竜の神様、最後はやっぱり締まらない。
オミさんと無事、我が家へ帰ってきた!
時間の調整を力を使ったらしく、本日連休の最終日!の、夕方である。
オミさんから貰った花束も、キャリーケースもちゃんと家の中にあって、私は心底驚いた。神様の世界ってすごくないか??
窓の外を見ると、赤い夕陽が見えて‥ああ帰って来たんだなぁと、しみじみ思う。なんか本当にすごい連休になったなぁ。そう思いつつ、オミさんをチラッと横目で様子を窺うと、散々キスしない!って逃げ回っていた私にキスが出来て満足そうだ。鼻歌まで歌ってる。
クッソ〜〜、こっちは私はものすごく恥ずかしかったのに!!絶対やり返してやる!そう闘志を燃やしつつ、荷物を先に片付けて、花もあちこち生けた。すんごい部屋中にいい匂いするなぁ。
「冷蔵庫にそういえばお肉あったっけ‥」
「セキに牛の魔物の肉入れておけって言っておいたぞ」
「‥肉への執念がすごい」
冷蔵庫を覗くと、本当にお肉がタッパーに入ってて驚いた。
早速塩焼きと、タレの2種類を用意して夕飯に出したらオミさんが嬉しそうに頬張る。
「‥美味い」
「そうですね。お肉トロトロ!これですき焼き作ったら美味しそうだな」
「すき焼き?」
「冬に作るんですけど、お鍋の種類の一つで甘辛でご飯がすすむんですよ〜」
オミさんはお肉を食べているはずなのに、なんかよだれが垂れそうな顔をするので思わず笑ってしまう。
「寒くなったら食べましょうね〜」
「‥寒いのか‥」
「寒いの苦手ってそういえば言ってましたね」
まだ10月だけど、もう10月か?
あんな暖かい所に住んでいたオミさんにとっては冬は辛そうだな。エアコンだけで冬を越せるか?ホットカーペットか、コタツを買うしかないかなぁ。
「‥暖房器具を買う為に、またいっちょバイトを頑張るか」
「その前にテストだろ」
「そ、そうだったぁあああ!!!明日テスト範囲知らされるかな?嗚呼〜〜〜、楽しかっただけに、急に現実に帰ってきた感じだ〜〜〜」
テーブルに顔を突っ伏して、思わず唸るとオミさんが私の顔をまじまじと見つめる。え、なに??
「オミさん?」
「‥楽しかったって‥」
「え、ずっと言ってたじゃないですか」
「そ、そうか」
「そうですよ。色々用意してくれて本当にありがとうございます!嬉しかったです」
素直にお礼を言うと、オミさんの顔が赤く染まる。
おお、わかりやすく照れている。私は小さく笑って、オミさんを真っ直ぐ見つめる。
「‥明日から、またよろしくお願いしますね」
「おう‥」
「ひとまず明日の用意をしたら、寝ますか」
「‥おう」
「オミさん、まだ照れてる?」
「わかってるなら聞くな」
いや、つい可愛くて?
お皿を一緒に片付けて、明日の支度をして、お風呂から出てくると、ベッドの上でオミさんはちょっとソワソワした顔で私を待っている。うっ、めちゃくちゃ恥ずかしい。
さっきお風呂に入ってる時、冷静に神託で「結婚して良し」って言われた事実がジワジワと嬉しさとか、恥ずかしさとか、いややっぱり嬉しさが大きくてドキドキしてしまっているのに、そんな私を「抱きしめたい」って顔をされてベッドで待たれていると、恥ずかしいのと照れ臭いので回れ右したい。
「青葉」
オミさんの静かな声に、ドキッとして体が揺れるとオミさんの熱い手が私の手をちょっと引っ張る。その目がちょっと熱っぽいとろりとしたものだから、ますますドキドキしてしまう。
「お、オミさ‥」
言いかけた途端、
「ルディオミ様〜〜!!青葉様の結婚衣装の色は何にしますかーー!??」
パッとセキさんが現れてベッドに降り立ち、私は飛び上がったしオミさんはそれを聞いて顔が赤くなる。え、ちょっと待って??聞き間違えでなければ、今、結婚衣装って言った???セキさんを見て、
「結婚衣装?!!」
「はい!!竜王様がポンコツルディオミ様を好きでいてくれる女性なんてきっと青葉様だけだ!って言って、早めに結婚衣装を作って、逃げ道を塞ごうと!!あ、でも、これ内緒ですけど!!」
たはー!って自分にツッコミを入れてるけど、それ多分絶対言っちゃいけないやつだと思う‥。オミさんは顔を赤くして、怒っているのか、照れているのか、どっちか分からない。
「アホかぁあああ!!!!帰れぇえええええ!!!!!」
オミさんは窓を開けてセキさんを渾身の力を込めて、外へ投げた。
‥うん、今日は投げられても仕方ないかな?
お互いちょっと冷静になれて‥ベッドで一緒にいつも通り寝られたので、セキさんには感謝しかない。何かあれば今度はセキさんを呼ぼう。




