竜の神様、結婚の予定。
翌朝、学校まで一緒に歩いていく。
まだまだ暑いけど、時折頬を掠める風は涼しくて、空を見上げると夏とは違う空の青さに秋が来る気配がする。
「‥あっという間に秋が来て、冬が来るんだろうなぁ」
「こっちは季節がよく変わるな」
「オミさんの国は、ずっと暑いままでしたっけ?」
「雨季が6月から8月まであるけど、それ以外はほぼ暑いな」
「ああ、だから最初うちへ来た時、結構薄着だったんですね」
5月でまだちょっと夜は肌寒いくらいの季節に結構薄着だったもんなぁ。
そっか、あれからもう4ヶ月経ったのか。というか、まだ4ヶ月しか経ってなかったんだな‥そんな事を考えていると、オミさんが私をジッと静かに私を見下ろしている。
「オミさん?」
「‥‥お前の実家、寒いのか?」
「え、あ、ああ、冬はすっごい寒いですよ!雪も降りますしね」
「雪‥」
「見たことあります?」
「他の国でなら。自分の所は降らないからな」
そうなんだ!!
それなら冬も家に連れてってあげたいなぁ。
雪だるまとか、ソリ、いや、スキーもスノボも教えたら上手に出来そうだなぁ‥。雪をキラキラした目で見そうだなって思って、思わず頬が緩む。
「‥なに笑ってんだよ」
「いえ、オミさんに雪遊びをまず何からして貰おうかなって思ったら、ちょっと楽しみ過ぎて‥」
真面目な顔で答えると、オミさんはちょっとくしゃっと笑って私の頭を撫でると「気が早い」って言うけど、季節って結構早く来ますよ??そう思いつつ、大学に着くと先生にレポートの事で呼び出された私。
「な、何かしたっけ?」
「名前の書き忘れでもしたんじゃねぇ?」
「なきにしもあらず!ちょっと行ってきます!オミさん、席取っておいて下さい」
オミさんは「気をつけろよ」って言うけど、オミさんの指輪もあるし‥、大丈夫でしょ。授業が始まる前に先生の部屋へ行こうと渡り廊下を歩いていると、不意に何かゾクリと背中を走る。
悪食?!
ふっと足を止めて、周囲を見回すけど‥、姿は見えない。
気のせい?
それでも、どこからかこちらを見ている視線をジリジリと首の後ろから感じる。
と、グイッと自分の腕を後ろに引っ張られてバランスを崩す。
「わっ!!」
後頭部に何かがぶつかって後ろを振り返ると、オミさんの腕の中にいる事に気付いた。
「お、オミさん!??」
「お前、本当すぐ狙われるな‥」
「え、な、何に??」
慌ててオミさんの睨んでいる方を見ると、
目の前に水色の長い髪を一つに結び、オミさんが最初に来た時のような服を着た男性がこちらを睨んで立っている。
「‥友達ですか?」
「「違う!!!」」
同時に叫んだので、仲は悪くないのでは?
水色の髪の人は、私をビシッと指差し、
「俺はお前との婚約を認めていない!!」
「お前に婚約を認めて貰おうなんて思っていない」
「ふざけるな!!お前にはうちの妹がいるだろう!!」
妹?
私はオミさんを見上げると、オミさんは非常に面倒くさい顔をして、
「そりゃお前の一方的な‥」
「妹ってなんですか?」
水色の髪の人にそう聞くと、ニヤッと笑って、
「ルディオミはな、俺の妹と結婚するんだ!!」
突然の事に目を丸くする。
あれ?この間、金髪美女さんと婚約破棄したよね?もう一人結婚のご予定が??オミさんは慌てて私の体をグッと引っ張る。
「勝手に決めるな!俺はこいつと‥」
「オミさん、竜って一夫多妻制なんですか?」
「はぁあああ!!?んなわけ‥」
「それもある!!!」
「エトラ!!お前、黙ってろ!!!」
‥つまり、何人とも結婚できるわけ?
へー、そんなの初めて知ったんだけど‥。
オミさんとエトラさん?は何やらぎゃあぎゃあと言い合っているので、私はオミさんの腕の中を、さっとしゃがんで滑り抜けると、オミさんが慌てて私の腕を掴もうとするけど、ジロッと睨む。
「‥‥オミさんなんて、知らない」
そう言うと、オミさんの体が固まったので、これ幸いと私はそそくさと先生の部屋へ飛び込むように駆け込んだ。
名前の記入漏れだったのがオミさんの言う通りで悔しかったけど、もっと重要な事を言ってないオミさんに腹が立って、あの後すぐにオミさんは私の隣に戻ってきたけれど、絶対顔なんて見てやるもんか!!そう思って、横をずっと向いて授業を聞いていたので、授業が終わると首が大変痛かった。




