竜の神様、キスをする。
竜族の好きな人に匂いをつける‥は、イコール「キス」をするだそうだ。
わ〜、ロマンチック〜〜って聞いているだけならそう思うけど、実際にその立場になると恥ずかしくて堪らない!だってキスしたら「ああキスしたんだ」って思われるって事でしょう?!で、今はしてないんだな〜って思われてるって事でしょう?!!
恥ずかし過ぎて地面に埋まりたい。
いや、いっそ埋めてくれ‥。
そう思ったけど、オミさんにしっかり手を握られた上に「逃げない」って約束しちゃったし動けない。しばらく二人で動けなくなって座り込んでいたけど、ど、どうしたらいいんだろう。
そっと視線だけオミさんを見ると、オミさんもこちらを見たのか視線がガッツリ合ってしまう。
それだけで心臓がドキッと大きく鳴って、慌ててまた俯いてしまう。
ああ〜〜!!!なんて事を聞いてしまったんだ!
ようやく普通に話したり、目を合わせる事が出来るようになったのに、これではまた逆戻りじゃないかぁ!!
「‥青葉」
オミさんの声にビクッと体が跳ねる。
と、大きな熱い体温が伝わってくる手がさっきよりもギュッと強く私の手を握る。
「‥まだ別に無理しなくていい」
「っへ?」
思わず顔を上げると、オミさんが小さく笑う。
「お前すぐ恥ずかしがって逃げるし」
「うっ」
「目も合わせなくなるし」
「ううっ」
「話もまともにできなくなるし」
「うううっ」
「‥そっちのが俺は嫌だし」
オミさんはそう言うと、恥ずかしくなったのかプイッと横を向く。
その言葉を聞いて、嬉しいのと恥ずかしいので胸が一杯になる。‥目も合わせられなくて、逃げて、話せなくなってしまった私に寂しいって思ってたんだ‥。私がどうすればいいんだろうって思ってたけど、オミさんも戸惑ってたんだ‥。そんな事‥ちょっと考えれば分かる事なのに‥。
オミさんは黙ってしまった私をちらっと見て、
「頬にいきなりキスして悪かった」
「えっ?」
「‥嫌だったろ‥」
「そ、そんな事はなくてですね!?あ、あれは驚いて、あと、は、恥ずかしくて‥!だから、い、嫌ではなくて!!」
私が慌てて説明すると、オミさんはますます横を向いて顔を逸らすけど、耳まで赤い。
「‥分かった」
って言って、また黙ってしまった。
‥匂いがキスをする事なんて聞いて驚いたけど、オミさんは習慣も知らない私を気遣ってくれてたのかな?頬にキスした事を謝ってくれたくらいだし、そうなのかもしれない‥。
そう思ったら、私も多少歩み寄るのも大事‥か?なんて思って、オミさんを見上げる。
「あ、あのですね!私はオミさんがす、好きでして‥」
「おう」
「だ、だから、その今度は言ってくれれば‥その」
「‥おう」
「えーと、い、今とかでも別に‥」
オミさんの目がまん丸になって、私は慌てて顔を横に向ける。
い、言ってしまった!!
すんごい事を言ってしまった〜〜〜〜!!
ギュッと恥ずかしさのあまり目を瞑ると、オミさんの熱い手が私の手の甲をそっと撫でる。その優しい指先の動きにホッとして、ちょっと力が抜けると、
唇に柔らかい感触がして、チュッと音がする。
へ?
目をパチッと思わず開けると、オミさんがくしゃっと笑う。
「い、今‥」
「もう一回、」
「へ?」
オミさんの顔が迫ってきて、慌てて目を瞑るとオミさんがまた笑う気配がする。
そうして、また唇に柔らかい感触がして、
思わず体が揺れてしまう。
唇がゆっくり離れたかと思うと、また唇が触れてくるのでドキドキしすぎて心臓が止まりそうになる。いや、これ絶対止まると思う!!
啄むようにキスをされて、唇が触れるか触れないかの距離でオミさんが静かに私を見ながら、
「‥‥好きだ」
静かにそう呟くから、心臓が一瞬止まった。
確実に止まった。
そぉっとオミさんが離れる気配がして、私はそっと目を開ける。
もう分かっている、私の顔も耳までもきっと全部真っ赤だ。だけど、目を開けたら目の前のオミさんも真っ赤だ。
「‥オミさんも真っ赤」
「‥当たり前だろ」
そういってオミさんはプイッと横を向く。
なんだよ、オミさんも相当可愛いと思いますけど??!
私は小さく笑って、
「‥オミさん可愛いですね」
そう言うと、オミさんにいきなり抱きしめられ、噛み付くようなキスをされて目を回したのは言うまでもない。ちょ、そういうのはまだ無理ですから!!!!




