竜の神様、お仕事依頼される。
久々に時計塔の下まで行くと、テントが張ってあってその下でスタンプラリーと、クイズの紙を渡してもらった。
「へ〜、撮影した場所のスタンプを順に貰うと、クイズの答えが出るのかぁ」
バイトまで、まだちょっと時間もあるしオミさんと回れ切れるかな?
そう思って、オミさんを見上げると‥、
時計塔をジッと見ている。
「オミさん?」
「なんでもねぇ、面倒な事になる前に行くぞ」
「‥‥面倒な事???」
よく分からず、さっさとオミさんが歩いて行くので私も慌てて追いかける。ゲームでボコボコにされたの‥、結構引っかかってたのか?
次の場所でスタンプを押していると、女の子達もスタンプを押したり、写真を撮っている。女の子の一人がスマホをいじりつつ、
「ねーねー!聞いた?写真を時計塔の所で撮ると、霊が撮れるんだって!」
「猫でしょ?噂になってるよね」
「どうするー?時計塔の下で最後に撮る?」
「えー、怖くない??」
え??
猫??
私はオミさんを見上げると、げんなりした顔をしている。
もしかして、さっき面倒って言ってたの‥その事??
「オミさん、私の間違いでなければ時計塔さんって女性みたいな声をあげていた記憶があるんですけど、猫さんだったんですか?」
「‥女性だな」
オミさんは面倒臭そうな顔で私に答える。
「‥俺はゲームさえ貰えればいいから、さっさとスタンプ押してクイズの答えを出したらバイトに行くぞ、バイトに」
そうなの?
大丈夫ならいいんだけど‥。
そう思って、次のスタンプ場所へ行こうとすると、私の背中を誰かがトントンと叩いて振り向くと‥、
蛇神様と、濃い落ち着いた珈琲のような色の着物を着た前髪の長い女性が立っている。
「蛇神様?!!」
「青葉、昨日ぶりじゃの!!」
オミさんが、蛇神様の姿を見ると「ゲッ」と嫌そうな顔をする。
こらこら、もう少し隠して下さい。
「竜の子、お前気付いておったのになんでそうコソコソ逃げるかのう?」
「うるせー、俺はバイトだバイト」
「お前の口から、労働なんてびっくりじゃ」
「うるせぇ」
「どうせ青葉との時間を邪魔されたくなかったんじゃろー」
「「おまっ!!!黙ってろ!!!!」」
蛇神様の言葉に、思わず赤くなる。
お、オミさん、そんな風に思ってたんだ。私がオミさんを見上げると、プイッと顔を横に逸らされた。照れてる‥可愛い。
蛇神様はニヤニヤしつつ、私を見上げて、
「まぁ聞いての通り、時計塔の側に猫又がうろつき始めての〜」
「猫又!??」
猫又って‥、昔絵本で読んだ事があるような‥。確か妖怪だよね?
「なんでか分からないけれど、やたらとスマホに写ろうとするもんじゃから、時計塔の精が自分まで恐ろしく思われたら困ると、わしに相談してきたんじゃ」
そういって、隣の人を指差す。
「‥時計塔の精さん、なんですね‥」
「はい、以前はルディオミ様にはお世話になりました」
綺麗な細い声の時計塔の精さんは、長い前髪で目元は全然見えないけれど、口元は嬉しそうに微笑む。
そういえば、映画のスタッフさんが盗んだパーツをオミさんが投げて返したっけ‥。当のオミさんは「んな事あったか?」って気持ちいいくらい忘れてるけど。
「ちょうどわしもこっちに用があったから、時計塔の方へ行く所なんじゃが、竜の子、お前も付き合え」
「はぁあああ??!!」
「今なら、確実にゲーム機が貰える加護が付いたスタンプが全部付いている紙もやるぞ」
‥私とオミさんは、お互い目を合わせた。
ゲーム機は欲しい。
そしてお互い打ち負かしたい私達は顔を見合わせて、蛇神様と時計塔の精さんとで時計塔まで歩いて行った。
蛇神様は私を見上げると、
「猫又の写真がSNSで上がってるんだが、わしの姿を見せたらどうなるかのう」
「多分、とんでもない事になると思うんでやめておきましょう」
「わしも拡散されて、アイドルにでもなってみたいのう」
「できれば正攻法で行きましょう」
大蛇の姿では、爬虫類大好きな人にはアイドルとして崇め奉られるとは思うけど、普通のアイドルならそのままインスータにでも上げた方がいいだろう。可愛いし。
そんな会話をしている私達をオミさんは、「えすえぬえす??」と不思議そうな顔をしている。‥後で詳しく教えてあげよう。




