竜の神様、避けられる。
授業が始まる3秒前にオミさんに頬にキスをされ、それはそれは驚いた。
驚いた上に、めちゃくちゃ恥ずかしくて、
まさかの変化球からのストライクだったんで、もちろん完封負けですよ。真っ赤になった私が出来上がって‥、
それ以来、まともに顔が見られない。
まともに話せない。
何もかもがインポッシブル!!!不可能なのだ!!
しかし、今日も今日とてオミさんは通常営業で、お風呂から相変わらずびしょびしょの髪で出てくる。頼む!!私の健全な心臓の育成の為にも乾かしてきて!!
「おい、青葉、髪を乾かせ」
「自分でやって下さい」
「はいはい、ほれドライヤー」
「嫌です、無理です、お風呂に入ります」
「あ、おい!!」
うん、今日も今日とて難しい。
声を掛けられただけで、顔が赤くなってしまう私は一体どうすればいいんだ!?
慌ててお風呂場に逃げたけど‥、今まで普通に話していた私よカムバック!!頼むから戻ってきてくれ!!緊急事態なんだよ〜〜!!と、お風呂の湯船に浸かりながら私は頭を抱える。
「どうしよう‥、あと少しで連休なのに!!」
一緒に食べるご飯の味だってまともにしない。
名前を呼ばれるだけでドキドキする。
隣に座られたら、もう逃げたくて仕方ない‥。
「悪化してる、ものすごく悪化してるよ〜〜〜」
今までだって恥ずかしい時も、照れ臭い時もあったけど、キスをされて以来ものすごく恥ずかしくなってしまって、結婚したいって思ってたのに、これで結婚!??無理では??と、自分の心臓に要相談されているのだ。
いや、頑張ってなんとか連休までにはオミさんと今までのように話せるようにならないと。頑張れ私、龍の神様と、言の葉の神様もどうか!どうか一つ、よろしくお願い致します!!と、ものすごくお願いしてからお風呂から出ると、オミさんがベッドで横になりつつスマホを見ている。
ちょっとこっちに視線がないだけでもホッとする。
小さく息を吐いて、浴室の扉を閉めてそっとローテーブルの側のクッションに座る。ベッド付近なんぞ行けるか。
「‥青葉‥こっち来い。髪、乾かしてやる」
「え、いや、あの、」
オロオロして、オミさんをチラッと見るとオミさんの髪はすっかり乾いてる。‥力で乾かしたのかな?力なら一瞬で乾くし、大丈夫かな?どうしようかと思っていると、オミさんが小さく舌打ちして私の後ろにどかっと座るので、心臓が太鼓のゲームのように連打される。
が、頑張れ!!!私!
力なら一瞬で乾くぞ!!思わず目をぎゅっと瞑って、乾かされるのを待っていると、カチッと音がしてドライヤーの温風が髪に掛かる。
「えええ?!ち、力じゃないんですか!?」
「ドライヤーでいいだろ」
「いやぁ、あの、一瞬で乾くのも一興では?」
「どんな一興だ。おら、前向け、前」
「うううう…」
落ち着け、落ち着け私。
ビークール、ソークールだ!!
ふうっと息をゆっくり吐いて、なんとか気持ちを落ち着けようとするけど、オミさんの指が時々髪の間に差し込まれて、不意に触れられてドキドキする。
と、オミさんの視線が首筋にヒリヒリと焼けるように感じる。
これも力をちょっと分けてるからなの?
体を丸めて座り込んでいる私はオロオロとしてしまう。
「青葉‥」
オミさんの声にどきっとして体が跳ねる。
う、うう、バレてませんように!
ギュッと目を瞑ってしまうと、オミさんの手がそっと私の頬を撫でる。
「‥‥こっち向け」
ちょっと寂しそうな声に、そっと顔を上げてオミさんに頑張って振り向こうとすると‥、
「た、助けてぇ!!!」
パッと私達の前に黒ずくめの女の子が姿を現して、私とオミさんがびっくりして目を見開く。は、長谷君大好きな吸血鬼の女の子?!!ど、どうしてここへ??
すると、すぐに後ろからこの間私を連れ去ったエトラさんが姿を現して、
「待ってくれ!俺の太陽!!」
「ぎゃあああよりによって一番嫌いな単語ー!!!」
黒ずくめの女の子は叫んで、私達の方へ駆け寄ってきたけど、い、一体どういう事??!




