竜の神様、ご挨拶する。
白いお饅頭かと思ったら、神様の使いだという「まる」さんを私も見る。
じ、神社の娘ですし、挨拶はせねば???
ドキドキしつつ、まるさんを見て、
「あの、小都森 青葉と申します」
「ああ!龍を祀る神社の娘さんですね!」
え??名前を言っただけで分かるの?!
私が目を丸くすると、まるはニコニコ笑ってコロコロと体を揺らす。
「そうですか、龍繋がりでルディオミ様はこちらへいらしたのですね!」
「まぁ、そんな感じだ」
嘘おっしゃい。
暴れて神としてやる気があるんか!ってお父さんに言われて、修行して来いってここへ送られたって聞きましたけど?私がジトーッとオミさんを見ると、目を逸らされた。あ、こら!!
まるさんはそんな私達を見て、
「言の葉の神様は、楽しそうだと笑っております。あい分かりました。ルディオミ様の事が分かれば、言の葉の神様も安心だそうです。いつでもこちらへ遊びにいらして下さいとの事です」
「‥すぐ挨拶に来れなくて悪いな。騒がせるがよろしく」
オミさんはそういうと、まるさんはもう一度ニコッと笑うと、コロコロと拝殿の格子の方へ転がっていくと、真っ白い手にまるさんが乗る。そうして、手はゆっくり中へ戻り‥静かに格子の扉が閉まった。
シンと急に辺りが静まったかと思うと、オミさんが私を見る。
「よし、帰るぞ」
「え、い、いいんですか???」
私が格子の扉の方と、オミさんを交互に見るけれど挨拶は終わったとばかりに、また鳥居の方へ向かって行くオミさん。マイペーース!!神様ってこんなマイペースな生き物なの??
鳥居を潜って、もう一度振り返ると、
確かに鳥居があった場所が、路地になっている。
「えっ‥‥」
目を見開いて、辺りを見るけれど‥、と、鳥居は!??
ぽかんと口を開けていると、オミさんが私を見て、
「俺といる時とか、あっちの神さんが入っていいって時だけお前も入れる」
「「そ、そんな場所だったんですか!?」」
「神の国と、こっちの世界の境目だからな」
びっくりなんですけど??!
私がまだ驚いた顔をしていると、オミさんが私を見て、
「腹減ったから、夕飯買って帰ろうぜ」
「‥マイペースが過ぎる!!ダメです。これから葉月さんの所でバイトしてから帰ります!」
「お前、そんなに小さいのに大丈夫なのか?」
「小さい言うな!!158もあれば標準です!!オミさんがデカイんです!!」
私が怒ってそう言うと、オミさんは私をまじまじと見て「そうかそうか」って言うけど、絶対バカにしてるでしょ?!ジロリと睨んで、元来た道を私は先に歩いて行く。
瞬間、何かが私をじっとり見ている気配を感じて背中がゾクリとする。
視線の先を見ると、電柱の横に何か‥
人のような形をしているけど、薄く透き通っているものがこちらを伺うように見ているのに気付く。顔は俯いているのに、どこか仄暗い、じっとりとした絡みつくような視線を感じて、全身が粟立つ。
な、なにあれ??!
後ろへ後ずさるとオミさんの大きな手が私の目を見えないように目隠しする。
「お、オミさん???」
「‥神のとこにいたから、一時的によく視えるようになってんな。あっちは視なくていい」
「ほ、本当に?」
「俺がいる」
なんて事ない一言だったんだろう。
でも、そん一言にものすごくホッとした。
何かあの視線は、どこかで覚えているものだったから‥。
「ゆっくり、俺の方を向け」
そう言われて、そっと体の向きを変えてオミさんを見上げると‥、真っ赤な炎のような長い髪が目の前に見えて、そのまま視線をあげると、いつものにやっとした顔じゃなくて、穏やかな顔が私を見つめている。
‥思わずドキッとしたじゃないか。
「‥バイト、行くんだろ?」
「行きます」
私が頷くと、オミさんはニヤッとまたいつものように笑った。
「怖いなら、手でも繋いでやろうか?」
「結構です!!」
見えなきゃ大丈夫!!
そう思って、怖さを振り払うように私は前を向いて歩き出すと、オミさんが後ろから笑いながらついてきた。
「おい、昼食ったカツサンドまた食べたい」
「「ええい!!働いて、自分で買って下さい!!」」
変なのも怖いけど、空っぽになった財布だって怖い!
葉月さんの店に急いで行くために足を速めたけど、オミさんの長い足はすぐに私に追いついて‥それどころか、抜かしてくのだった。‥って、場所知らないのに、先に行くんじゃな〜〜〜〜い!!!!




