竜の神様、あっさり倒す。
真っ黒いゴツゴツとした鱗を持つ大蛇のような生き物は、池から飛び出してきた男の人達に向かって咆哮すると、蛇神様が私とオミさんをチラッと見る。
「ルディオミ、わしお腹一杯で動けぬ」
「嘘つけ。できるくせに‥」
そう言いつつ、オミさんがサッと立ち上がったかと思うと、手の平から長い槍を出して縁側まで歩いて行くので、私も慌てて後ろをついていくと、蛇神様は私を見て、
「青葉はここで見ておれ」
と言うので、小さく頷く。
オミさんの姿を見た3人の人達は目を丸くして、「ルディオミ?!!」「なんでここに??」「しかも言う事聞いてるぞ??」っていうけど、やっぱり知り合いっぽいなぁ。
オミさんはチッと舌打ちして3人を一瞥すると、大きな魔竜と呼ばれたその生き物が大きな口を開けて、3人に飛びかかろうとするので、オミさんが縁側から高く飛んだかと思うと、槍で魔竜の口を殴って攻撃を跳ね返した。
牙をガチガチと鳴らしながら迫るその黒い魔竜の攻撃を避けていると、
「すげー!」「あいつ強くなってねぇ?」「あのルディオミが?」と、口々に話す3人組。
あの、逃げた方が良くない?私はハラハラしていると、オミさんが黒い魔竜の顎を槍の柄で思い切り殴ると、目眩を起こしたのかフラリと体を揺らす。その隙をついて、魔竜の眉間を槍の柄でひと突きした。
魔竜は一瞬、動きを止めたかと思うと、ぐりっと白目を剥いてドスンとものすごい音を立てて玉砂利の庭に体を倒した。
「す、すごい‥」
私が思わず呟くと、蛇神様が嬉しそうに笑って、
「うむ!!修行の成果が出たな!魔竜はなかなか手こずる奴なんじゃが良い攻撃だ」
そ、そうなんだ‥。
一撃でやっつけてしまって、私はびっくりですよ。
と、オミさんは倒れた魔竜の真ん中くらいまで行くと、そのお腹に向けて手を当てた。
その瞬間、エトラさんがお腹の手前に倒れるような形で出てきた!
3人の男の人達がエトラさんの名前を呼んで駆け寄ろうとしていると、オミさんがそのエトラさんの体から何かを取り上げる。エトラさんの腕の中に抱えられていたそれは、虹色の丸い球体だった‥。
「‥卵を盗もうとしたのか」
3人はオミさんの低い声にギクッとした顔をする。
蛇神様がジトーッと3人を見て、「あーあ、やってしまったのう〜」って言うと、ぱちっと魔竜の目が開いた!!
「お、オミさん!!魔竜の目が‥」
「大丈夫だ。」
オミさんは特に慌てる様子もなく、ザクザクと玉砂利を歩き魔竜に近付くと虹色の卵をスッと魔竜の口の前に差し出した。
「おら、卵を返す。悪かったな」
魔竜は黄色の瞳をギョロッと動かしてオミさんを見てから、長い赤い舌を出すと、虹色の卵を口の中に入れる。
蛇神様が、玉砂利の上をサンダルをいつの間にか履いて魔竜の前に来ると、
「ものすごーくとっちめておく!!地竜の王にも言っておくな」
ニヤッと蛇神様が笑うと、魔竜は瞬きする。
まるで「よろしく」と言ってるみたいだな‥。蛇神様の両手が淡く光を発すると魔竜はシュンと音を立てて消えてしまった。
「き、消えた‥」
私がポカーンと口を開けて驚いていると、隣にいるラナちゃんが苦虫を潰した顔で倒れているエトラさんを見て、
「蛇神様の力で元いた場所に返したんでしょ〜。ていうか、エトラもお腹に入れたまま返せば良かったのに‥」
「‥そ、それはどうかな〜〜??」
流石に消化されてしまうのは見たくない。
思わず想像しかけて、慌てて頭を振ると、3人の人達が私とラナちゃんを見ている…?
「え、ルディオミの匂いしてるぞ??」
「まさか?!あ、でも本当だ!!」
「エトラが言ってたけど、まじだったのか??」
な、何を言ってたんだ、エトラさん??!
私が思わず後ずさると、オミさんが槍で3人の頭を次々と殴る。
「アホか!!!なんで魔竜の巣に入った!しかも卵盗みやがって!!!反省しろ!!」
「あ、あれはエトラがお土産に渡したいって!!」
「俺たちはたまたま巻き込まれたというか?」
「あいつアプローチしても全然ダメって泣くからさ〜」
ゆ、友情‥なのか?
私とラナちゃんは思わず遠くを見つめると、にっこり笑った蛇神様が3人の前に立つと、
「「「「「この、ばっかもーーーーーん!!!!!」」」」」
と、昭和のお父さんのように叫んで晴れ渡る空の下、3人にゲンコツを食らわせた。倒れているエトラさんも含めて。




