竜の神様、新しい味との出会い。
空き教室へ姿を現してしまったオミさんを突っ込んで私は急いで扉を閉めた。
「どーして姿を現しちゃうんですか!!!」
「お前、断れなかったろ」
「いや断りますよ!!手の掛かるオミさんがいるんですから!!」
「‥お前なぁ、俺は神だぞ」
「神だったら、勉学の邪魔をしないでください!」
ドスドスと指でオミさんの胸を思い切り指でつついた。
嗚呼〜〜〜、教室に戻るのが躊躇われるではないか!まだ大学生活始まったばかりなのに〜〜。私が頭を抱えると、オミさんが流石に悪いと思ったのか、気まずそうに目を逸らす。
‥まぁ、悪気があってやった訳じゃないしなぁ。
確かに断りずらい雰囲気だったから助かったし。
「‥反省しているなら、もういいです、けど」
「お前、もう少しビシッと断れよ」
「反省してない!!微塵もしてない!!」
ちっとは懲りろ!!
ジロッと睨み上げると、私の手をそっとすくい取るので驚くと、手の甲のトカゲのマークを静かに撫でる。な、なに??慌ててオミさんを見上げると、ちょっと横を見ながら‥
「おら、消えたぞ。勉強に行くんだろ」
「そ、そうだった!戻らなきゃ!!」
オミさんを引っ張って教室へまた戻るけど、友達が私に声を掛けようとした所に先生が来てくれた。
一時間目から無駄話禁止!!とばかりの厳しい先生で嫌だなぁって思ったけど、かえって良かった。はぁ〜〜っと息を小さく吐くと、不意に手を引っ張られる。
え?何??オミさんを見ると、私の手を指差す。
教室へ戻らなきゃ!って思ってオミさんの手をずっと繋ぎっぱなしだったの忘れてた!!慌てて手を離す。
「す、すみません‥」
「お前、もうちっと落ち着けよ」
「‥‥誰のせいですか」
小さく呟くと、オミさんはニヤっと笑う。
まったくもう困った神様だ。
講義を聞くべく、前を向くとオミさんも静かに前を向いた。
そうして、結局午前中なんとか私に話を聞こうとする友達をなんとかかわして、授業を乗り切った。頑張った‥、頑張ったよ私。っていうか、これ私が修行してる感じじゃない!?
お昼を食べる為に購買でいくつかパンを買って、
あんまり人の目に触れるのもマズイので、空き教室を探してオミさんと一緒に入る。
「はぁ〜〜〜、疲れた!!はい、オミさんお昼です。今度はお金掛かっちゃうし、お弁当作っていきましょうね」
パン、3個くらいで足りるかな?
オミさんに渡すと、目を丸くしている。
え??足りないの?それとも焼きそばパンとか、カレーパンとかカツサンドとか嫌だった??
「‥お前、本当気をつけろよ」
「何がですか?食べないんですか?ずっと隠れてて疲れたりしません?」
「‥俺は神だぞ?」
「はいはいそうですねー」
オミさんのパンの袋を開けて渡してあげると、まじまじとパンを見て一口かじる。と、目を見開いて私を見る。
「なんだこれ!?面白い味がする!」
おお、いい反応だな。
私は面白くなって、オミさんの食べているパンを指差す。
「これ、焼きそばパンです。購買のパンって中身が普通に売られてるのよりギッシリ入ってるんですよ。こっちかカツサンド。お肉がめっちゃ入ってるんです。このカレーパンも美味しいんですよ〜!」
「‥お前一個で足りるのか?」
‥いや、そんなにお金ないし。
ハムサンドもまぁ、多少はお腹膨らむし?
「‥足りますよ」
「嘘つけ、大食いのくせに。昨日、飯二杯食ってたろ」
「しっつれーな!!ちょっと美味しく食べられるんです!」
そう言ったら、カレーパンを口に突っ込まれた。
いきなり口に入れるでない!!
ガブッと噛んで、咀嚼しつつオミさんをじとりと睨むと、可笑しそうに笑って私の口の端についたパンの一部を取ったかと思うと、パクッと自分で食べてしまった!
「「んぐっ!??」」
「おい、大丈夫か?水飲め」
「いや、そうじゃなくて、私の‥」
「お前、口の端についたパンくずさえ食べたいのか‥」
「「違います!!!!」」
あーー、ダメだこれ、話が通じない‥。
顔が赤いのは確実だが、これはあれだ。カレーパンの具が辛いって事にしよう。
なんてことを花の乙女にするのだ、まったく。
あー心臓に悪い神様だ!!そう思いつつ、ちょっと辛いカレーパンをしっかり堪能した私だった‥。




