竜の神様、ダブルでご機嫌。
キスされて以来、オミさんとうまく話せないし、
顔も見れなくなってしまったのに‥。
なんで二人に増えるんだ!!!
無理だって言ってるのに〜〜!!そう思いながらオミさん達に抱きしめられて私は朝目を覚ました‥。
どっちからも腕のシートベルトをされて、もう苦しい。
あと筋肉って重い。
「お、オミさん起きて〜〜、重いよ〜〜」
私がそう訴えると、どちらのオミさんも目を覚ます。すると二人してお互いをジロリと睨む。
「おい、お前手を退かせ」
「お前だろ」
「‥同じ人間なのに喧嘩しないで下さい」
なんという器用な喧嘩をしているんだ。
私は何とか腕を離して貰おうとするけど、どちらのオミさんも譲ろうとせず私を腕に抱き込もうとするから‥もう無理!虫の息!!っていうか死ぬ!!
「も、じゃ、ジャンケンして下さい!!」
腕の中で叫ぶと二人でじゃんけんをして、ようやく負けた方が悔しそうに腕を退かしてくれたので、ホッとして私も体を起こそうとすると勝ったオミさんが私をぎゅうっと抱きしめる。
「お、オミさん!!!?」
「‥やっとこっち向いた」
その言葉に顔が真っ赤になる。
‥確かにオミさんを全然見られなかったけど‥、そ、そんな風に思ってたの?
と、私から離れたオミさんが私の頬を突く。
「‥こっちも見ろ」
「え、えっと?」
「ダメだ、青葉はこっちだ!」
「てめ!!青葉、こっち‥」
「起きます〜〜〜!!今日は学校なんだから遅刻しちゃうでしょう!!」
私は叫んだ。
防音、遮音の力が使われてて本当に良かった‥。
でなければ、我が家はとっくの昔に通報されていただろう‥。
渋々起きたオミさん達から急いで逃げて、洗面所で着替えてから朝食の支度をしようとすると、オミさんズが一人はトーストを焼いて出してくれて、もう一人がコーヒーとスープを出してくれた。
「‥お、おお、二人って便利‥」
思わずそう呟くと、二人はニヤッと笑って、
「「ここに座れ」」
と、お互いに隣を譲らない。
嗚呼、朝からこれか‥。
私は二人の間に座る事で一時の平和と静寂を手にした。‥でもこれすぐ終わるんだろうなぁ〜〜。はあっとため息をついて、二人を交互に見る。
「‥今日は二人とも姿を消して学校に行きましょうか」
「「なんで?」」
「だってどっちも学校へ行くって言って喧嘩になるでしょう?」
「「‥こいつだけ消えれば‥」」
「すでにお互い指差してるし‥今日は二人とも消えましょうね」
私がそういうとオミさんズは大変ぶすっとしてお互い睨みあっていたが、私はさっとその場を離れて食器を洗った。授業は午前中で終わって、お昼を食べたら午後はバイトだ。
蛇神様は3日くらいで治るって言ってたけど‥
早めに治って欲しいなぁと二人を交互に見る。
「…じゃ、学校へ行きましょうか」
「「おう」」
「喧嘩しちゃダメですよ?」
「「俺は神だぞ?」」
「うん神様だし安心ですね」
そう言って玄関から出て鍵を掛けると、両側からオミさんに手を握られる。
な、何で〜〜〜!!??
慌てて交互に顔を見ると、オミさんがニヤッと笑う。
「「仲良くしろっつったろ」」
「そ、そうですけど、そうですけど、て、手を繋ぐのは‥」
「「喧嘩するから、手を繋ぐ」」
「そ、そんな理由????」
ここ数日まともにオミさんに話す事も、見上げる事もできなかったけど、この分裂事件でオミさんと普通に話せてホッとしている反面、やっぱりまだ照れ臭いのに〜〜!
ちょっと目を逸らして、何とか前を向いて歩くけど、
同じタイミングでオミさんの熱いくらいの手が私の手を握るので、瞬間真っ赤になる。
「「赤りんご」」
オミさんズが可笑しそうに笑って話すので、私はもう叫びたい。
無理って叫びたいけど、もう外だ‥。
「うう、もう無理ぃ‥」
思わず呟くと両側のオミさんズはますます可笑しそうに笑うのだった‥。




