竜の神様、竜の国で結構愛されている。
セキさんの頭を撫でたらオミさんに私の手を速攻で握られた‥。
そんなオミさんを蛇神様がニヤニヤ笑って見るし、オミさんはメンチ切るし、私は私で恥ずかしいし。お願い‥仲良くして‥。
セキさんに食堂に案内されると、真っ白い石の壁の部屋に、綺麗な色とりどりのランプがいくつも吊るされ、長いテーブルの上に舟盛りの刺身とご飯、味噌汁という‥大変ミスマッチな食卓が広がっていた。
だけどそんなミスマッチは、食べたら吹き飛ぶ美味しさ!舌鼓を打つ私と蛇神様。
そして初めての高級刺身に訝しがるオミさん。一口食べて、目を輝かせるオミさんの反応に私と蛇神様の口角は上がりっぱなしであった。今度帰ったら回転寿司にも連れて行ってあげよう‥。
ご飯を食べ終えた私にセキさんがニコッと笑って、
「温泉もありますので、落ち着いたらぜひどうぞ!」
「え、温泉もあるの!?もう幸せすぎる〜〜!!」
そう言うとオミさんがニヤニヤ笑って嬉しそうだ。
‥なんかこっちへ来てから、私の反応に心配したり、張り切ったり、喜ぶオミさんが可愛すぎるんだけど‥。
私まで口が緩みそうになると、蛇神様が私を見て、
「青葉〜、一緒に温泉入ろう!」
「あ、はい。いいですね〜」
「‥なんでお前風呂まで入っていくんだよ」
オミさんがジトッと蛇神様を睨むと、
「なんじゃあ?竜の子は青葉と温泉に入りたかったのか?!んん〜〜?」
「「「るっせぇ!!!!さっさと浸かってこい!!!!」」」
‥真っ赤な顔のオミさんがすかさず怒鳴ると、シキさんとセキさんがサッと温泉グッズを出すと私と蛇神様に渡してくれたけど、ホスピタリティ本当にすごいな???
案内された温泉はなんと3階にあった。
露天風呂もあってようやく夕方になった空の中での温泉は最高だった。
夕焼けは綺麗だし、その夕陽に照らされた木々も、湖も、山々も見えて、これは‥かなり贅沢なのでは??と、私は感動しきりだ。
蛇神様は頭に折り畳んだタオルを乗せて、温泉のふちに両腕をのせて「ア”ア”〜〜〜」ってまるでおじさんのような声を出すので笑ってしまう。
「そういえば青葉、お土産を持ってきたそうじゃな?」
「あ、そうなんです!でも、会うのが難しそうで‥」
「まぁそうだろうな。どれ、わしがお土産は渡しておいてやる」
「助かります!!」
私がそう言うと、蛇神様が小さく笑って夕焼けに照らされた遠くを見つめる。
「あいつもなぁ、母を亡くしてから家族とずっとギクシャクしててな‥」
「そうだったんですか‥」
そういえばお母さんがいないのは知っていたけど‥、
それが原因で家族の仲がギクシャクしたのは初めて知って、私は目を丸くした。
「ずーっとそれで荒れててなぁ。だから人間の世界に行って契約したなんて聞いた時は‥青葉を心配した」
そ、そうだったの??
私は驚いて目を見開く。
「それなのにお前さんを大事にしててなぁ。驚いたわい。あの暴れ回るルディオミが?ってなぁ。だからなぁ、あいつがお前をそれは大事にしているのを見ているとこっちまで嬉しくなるんじゃ。ああ、やっとそう想い合える相手に会えたんじゃな〜って!」
「‥そ、そうですか」
思わぬ言葉に顔が赤くなる。
蛇神様が何かとオミさんを構っているのって、そういう理由もあったんだ。なんだかこんな風にオミさんを心配したり、喜んでいる気持ちを聞けて嬉しい。
蛇神様はニマッと笑って「時々、からかうのも楽しんでおるがの!」と言うけど‥、すごく優しい顔してますよ?蛇神様。
二人で顔を見合わせて笑うと、優しい気持ちでいっぱいになる。
うん、オミさんは不器用で、口が悪くて、誤解を招いちゃう時もあるけど、優しいんだよね。だから以前来たパティアさんも、蛇神様もセキさんも気にかけているんだろうなぁ。
温泉から二人で出て、食堂の方へ行くと、
オミさんがそわそわしながらソファーの上で待っている様子が見えて‥。
さっき話していた内容を思い出して、私は顔が赤くなるし、蛇神様が面白そうにニヤニヤ笑うのでちょっと居た堪れなかった‥。
私は早速蛇神様にお土産を渡すと「ちゃんと渡しておく!」と受け取ってくれた。
そうして、クルッとオミさんの方を見上げて、
「竜の子、明日も来る!」
「来なくていい!!」
「嫌だ!!」
「なんでだよ!!?」
面白すぎるやり取りに私が吹きだすと、オミさんがジトッと私を睨むけど、あの愛されてる故だと思いますよ?蛇神様は私の頭を撫でてからシキさんと帰っていき、私はオミさんの部屋へ一緒に戻った。




