竜の神様、電波に乗る。
三味線の皮にするだの、食べられるのか?だの言われて、すっかり泣いて怯える猫又の黒猫さんを見て、私はまずオミさんと蛇神さんをちょっと退かしてから、黒猫さんの方を向く。
「とりあえずですね、いくら目立ちたいからといって、そうやって目立っている人に乗っかってるのはダメですよ?」
「そ、そうなのか?」
「はい、そういうのはネットマナー的にもいけないんです」
「‥でも、俺も目立ちたい」
「うう〜〜〜ん、じゃあまず個人でアカウントを作って、アップする事から始めましょうか」
そういうと、黒猫さんは「アカウント?」「アップ??」と目をまん丸くしている。これは蛇神様に任せた方がいいかな?蛇神様をチラッと見ると、ニヤリと笑って猫又の所へ歩いてくる。
「仕方ないのう〜〜。昨今の妖怪というのは本当に新しい事に挑戦しないからの。どれ、わしがソーシャルネットワークについて、一から百まで教えてしんぜよう」
「か、神様〜〜〜!!!!」
「うむうむ、よきに計らえ!!」
‥うーん、まぁ、これなら大丈夫かな?
時計塔の精さんの側では映らない事を約束して、結界から出てくる。と、テレビ局だろうか、リポーターのお姉さんとカメラを持った人達があちこちインタビューをしている。
どうやら連日、時計塔と一緒に映った猫の写真で話題が持ち上がっているようだ。
「いないはずの猫が映って、可愛い!でも怖い!もしや時計塔の呪い?!とまで、最近囁かれているようです!」
と、ちょっと小綺麗なリポーターのお姉さんの言葉に時計塔の精さんは戸惑っているようだ。「ど、どうしましょう‥」と、心細そうに話す時計塔の精さん。
確かに、このまま呪われた存在、時計塔は作り直すか、最悪取り壊そうなんてなったら大変だ。私とオミさんは思わず顔を見合わせていると、リポーターのお姉さんが私に突撃してきた!!
「どうも〜〜!!今、取材いいですか?あの、猫が映り込む時計塔で写真は撮りましたか?!」
取材オッケーなんて言ってないのに、いきなり聞かれて私は目を白黒させつつ、
「は、はい撮りました‥」
って、答えるとリポーターのお姉さんの目が完全に獲物を狙う目に変わった。
「どうですか?何か変化とかありました?呪われて大変とか‥」
そ、そんなの言えるか!!
私はちょっと考えて、
「‥私の友達は、かえって猫と時計塔が写った写真のおかげで、ラッキーな事が起きたそうです」
ひとまずラッキーな事が起こった方がきっといい。
そう思って、苦し紛れに答えると、リポーターさんの目は益々爛々と光り出す。こ、怖いよぉおお!!
「例えばなんでしょう?」
「えーと、成績が良くなったとか、バイトでいい事があったとか‥」
「もしかして彼氏、彼女が出来た‥なんてのもありますか?」
「そ、そ、そうですね!?」
神社の御利益のような事をいうと、リポーターさんが更に色々くっつけてくれた。そして、私とオミさんを交互に見てにっこり笑って、
「ちなみに、その御利益のおかげで出来た彼氏さん‥ですか?」
「えっ」
私がオミさんを見上げると、オミさんはニヤッと私を見て笑う。
うううう、こ、これは答えないとダメなヤツ‥だよね。
じわじわと真っ赤になるのが分かるけど、
「‥‥‥そ、そう、ですね」
「あらーーー!!素敵ーー!!!ありがとうございました!!!」
殺してくれ。
いっそ殺してくれ。
それ以上はとてもじゃないけど顔が上げられなくて、俯いて返事をした私はオミさんの顔を見る事ができないし、正面で私達の様子を見ている蛇神様の顔も見られない。
次の獲物を探すべく、ものすごい勢いで違う人を探しに行くリポーターさんを横目に私は遠い目をしていると、時計塔の精さんと猫又さんは嬉しそうに笑い、
「とても良いアイデアでしたわ!!これで上手くいけばいいのですが」
蛇神様もニコニコ笑って、
「それなら抽選で100名様にわしからのささやかな加護をプレゼントしよう!さすれば、もっとネットで持ち上げられるぞ!!」
うん、確かに。
それならいいかもしれない。
「でも、私のインタビューが取り上げられるとは決まってませんからね?」
一応念を押して蛇神様には説明したけど、「問題ない!」って自信満々に宣言された。
ちなみにゲーム機は別荘から送ってくれるというので、有り難く頂戴する事にした。時計塔の精さんと、猫又さんはこうしちゃいられない!と、慌ただしく写真スペースに戻り、蛇神様は面白そうな顔で帰って行った‥。
つ、疲れた。
バイト前なのに、すごい疲れた。
オミさんをようやく見上げると、オミさんはちょっと目元を赤らめて口元をぐっと引き結んでいる。
「‥オミさん、それはどんな感情?」
「うるせぇ、バイト行くぞ、バイト!!」
「ちょっと待って下さいよ!オミさん、早い〜〜!!」
ズンズンと進んで行くオミさんを慌てて追いかけてバイトへ行った私であった。
そうして翌日、まさかテレビに出ないと思ったのに、思いっきり夕方の夕飯時に私とオミさんの姿が流れたらしく、教室に行くと公然と付き合っている事実が広がっており、教室の隅では長谷君が何故か遠い目をして座っていた。




