竜の神様、竜の国で逃す。
私を守る‥そう誰かが話していたけれど、どうもそれこそが危険らしい。
いつの間にかセキさんとオミさん、ヨークさんを始めとした友達さんと、水竜のリリアちゃんまで私を保護する事に動いていた事に驚く。
「すぐにルディオミ様がお迎えにあがりますので、それまでどうぞお気をつけて‥」
セキさんが寂しそうに私の手を握るので、私も握り返してからそっと手を離す。
3人に先導されてすぐに暗い闇の中を進むと、後ろで扉が静かに閉まった音が響いた。
ちょっと狭い洞窟を歩いていくと、すぐ前を歩いているヨークさんが振り返る。
「名前教えてなかったよな、俺はヨーク。銀髪はセオで、水色の髪はノルトだ。まぁ、あいつらは覚えなくても平気だから」
「あ、てめ!一人でいいかっこしてんじゃねーよ!」
「だー!静かに歩けって、セキに言われたろ!」
うーん、なんか危険な状態なはずなのに、なんかゆるゆるな空気が流れているな‥?
「あの、さっき白竜族の魔物が襲ったのが由々しき事態って誰かが言ってたんですけど‥」
私がそう話すと、3人の顔が曇る。
銀髪のセオさんが私を見て、
「他の竜族の一部がパティア様とファルファラ様の結婚に反対なんだ。それをどうにかしてひっくり返したいらしくて、あちこち動いてる。昨日俺達を襲ってきたのは確かに白竜族の魔物だけど、それを知っているのも俺達くらいだ。どこから聞きつけたか分からないけど、監視していた事は確かだ」
そこの言葉にハッとしてセオさんを見ると、隣の水色の髪をしたノルトさんが割って入るように私を見て、
「とにかくさ、ルディオミとあんたの仲も壊したいし、できれば人質にしようと思ってるんだよ」
「人質‥」
「まぁそうはさせないけど」
ノルトさんがにっこり笑って、前を向く。
そ、そうか‥。
私は呑気に観光気分でここへ来たけど、立場の違う人からすると私はまさに絶好のカモだったのか‥。
オミさんがやたら気にしてたのも、そんな事もあると予測してたから‥なのかな。落ち着いたら、すぐに会えるかな‥そう思っていると、洞窟の向こうに小さな光が見えた。
「‥あれ、出口‥?」
「そう、あそこからは俺が竜になってあんたを水竜の里まで運ぶ」
「よ、よろしくお願いします。あ、名前言ってませんでしたね」
「青葉だろ?ルディオミの前で呼んだら殺されそうだからさ〜ずっと彼女ちゃん呼びで悪かったな」
ヨークさんが可笑しそうに笑うと、セオさんとノルトさんが頷いて「ルディオミ、結構独占欲の塊だったんだな」「いやあぁ、あいつは絶対そうだろ」と言い合うので、私はちょっと照れ臭くなってしまう。
うん、皆いい人達で良かった‥。
暗い洞窟を抜けると、なんとそこは滝の裏側だった!!
こ、こんな所に通じているなんて‥、驚きに目を見開く。
少し細い道を下っていくと、少しひらけた場所に出たのでヨークさんはすぐに緑の竜に姿を変えると、私の前に両手を開いて私の前に差し出す。
「この手の中に」
「はい、お願いします」
ヨークさんの手の中に乗ると、そっと包むように握られ空へ浮かび上がる感覚になる。
「セオ、ノルト、周囲を一応注意な」
「おう」
「任せとけ」
二人の声も聞こえて、守ってくれる事に感謝ばかりだ‥。
最初に会った時は驚いたけど、優しい人達で本当に良かった。そう思っていると、
「おい!!お前ら〜、ルディオミの女は?」
エトラさんの声??
ヨークさんの手がビクッと跳ねて、私の体もその振動で跳ねた。
私は手の中から上を見上げた瞬間、
「お前達、今なんと言った!?」
「その手の中のものを見せて貰おうか?」
あ、あれ??何かもしかして‥まずい感じ???
知らない男の人の声がした‥そう思った途端、急発進したのかバランスを崩して手の中で倒れたけど‥ものすごい勢いで何処かへ飛んでいくのが分かった。
「エトラ!!!本当馬鹿!!!お前ルディオミに言いつける!!」
「わ、悪い!!もう大丈夫かな〜って」
「アホかー!!!すぐそばに誰かいるかもしれないから黙ってろって言ったろ!!」
「あーあ、俺、まだ彼女いないのに何かあったらエトラのせいだ!」
悪かったって〜!!ってエトラさんが言うけど、こんな事態なのになんでこう緊迫感がないんだろう。そう思いつつ、すごい勢いで飛ぶヨークさんの手の中で思い切りシェイクされる。こ、怖いよ〜〜〜〜!!!




