竜の神様、こっちを向かせる。
今日はお母さんが来る日!
スマホのアラームが鳴ったと同時に目が覚めるけど、もちろんオミさんの腕の中で起床だよ!まだ嫁にはいってないよ?
‥なんて自分で思って恥ずかしかったので、一度冷静になってからオミさんの腕から抜け出そうとするけど、動けない。抜け出せない。本当にこの筋肉シートベルトはどないなっとるねん。
「オミさん、起きますよ〜」
「眠い‥」
「オミさんだって、昨日は早く寝たのに」
「お前、寝言がデカイから」
「えっ、嘘!!」
「嘘だ」
神がサラッと嘘をつくんじゃない!
ジロッと睨むと、オミさんは腕を緩めてくれたので私は起き出して、体をぐっと伸ばす。うん、今日も元気に頑張るぞ!
「オミさん、今日一緒に授業でしょう?」
「おう、歴史学」
「眠いやつだ」
「面白いぞ?」
そうかなぁ〜。
確かあれ長谷君も授業取ってるけど、今日は来られるのかな?
焼いた食パンに最近、色々なジャムを塗るのにハマっているオミさんを見る。本日はりんごジャムらしい。満足そうに微笑んで食べている姿は和む。
朝食を食べて、二人で学校へ歩いていく。
と、前の方で小学生くらいの女の子が歩いているけれど、何かおかしい。何か違和感を感じて、思わずジッと見ていると、スカートの裾から茶色のフサフサした尻尾が見える?!
ギョッとして、隣を歩いているオミさんを見上げて、思わず腕をちょっと引っ張って小声で話しかける。
「あ、あの、オミさん、あの子‥」
「ああ、見えるな」
「し、尻尾‥ですよね?あれって‥」
「半妖か、妖怪だろうな。悪食じゃねぇな」
「あ、そ、そうなんだ‥」
ホッとして、女の子に気付かれないように私はまたいつものように歩き出すけど、びっくりしすぎて目が丸いまんまだ。そんな私をオミさんは可笑しそうに笑って、
「驚きすぎだろ」
「だ、だって、今まで分からなくて‥」
「ああ、そうだったな。魂の仮契約をしたから、多少視えるようになったんだった」
そういう大事な事、早く言って!!!
オミさんをジトりと見上げると、ニヤニヤ笑うけど‥、笑ってる場合じゃないですって。
「怖いなら手を繋ぐか?」
「‥大丈夫です!」
私は足早に歩いてオミさんの前を行くけど、オミさんは事もなげに私の横へ長い足を動かして、すぐに私の横にやってくる。
クッソ〜〜!!
負けてたまるか!!!
私が先に行こうとすると、オミさんは私よりも先に行く。
もう後半は追いかけっこのような状態で大学へ行ったので、私はもう息が上がってしまった。一方のオミさんはケロっとしているので、本当に悔しい。
ぶすっとした顔で、いつもよりずっと早く教室に着いた私とオミさんは、後ろの方の席へ座る。
「‥でも、半妖?とか妖怪って、あんな風にこの世界にいるんですね」
「そりゃお前もそうだろ」
「そうでした、まさに私もその一人でした」
「自分でも気が付かない奴もいるしな」
「まさに私ですね‥」
あとは、長谷君とか‥。
そう思った時、後ろのドアが開いて噂の?長谷君が教室へ入ってくるので、慌ててしまうけど、長谷君はいつもの調子で私と目が合うと爽やかな笑顔で挨拶をする。
「青葉おはよう!」
「お、おは、おはよう」
「どもりすぎ!」
「ちょっと舌が転がって?」
私がそう言うと、長谷君はハハッと笑いつつ、前の席に座っている友達に呼ばれてそちらへ行ったけど…行ったけど!!
私は目をまん丸にしたまま、ぐりっとオミさんを見る。
「お、オミさん!!い、今、長谷君のか、肩に」
「憑いてたな〜、黒いのが肩に」
そう、オミさんの言うように黒い塊のようなものがべったりと憑いていたのだ‥。
あまりの禍々しさに思わずどもっちゃったけど、あれって大丈夫なの?!以前、狐に食べられそうになったし、今回は大丈夫なんだろうか‥、ハラハラとしてしまって長谷君の肩を見ていると、オミさんの大きな手が私の目をいきなり覆った。
「‥あの、オミさん?」
「見過ぎだ」
「あ、ジロジロ見ちゃうとまずいですか?」
「‥‥そうだな」
そう言って、オミさんは私の顔を掴んでオミさんの方へグリッと顔を動かす。パチっと目が合うと、オミさんがニヤッと笑う。
え、ちょ、これは恥ずかしいんですけど。
慌てて顔を横に向けると、オミさんが頬杖をつきつつ、
「おい、りんごこっち向け」
「今無理ですねー」
絶対、こっちをニヤニヤして見ているであろうオミさん。
顔が赤いのが分かってるのにそっちを向ける訳がないでしょうに。




