竜の神様、竜の国で友人に任せる。
竜になったヨークさんの手の中でなんとか転がらないように踏ん張っている私‥。ものすごい速さで飛んでいるのだろう重力がすごい!!
後ろから誰かが「待て!!」「早く捕まえろ!!」と声が聞こえる。
ヨークさんがセオさん達に、
「このまま水竜の里に行くと、リリアちゃんが脅される可能性もある!洞窟に逃げるぞ」
「え、あそこ行くの?その手前の谷が深いから怖いんだよな〜」
「エトラ!!てめー本当黙っとけ!!」
「お前、絶対リリアちゃんに言いつけるからな!!」
‥こんな緊迫した状況なのに、なんて緊張感のかけらがないんだろう、エトラさん‥。思わず手の中で呆れていると、ヨークさんが私に話しかける。
「そういう訳で悪い!ちょっと行き先変更する」
「すみません!お願いします!」
私がそう言うと、ドガッと何かがぶつかった音がする。
な、何??!
「セオ!大丈夫か?!!」
「あいつら力を撃ってきた!!」
「ちっくしょー殺す気かよ!!竜族同士の殺しはご法度だぞ!!」
「あ、また撃ってきた!!」
わぁわぁと騒ぐ声に私は不安になる。
力を撃ってきた?
オミさんの光のようなものだろうか?大丈夫??皆、怪我しちゃうんでは??そんな事になったら大変だ。それなら私が人質になった方が‥。
「落ちろ!!!」
誰かが叫んだ声がして、ドガッと今度は私の真上で音がした。
と、グラリと身体が思い切り傾いた。
「「「ヨーク!!!」」」
皆の声が重なって、そのまま鈍い音が何度もするとセオさんや、エトラさん、ノルトさんの呻き声が聞こえる。なんとかまだ手の中にいるけれど、ものすごい勢いで落ちていくのだけは分かる。
「落としたぞ!」
「そのまま谷底へ落ちてしまえ!」
どこか遠くでそんな声が聞こえてたけれど、ものすごい衝撃音に私は身を竦めた。
い、痛くない??
でも、何がどうしたのだろう??
ヨークさんの竜の指は力が抜けたのか、ふわりと開いた。
そっと指から顔を出すと、周囲は静かで…そして真っ暗だ。
「よ、ヨークさん!?セオさん??ノルトさん!ついでにエトラさん??」
声を掛けるけど、返事がない。
怪我をしたんだろうか‥。
心配になって、肩に掛けていたポーチからスマホを取り出して、明かりを点けてヨークさんの手の平から降りる。スマホを皆に照らしてみると目を瞑っているけれど、大きな怪我はなさそうでホッとした。
周囲を照らしてみると、暗い洞窟の中のようだ‥。
ゴツゴツとした岩が見えて、天井の方を見ると小さな明るい穴が見えた。もしかして、あそこから落ちてきた??よく無事だったな‥と、思わず腕をさすった。
「うっ‥」
ヨークさん達が、声を出すと…
シュンと音を立てて人間の姿に変わった。
「ヨークさん、セオさんに、ノルトさん、大丈夫ですか?」
「お、俺は大丈夫だ」
「あ、そうだ。エトラさんもいたんだ」
「おい!!酷くないか?!」
「「「いや、酷くはないぞ」」」
ヨークさん達の声が重なって、シュンと小さく項垂れるエトラさん。
皆、ちょっと頭をさすりながら立ち上がって周囲を見回す。体は大丈夫なんだろうか?
「あの体調は‥」
「あー、なんか不思議と大丈夫。それより悪かったなぁ‥。予定先に送り届けられなくて‥」
申し訳なさそうなヨークさんに私は慌てて首を横に振る。
「助けて頂いただけで十分ですよ!ありがとうございます」
まだ数回、しかもほんの少ししか会った事のない私にここまでしてくれるなんて感謝しかない。私は微笑むとヨークさん達も嬉しそうに笑ってくれた。
「ところで、ここって空を飛んでた時に言ってた洞窟ですか?」
「いや、その手前で落ちたんだ。こんな所‥あったんだな〜」
そうなの??
洞窟とか、そこら中にある感じなの??
皆、周囲を見ながら「出口あるかな〜」「飛んで戻ってもヤベーしなあ」「なぁ、なんか飯ない?腹減った」と口々に話してのんびりしている‥。ここは私だけでもしっかりと出口を探さないとだな?!
スマホのライトを照らして、周囲をもう一度しっかり見回そうとすると、
小さな明るい2つの光が見える。
光??
ライトをもう一度光った所に照らしてみると、その2つの光がこちらへ迫ってきた??!
「え、ええええ???!!」
私達の目の前に大きな黒い影が立ちはだかり、黄色に光る大きな鋭い瞳がこちらを睨んで私は足が竦んだ。ちなみにエトラさんは私の後ろに隠れた。こ、こら!!!乙女の後ろに隠れるんじゃない!!




