竜の神様、入れ替わって知る。
皆に色々注文して、食べてもらったけどなんでもイケるクチであった。
頼んでも頼んでも、寿司が片っ端から消えていく!!
「青葉ちゃん、このフライ巻きおいしい!!」
「それは良かったです。もう一皿頼んでおきますね」
「青葉ちゃん、この軍艦巻き美味しい!」
「ですよねー。これも頼んでおきましょう」
「ラナ!!大好きだ!!」
「黙って食え」
うーん、マイペース!!!
私の隣に座っているオミさんは、3皿食べた所で「お、お腹がもういっぱい‥!??」って驚いていた。そうなんです。そんなに食べられないって言ったじゃないですか。
オミさんこと私は、絶望的な顔をして私を見上げる。
「‥お前、これしか食べられなくて悲しくないか?」
「いや、今の所不便ではないです。逆にオミさんの体で食べていると、いくらでも食べられちゃって怖いです」
お互いに顔を見合わせて、人体の神秘に思いを馳せる。
と、エトラさんが寿司をがっついてむせるので、お茶のお代わりを取りに行こうと立ち上がる。
「青葉?」
「ああ、ちょっとお茶のお代わりを貰ってきます」
「じゃあ、俺も行く」
私ことオミさんも湯呑みを持って、一緒にお茶のコーナーまで歩いて行き、私は早速お茶を入れていると、
「あの‥、お一人ですか?」
「へ?」
横を見ると、茶色の長い髪を下ろした女性が少しもじもじしながらこちらを見上げている。
「いえ、友達と‥」
「えー、じゃあ、良かったら一緒に食べません?あ、それかお茶だけでも」
ん??
なんで女の子の私と??
そう思って、ハッとした。
あ、これオミさんに言ってるんだ!!
ってことは、現在逆ナンにあってるって事!??驚いて目を見開いていると、するっと私の腕に誰かの腕が絡まる。
「‥悪い、こいつは俺の」
「え?」
私がオミさんこと私を見下ろすと、私の腕‥じゃなくて、オミさんの腕に腕を絡めている。
「お、オミさ‥」
ギュッと腕を引き寄せられて、思わず顔が赤くなると、茶色の髪の女性はオミさんを睨んで自分の席へと歩いていってしまった‥。す、すごい体験をしてしまった??
私は腕に腕を絡めて、私を見上げるオミさんを見る。
「‥モテモテですね」
「俺の顔で言われてもな」
「そういえばそうでした」
そういうと、オミさん‥ならぬ私の顔がニヤッと笑う。
「‥ちょっと妬けたか?」
「‥‥どうですかねー」
「素直に言っていいぞ?」
「それこそ私の顔で言われても」
「それもそうか」
お互いにちょっと笑って、お茶をテーブルまで運んだけど‥。
うん、ちょっと妬けた。
お茶入れてるだけで声掛けられるとか、モテすぎではないか??いや、確かにイケメンなんだけどさ。ちょっとむすっとした顔になりつつ、座敷に戻るとヨークさんが私の顔を見て、
「あれ??まだ戻ってないけど、ルディオミに似てる」
って言われた。
‥なるほど、こんな顔をしているとオミさんなのか。
小さく笑うと、横にいたオミさんが私の顔を見上げて「そ〜か?俺、もっとキリッとした顔だろ」って言うので、ジトッと見下ろしてみた。いつもこんな感じです〜〜〜!!!
と、店内に何かが勢いよく入って来るのが目の端に見えた。
「あ!!いた!!竜の人!!」
ん??この声??
そちらを見ると、黒猫の猫又さんがこちらへ駆け寄ってくる。
周囲は見えないけど、私達はがっつり見えるので驚いていると‥、黒猫さんはゼイゼイ息を吐いて、
「なんか黒い丸いボールみたいのが、あちこち飛んで悪食を食べてるんだ!いつもなら追い払えるのに、変な力が加わって追い払えなくて‥、言の葉の神様に相談したら、ここへ行きなさいって‥」
黒い丸いボール‥。
一斉に、皆の視線がエトラさんに注がれる。
「え?俺??」
「十中八九お前のせいだろ」
「なんか力使ったろ」
「お前の担当だな」
「エトラだけ行ってこい」
うーん、皆エトラさんにシビアだ。
私は立ち上がって、猫又さんに場所を聞こうとするとオミさんこと私も立ち上がる。
「とりあえず、腹も膨れたし全員で行くぞ。ただしエトラ、お前は前線だからな」
私の顔のオミさんがジロッと睨んでエトラさんに話すと、黒猫の猫又さんが目を見開いて、私とオミさんを交互に見やる。えーと、これはちょっと事情がありまして??




