竜の神様、紹介して欲しい。
学校へ着くと、オミさんは宣言通り通り姿を現したまま一緒に教室へ入った。
何度か私とオミさんが一緒にいる姿を皆見ていたので、ヒソヒソと話してこちらの様子を伺う人もいたけど、オミさんは構う事なく私の教科書をペラペラめくって読んでいて、大変マイペースである。
‥婚約した神様と、大学の講義‥。
なんというか、とっても面白い事になっているなぁ。
遠い目をしつつ、ノートを用意していると長谷君がニコニコ笑ってこちらへやって来る。
「おはよ〜青葉!夏休みぶり!」
「おはよ〜。レポート提出した?」
「すげーギリギリだったけど、間に合った!」
「分かる。私もギリだった」
「だよな。あれは大変だった‥。で、さ、青葉」
長谷君はチラッとオミさんを見ると、オミさんは私を見てニヤッと笑う。
ん?これはオミさんを再度紹介した方がいいのかな?
そう思ったら、長谷君がちょっと思い出したように、私とオミさんを見て、
「えっと!確か留学生の‥青葉の友達でルディオミだっけ?」
「あ、ええと‥」
言いかけてちょっと止まった。
婚約者‥だけど、これって家族にも一応確認取ってからがいいよね?オミさんちもそういえば、オッケーなのか??そうなると彼氏って紹介するべき???
グルグルと迷って、一旦言葉が止まった私をオミさんがジロリと見る。
「‥おい」
「ええと、友達でな‥」
言いかけて、よりによって一番厳しい先生が入って来たので慌てて長谷君が自分の席に移動して行ったので、会話がストップしてしまった。長谷君が、隣の机に友達と座るのを横目で見ていると、オミさんがじっと私を見ている。
な、なんでしょう???
オミさんは椅子をちょっと動かして、私の体にピタッとくっつくので驚いた。
慌てて小声でクレームを入れる。
「な、なんでそんなくっ付くんですか?!」
「‥お前こそ、なんで言わねーんだよ」
ジッとオミさんに見つめられて、ギクッと体が揺れる。
つまりあれですよね?
友達じゃなくて、婚約者って言って欲しかった‥って事ですかね?
私は赤い顔を少しでも誤魔化したくて、ちょっと手元のペンを指で弄りつつ小声で、
「まだ、婚約したとかは家族に言ってないですし‥、か、彼氏とどっちがいいかなって‥ま、迷ったんですけど‥」
俯いてそう話すとオミさんが黙っているので、顔をあげると、
オミさんが赤い顔をしている??
「え?オミさん‥」
「こっち見るな」
大きな手でオミさんは私の顔をグリッと前に向けると、自分は私の教科書を引っ張ってそちらを見て、こっちを見ようとしない。
‥なんだよ、言って欲しいとか、
言おうと思ってたのを聞いたら赤くなるとか、
私の心の中は恥ずかしくて、むず痒くて、え、これが毎日!??って、ものすごく戸惑っている。そんな状態のまま、夏休み明けの今後の勉強のスケジュールを聞き終えて、学校は早々に終わった。端的にいってそれだけなのに疲れた。
誰かに何かを聞かれるのが恥ずかしいので、私はオミさんと足早にバイトへ向かった。
二人で商店街を歩いていると、以前私と長谷君で出演した映画の上映会が街の映画館でされているポスターが貼られている。私はちょい役だったけど、長谷君は準主役だ。改めて考えるとすごいなぁ。
お店に貼られているポスターをよく見ると、
『映画の時計塔の下で特設サイトあり!豪華景品もあります!』
と、書かれていて、ラインナップを見ると、最新のゲーム機器があるではないか!!パッと顔を上げて、オミさんを見上げると、ちょっとオミさんは驚いた顔をする。
「オミさん!時計塔の所へバイト前にちょっと一緒に行きません?」
「はぁあ?」
「スタンプラリーと、クイズに正解すると、豪華商品が!!!」
と、言ってポスターの景品を指差すと、オミさんは私を冷静な顔で見て‥、
「必ず当たるのか?」
「‥わ、分かりませんけど。でもゲームをもし貰えたら、オミさんをボコボコにできるなって」
「ボコボコにするのは俺だ」
「え、いや、私ですね?」
そう言うと、私とオミさんは必ず当たる訳ではないゲーム機の為に、時計塔へ競うように歩いていった。競歩はもちろんオミさんの圧勝だった。




