竜の神様だってオロオロする。
オミさんと無事仲直りをしたけど‥、私は竜族の習慣もルールも全く知らないのも問題あるよね。
今度じっくりオミさんに聞こう。そう思いつつ未だ私を抱きしめているオミさんを見上げる。
「お、オミさん、あの腕を‥」
「お前、また逃げるだろ」
「‥逃げませんよ、多分」
「多分って何だ、多分って」
いや、本当恥ずかしいから!!!
腕で押し返そうとすると、オミさんがニヤッと笑ってギュッと抱き込むから、顔が真っ赤になる。ちょっと!!リリアちゃんが目の前にいるんですけど!?
「オミさん!離して!!」
「あ?聞こえねぇな」
「〜〜〜嫌いになりますよ!!」
そう言うと、オミさんの体がピタッと止まる。
と、そっと腕の力を緩めるので、サッとしゃがんで慌てて腕の中から脱出した。
オミさんは、そんな私を見てまたぶすっとした顔をするけど、あのですね!人前ではそんなベタベタしないんです!!私は!!
そんなぶすったれたオミさんと、私を交互に見たリリアちゃんは面白そうにクスクスと笑う。
「誤解が解けたようで良かったです」
「‥え、えーと、はい‥」
年上なのになんだか情けなくて、恥ずかしい‥。
思わず視線を逸らしてオミさんを見ると、ニヤッと笑う。‥笑ってる場合じゃないんですけど。
「お、こんな所におったか!」
後ろから声がして振り返ると、シャツにショートパンツ姿の蛇神様とボコボコにされて襟首を掴まれて、無の顔になっているエトラさんが立っている。‥これは相当やられたな?
リリアちゃんは、ニコッと笑って‥、
「蛇神様!うちの愚兄が申し訳ありません!ご指導のほど有難うございます!」
「いや〜、今回はどっちかというとルディオミかな?大事な婚約者に逃げられそうになってしまうし、オロオロしておったからのう〜」
ニヤニヤしながら、蛇神様はオミさんを見ると、すかさずオミさんはジロッと蛇神様を睨む。
「るせぇ」
「竜の子は、青葉に嫌われるのが本当に怖いんじゃなぁ〜〜」
蛇神様の言葉に私が赤くなる。
そ、そうなのか‥。
オロオロしてたのか。私は自分がイライラとモヤモヤしてたから、全然気が付けなかった。
オミさんはそんなちょっと照れ臭い私の手を急に握る。
「え、お、オミさん?!」
「帰るぞ!」
「も、もう??!」
「お前、バイトだろ!あと飯食ってねぇ!」
「あ、そ、そうだった!!すみません、蛇神様、リリアちゃんお世話になりました。あのまた‥」
オミさんは挨拶をしようとしているのに、私の手をグイグイと洞窟の方へ引っ張って行くので慌てて振り返って挨拶をすると、リリアちゃんも蛇神様も面白そうに笑って手を振ってくれた。
「もう!オミさん挨拶くらい‥」
「るせぇ」
オミさんが私をグイッと引っ張ったかと思うと、一瞬でオミさんは赤い竜の姿になったかと思うと、手の中に私を包んで抜けるような青空を一気に飛び上がる。
「わっ、わわ‥」
「‥今度、ゆっくりこっちを案内する」
「へ?」
オミさんがぼそっと呟いて、視線だけこちらを見る。
「‥今日は、空だけな」
それは‥、今度自分が案内したいって事かな?
なんだかその心遣いというか、『自分が案内したい』っていう気持ちが嬉しくて、小さく頷くとオミさんの竜の瞳が細められる。
手の中から、下をちょっと見てみると、
青々とした森や、大きな滝、ものすごく広い湖が見えた。
遠くにはものすごく高いんだろうなって思わせる山々が雪を被って連なっているのが見えた。もうちょっと見えるかな?そう思って、顔を上げようとするとゆっくりオミさんが私を手の中に包む。
「今度来た時のお楽しみだ」
面白そうに笑うオミさんの声だけが聞こえて、私はちょっと不満だったけど、今度がある事、約束してくれた事が嬉しくて笑顔になる。
と、カバンに入ってたセキさんが嬉しそうな瞳で私を見ていたので、単純な自分がオミさんにバレるのも何だか悔しいので、小声で「嬉しそうなのは内緒です」って言っておいた。




