竜の神様、仕事する?!
葉月さんのお店へ行って、バイトをしつつさっきあった出来事を話す。
「へ〜、青葉ちゃんも不思議な経験してたけど、今回はすごくびっくりな体験したんだね」
「え?私の不思議な体験、葉月さん知ってたの?」
「葉月ちゃんが小さい時に抱っこしてると、よく丸い光がそばをふわふわ飛んでたよ」
なにそれ。
初めて知ったんですけど‥。
私がポカーンとしてると、オミさんが水に入った花のバケツを軽々と運びつつ、「お前の気は、好かれるからなぁ」って言うけど、それ‥全然わからないんですけどー??
オミさんを呼ぶきっかけになったお守り、なんか怖くて家に置いてたけど‥、ちゃんと肌身離さず持っておこうって思った‥。
夕方、大分日が暮れてお店もおしまいだ。
オミさんは、大きな鉢を奥のスペースに運んでくれて、大変助かる。
私はというと、掃き掃除をしてゴミをゴミ袋に入れるけど‥、袋のストックがないのに気付く。明日すぐ使うだろうし、買っておいた方がいいよね。
「葉月さん、ゴミ袋なかったから買ってくる」
「あ、本当??ごめんね、お願い!領収書もらっておいてね」
「はーい」
お財布を持って、近くのコンビニに入っていく。
えーとゴミ袋‥、いつもの置いてある場所からゴミ袋を掴んでレジに向かう。
領収書と、お釣りをもらって店に戻ろうとしたその時‥、
ゾクリと、神社から出てきた時に感じたあの視線を感じた。
え?
な、なに??近くにいるの?
ドクドクと胸が急に早く鳴るのが分かる。周囲を見回すと、ぼんやり視えたものはどこにも見当たらない。
気のせい‥?
急いで店に戻ろう。
そう思った時、目の前にお隣に住む気弱そうなお兄さんが、建物の横で佇むように私をじっと見ている。
その時、あの仄暗い視線を思い出した。
絡みつくように、どこか気持ち悪い視線‥。
あの視線は、薄く透明なぼんやりした形のものによく似ていた‥。
まるで今までの出来事が、パズルのピースのように急にはまっていく。最後のピースはオミさんの言葉、「生き霊がいる」だ。
私の出す物音に、すぐに反応して壁を叩き、
部屋を出る時に、扉を開けてじっと私を見ていた‥あの視線。
あれは、お隣さんのものだ!
慌てて、店へ走って行こうとすると、じっと佇んでいたそのお兄さんは目を見開いて私の方へ追いかけてくる。
「「待て!!!お前は、俺のだ!!なんで逃げる!!」」
信じられないくらい大きな声で叫ばれて、体がびくりと跳ねる。
周囲の人達が何事かと、叫んだお兄さんを見るけれど、そんな事お構いなしにこちらへ走ってくるので、私はもう怖くて泣きそうだ。
嫌だ、
助けて、
怖い。
「「青葉!!!」」
目の前に、オミさんがこちらへ走ってくる姿が見えて私はオミさんの方へ駆け寄ると、私の腕を掴んだかと思うと、オミさんの体の後ろに隠してお兄さんを睨みつける。
「ジロジロ、ネチネチ見やがって‥」
そう言ってオミさんは右手の指をちょっと動かすと、オミさんの指がバキッと鳴る。
お兄さんは一瞬怯んだけど、なにやら奇声をあげてこちらへ向かってくる。
オミさんがブツブツと何かを呟くと、お兄さんの足元から丸い白い円が広がる。
なにあれ??!
私もお兄さんも、周囲の人も驚いてその光景を見る。
丸い円は、眩い光を足元から照らすと、お兄さんの体からズルッと黒い影がベシャリと音を立てて這い出てくる。
「おーおー、随分ときったねぇの持ってたな」
オミさんはスタスタとその黒い影の方へ行くと、
その黒い影を掴んで、引き上げる。
「消えろ」
そう言うと、真っ白い光りでその黒い影を包んだかと思うと、あっという間に消してしまった。お兄さんは、まるで狐につままれたような顔をして、道に座り込んでいる。
「お前、もうちっと真っ当な生き方しろよ」
オミさんは手をペッペと振り払いつつ、お兄さんにそう言ってから私の側へ来るけど、私達を見ている周囲の人達を見回す。ど、どうするのこの事態!??私が慌ててオミさんを見ると、
「すぐに忘れる」
「「ほ、本当ですか!!??」」
「‥俺は神だぞ?」
「うーーん、神‥、神ねぇ‥」
私が思わずオミさんをまじまじと見ると、オミさんが「信心が足らねぇぞ!」って言うけど、行動が行動だしさぁ〜〜‥。




