竜の神様、ようやく我が家へ帰る。
オミさんと私、ヨークさん達、そしてあれからすぐに蛇神様がまたも色々食べ物を持ち込んで、まるでどんちゃん騒ぎのような食卓になった。
そんな様子にオミさんと私で顔を見合わせて笑ってしまう。
多分‥オミさんは最後の食卓くらい落ち着いて過ごしたかったのかもしれないけど、なんだか私達らしくて、これはこれでいいかな?って思う。あとちょっと二人きりになったら恥ずかしいし、照れ臭いし、心臓をちょっとアップしておいた方がいいかなって。
ヨークさん達は、今回の事件の功労者として火竜の国から賞が貰えるらしい。嬉しそうに教えてくれたけど、蛇神様が不満そうに「わしも欲しい!」というので、家に帰ったらパフェでも食べに行こうと誘うと満面の笑みになった。オミさんは不満顔だったけど。
「人間の世界も面白そうだよなー。エトラ行ったんだろ?無許可で」
「うるせー!あんなゴチャゴチャした所、煩いだけだ」
エトラさんがヨークさん達にそう話すと、オミさんが鼻で笑った。
俺は楽しい場所だって知ってるけど?とばかりにドヤ顔をするオミさん。‥そうだね、コンビニ好きだもんね。
「ふん、残念な奴らだ」
「オミさん!あ、そうだ。今度何かお土産送りますね!」
そういうとヨークさん達は嬉しそうに頷き、オミさんは驚いた顔で私を見る。あのですね、助けて頂いたんですからね?お礼くらいしないとバチが当たりますよ?
ヨークさん達に約束して、外を見るとまだ日は高いけど、オミさんが言うには「そろそろ夕方」らしい。
セキさんがいつの間にか私の荷物を完璧に詰めて、食堂までキャリーケースと花束を持ってきてくれた。
「セキももっと青葉様を歓待したかったのですが!!次回、沢山喜んで頂けるよう励む所存であります!!!」
「うん、セキさん、十分!もう十分やってくれたから‥」
セキさんの激しさは、ここでも健在だった。
蛇神様が面白そうにそんな私とセキさんのやり取りを見ている。
ヨークさん達が私の前に来て、
「ルディオミに困った時は、セキに言ってくれ」
「なんかあったら助けるから」
「武器持っていくか?」
「ラナちゃんに俺の勇姿を余す事なく伝えておいてくれ」
皆心配しているのに、若干空気を読まないエトラさんがいるけれどそこは華麗に無視しておいた。私はヨークさん達に微笑んで、
「本当にありがとうございました!何かの際にはぜひ!!」
「おい!!」
「お礼は大事ですよ、お礼は」
「何かってなんだ、何かって」
「何でしょうね〜〜?」
オミさんがギリギリと私とヨークさん達を睨むけど、構わずに皆さんに微笑んでおいた。あ、エトラさんは無視しておいた。
そんな私の手をオミさんがギュッと握る。
途端に光がキラキラと足元から浮かび上がってくる。あ?!もう帰ろうとしてる??
「もう帰るぞ!!」
「え、ちょっと待って、み、皆さん本当にお世話になりました!蛇神様、また後で?セキさんもシキさんもありがとうございました!!」
一気に言って慌てて手を振ると、皆笑顔で手を振ってくれた。
それだけで嬉しくて、私も笑顔になる。
光に視界が覆われて、目を瞑ると、ビュウッと強い風が顔に当たって、驚いて目を見開いた。
「あ、あれ??!」
部屋に帰ったと思ったのに、なぜか翼を出したオミさんに横抱きされて、オミさんのお城の上にいる?!
「な、なんで??」
「‥ちょっと散歩してから帰る」
オミさんは横目で私にそう言うと、スイッと水の中を泳ぐようにゆっくりと空を飛ぶ。
そうして、オミさんと一緒に行った湖や花畑、大きな森に、朝食を一緒に食べた山をぐるっと飛んで見せてくれた。良い思い出、いっぱい出来たな‥。そう思って、オミさんを見上げる。
「‥オミさん、ありがとう!」
「‥別に‥」
ちょっと照れ臭そうなオミさんに小さく笑う。
不器用な優しさが嬉しくて、胸元に顔をすり寄せるとオミさんの体がちょっと固まった。ん??どうした?目元の赤いオミさんが私を見る。
「‥か、帰ったら、肉丼な」
「好きですねー‥」
「お前の方が好きだ」
「んなっ?!!」
急な甘い言葉に驚いて赤い顔になった私をオミさんがニヤッと笑う。
「好きのゲームがあれば俺も勝てるな」
「おっと?言いましたね。オミさん、今両腕が私で塞がっているのをお忘れで?」
私も不敵に笑い返すと、オミさんがハッとした顔をする。
「オミさん、愛‥」
って、言おうとしたらオミさんに唐突にキスされた。
し、しまった!!!その手があった!!?オミさんの顔が離れて、私をニヤニヤした顔で見つめる。
「今は空の上だしな?逃げられないな?」
「や、ちょっと、待って?い、今はその休戦しましょうか?」
「嫌だ、無理だ」
「んなーー!!それ、私のセリフ!!!」
抵抗虚しく、私は散々空の上でオミさんにキスをされて、満足そうな顔のオミさんと夕方の我が家へようやく帰り着いたのだった‥。た、ただいま???




