竜の神様、神の島でやる気満々。
オミさんとクリーム色の石畳の上を歩いて、林を抜けると、
ものすごく広い道が目の前に広がり、その奥に高い石の建物があってその手前に階段がある。あの階段を登って、神殿に入るのかな??
「本来、ここまでなら誰でも入ってもいいんだ」
「そうなんですか?ヨークさん達は入ってはダメって‥」
「ああ、奥の神殿はもちろんダメだ」
やたらと入らないように、そう言い含めてあるらしい。
なるほどなぁ〜‥。
「オミさん、どうしてここへ来たんですか?」
「審議を止める為だ」
「え?もう秘密裏に出されたって‥」
「秘密に出しても、奴らはここまで持ってこないと審議は受理されない」
「ここ‥?」
オミさんは私の手を引いて、奥の神殿から海側に私の体を向けると、
そっちは海辺まで一直線に道が繋がっていて、海辺の手前に石で出来た祭壇らしきものが置かれている。
「あの祭壇の上に、審議の書類を置かないと奥の神殿にいかない」
「書類をあそこに置く前に奪い取ろうと思ってました?」
私がそう言うと、オミさんがニヤッと笑う。
「審議の話が出た時点で、用意してると思ってたからな。こっちにあらかじめ来てたんだ」
「オミさんの行動がすごい‥」
「まぁ、だから兄貴達も今頃結婚式挙げてると思うぜ。秘密裏に」
え?!!そうなの??目を見開くと、オミさんはニンマリ笑って‥、
「こっちがやられっぱなしなんて格好つかないだろ?」
なるほど王族様もしたたかでいらっしゃる?
「‥なら、一緒にやらせてください」
「ダメだ、危ねぇ」
「私だって書類を破くくらいは出来ますよ?」
「破けねぇ。そんなヤワなモンで出来てねぇ」
オミさんと私で、しばし睨み合う。
両者一歩も引かないつもりである。だって私は勝手に逃がされて、勝手に婚約破棄されて、また何も出来ずにいるのか?
「分かりました。一発勝負で決めましょう」
「はぁあ?」
「オミさん、愛‥「「だーーーー!!!!!」」
オミさんが慌てて大きな手で私の口を塞いだ。
ニンマリ笑って、オミさんを見上げると、ぐっと口を悔しそうに歪めるオミさん。
「‥お手伝い決定ですね。よし、何か武器を探します!」
「お前なぁ!言っておくけど、まじであっちだって危なくて‥」
「どうぞお構いなく〜。私は私で頑張ります!」
「そうじゃなくて‥あーー!!もう!!!」
森の中に、武器になりそうな木でも落ちてないかと探すべく、構わず歩いていくと、オミさんが髪をガシガシとかく。
「本当にあぶねーからな!」
「そんな危ないのをオミさん一人で対処しようとしてたんですか?」
「俺はいいんだよ!」
このぉ!!クルッと振り返って、オミさんを真っ直ぐ見上げる。
「よくないです!!私だってオミさんが大事なのに!」
「なっ‥」
「一人でそうやって何でも抱えたり、どうにかしようってしないで下さいよ」
オミさんの気持ちも分かるんだ。
きっと誰かが傷つくくらいなら、自分が‥って。それは私も同じだから。
オミさんが傷つくくらいならって‥。ああ、本当にお互いに不器用だ。だからお互いに好きになったのかもしれないな。
私は瞳が揺れるオミさんを見上げて、
「役に立てないかもしれないけど‥、せめて側にいさせて下さい。何かあったら、相手をこうパンチすればいいんでしょ?」
ちょっとパンチの真似をしてみると、オミさんは眉を下げて小さく笑った。
「‥本当にお前は‥」
「お前じゃないです。青葉ですー」
「‥青葉、本当に危なくなったら神殿の中入れよ」
「いいんですか?」
「ここまで来てる時点で、何も怖くないだろ?」
「そうでした」
オミさんは私の手を握ると、
「あっちに俺の寝場所がある」
「え?」
「ひとまずいつでも戦えるように休むぞ」
「あ、はい」
「あと武器の扱い方も教えておく」
「お、おお、分かりました」
「躊躇わず、ぶん殴れよ」
「‥オミさんが言うと、説得力ある〜〜‥」
しみじみとそう言うと、オミさんはニヤッと笑う。
うん、私の好きな笑顔である。私も負けじと笑ってみせた。




