホッとして、オミさんの手を引きつつどこに座ろうかなと思って、オミさんの顔を見上げると、なんか顔が赤い?
「オミさん?」
「な、なんだよ‥」
「室内、暑かったですか?」
「違う。別に大丈夫だ」
「そうですか?えーと、どこに座ります?」
「‥後ろでいい」
「あ、そうですか?」
オミさんと近くの椅子に一緒に座って手を離そうとすると、オミさんは私の手を離さない。お〜〜い、手を離してもいいんだよ?オミさんを見ると、ちょっと目を横に逸らしつつ恥ずかしそうにしているけど、手を離さない。
「オミさん、手を‥」
「デートだろ?」
「え、あ、はい」
「手を繋いだままじゃ、ダメなのか?」
ダメじゃない‥。
多分、ダメじゃなくてむしろキュンとするやつ〜〜〜〜!!!
ドスッと可愛らしい弓矢じゃなくて、槍が私のハートに間違いなくブッ刺さった。流石槍使いですね!!でも加減して欲しいな!!そう思いつつ、ショーが始まるまで私とオミさんは手を繋いで真っ赤な顔をしたまま無言であった‥。




