竜の神様、そわそわとげんなり。
魂を結ぶ仲になりたいと言われて3日。
甲斐甲斐しくご飯を運んでくれて、気を整えてくれたおかげで、ようやく体が動くようになって、オミさんに手を引かれて一階のリビングでゆっくりお茶を飲めた。
い、生きてるって素晴らしい。
感動している私をオミさんは私の向かいに座って、お茶を飲む私をチラチラと心配そうに見ているので端的に言って可愛い。
「お昼、何にしましょうかね」
「言っておくけど、何も作るな!お前は座ってろ!」
「え、体が鈍る」
「お前、死にかけたっていい加減自覚しろ!」
‥そうでした。
つい骨折とか擦り傷がないから、もう大丈夫って思っちゃうんだよなぁ。
「えっと、じゃあオミさん作ってくれます?」
「当たり前だろ」
横を向いて、目を合わせられないオミさんに小さく笑うと、玄関の扉が勢いよく開く音がした。
あ、これは蛇神様だな?
そう思ったら、勢いよく蛇神様とシキさんがリビングにやってきた。
「「青葉!!元気になったと聞いて!!!」」
「ありがとうございます。ようやく起き上がれるようになりました」
ペコっと頭を下げると、蛇神様は嬉しそうにニマニマ笑って私の隣に座る。
シキさんが立派なお重を持ってきて、
「快気祝いにささやかですが、お食事をお持ちしました」
「シキさん、何から何までありがとうございます」
「いいえ、あ、そうでした。あと本日は兄が来ておりまして‥」
「「へ???」」
私がそう言うと、シキさんの首元から赤い蛇のセキさんが出てきた!!
目を丸くしてセキさんを見上げると、ペコっと頭を下げて、
「この度は、本当に竜王様のどう考えても今じゃないだろ!!というダメすぎる空気の読めなさの為に、青葉様に大変危険な目に遭わせてしまった事を深く、深く、このセキお詫びいたしますぅううう!!!!」
「い、いやいや、今回もセキさんのせいでは‥」
「いえ!!!修行なんてやってられんとばかりにサボっていたアホなルディオミ様がなまじ張り切って神格を一気に上げてしまったので、お喜びになった竜王様の浅はかな決断で、あちこち迷惑を掛けたのです!!セキは、セキはもう腹を切りますぅううう!!!!」
セキさんのオミさんと、竜王様へのなじりっぷりがすごいな。
驚いて見ていると、オミさんがシキさんの首から、セキさんをガッと掴んで「ちっと黙ってろ」って睨むけど、もうやめてあげてオミさん‥。ビチビチと手の中で「あれ〜〜!」って言ってるセキさんに慌ててしまう。
蛇神様はゲラゲラ笑って、
「あーあ、やっぱりセキは最高だなぁ!竜の子にあげるんじゃなかった!セキ、今から戻ってきてもいいんだぞ?」
「「ダメで御座います!!ルディオミ様をここで見放したら、青葉様に迷惑が!!あ、そうでした。迷惑で思い出しました。この度、婚約を予定されておりました方はですね、火花の神様を唆した罪と勝手に人間界に行った罪で、婚約は破棄され当分異次元の方で反省となりました」
異次元で反省??
魔物とか出て油断できない場所なんじゃ‥大丈夫なの??。私は目を丸くするばかりだけど、オミさんはそれを聞いて眉をしかめる。
「‥もっと厳しくて良かったんじゃねーの?」
「そこは大人の事情です!」
「‥っち。だから嫌なんだよ」
ま、まぁまぁ、オミさん落ち着いて?
向かいのオミさんを見て、小さく笑うとぶすっとした顔で横を向く。
セキさんは私を見て、また小さく項垂れる。
な、何??!まだ何か落ち込む事があったの??私が心配すると、セキさんはわっと泣き出す。
「申し訳ありません!!まさか今までのお住まいになられていた家で、ルディオミ様と一つのベッドで寝ていると知らず、青葉様セクハラなどされておりませんでしたか?!!このセキ、万が一があったらと思って、今朝はご飯が2杯しか食べられずううう!!!!シキも蛇神様もなぜ教えてくれなかったのですかぁああ!!!!」
シキさんと蛇神様が同時に、
「「面白そうで」」
って言うし、真っ赤な顔になったオミさんは
「もう黙ってろ!!!!」
って叫ぶし、えーとこの別荘のベッドもつい最近まで1つしかなかったって言ったらどうなるんだろう。っていうか、別荘のベッドが一つだったのも、もしかして面白そうだったから?
蛇神様をチラッと見ると、ニヤリと笑ったので面白そうだったんだな‥と、そう確信した。
20時の投稿で一旦最終話です。
(いや、続編はもちろんありますけど‥てへ!)




