竜の神様、知らぬ間に連れ去られる。
リビングへ行くと、蛇神様に山盛りのフライドチキンが入った丸い筒を渡された。
「とりあえず食っておけ。腹が減ってはろくな考えも浮かばん」
「もう、こんな状況なのにお腹が空く自分が悲しいし、恐ろしいです。恋煩いで食べられなくなる人もいるのに、しっかり食べちゃう自分って‥」
グスグス泣きつつフライドチキンを食べるけど、美味しい〜〜!
うう、悲しいし、苦しいのに食べられる私のメンタル〜〜!!
まるさんが、そっと野菜ジュースのパックを差し出し「お野菜もどうぞ」って言ってくれる心遣い!!ありがとうございます!
ある程度食べて、はぁっと一息つくと、蛇神様がニヤニヤ笑って私を見る。
「どうする?明日、竜の子はここに帰ってくるが?」
「「わぁあああああ、考えたくない!!!逃げたい!!」」
「そうじゃなぁ、逃げるのもいいかもな」
「「で、でも、ずっと逃げる訳にも行かないし‥」」
「じゃあ、あとはぶつかるしかないんじゃないか?」
考えてもダメ、
逃げてもダメ、
ぶつかるのは‥、
「‥相手がいるんですよ?」
「それはルディオミが考えればいいさ」
「断られたら、契約中どうすれば?」
「しょうがないのう、わしの所で青葉を匿ってやろう。」
本当に?
頼っちゃっていいの?
私は蛇神様をじっと見つめる。
「‥わしは青葉が大好きって言ったろう」
「私も好きです」
「相思相愛じゃの」
「そうですね。ラブラブです」
「そうやって、竜の子にも言ってやれ」
私の目が丸くなって、でも蛇神様の言葉にようやく一歩‥前に出られた気がした。
「‥骨は拾って下さいね。ラブラブなんですから‥」
「もちろんじゃ!ハートブレイクした暁には、一晩中サバゲーで狩りをしながらお菓子を食べて遊ぼうではないか」
「‥腕が鳴ります」
「うむ!わしもじゃ!!」
骨は拾ってくれるし、夜通し遊ぶ約束もして、そして言うだけ言って、あとは全部投げてしまおう。そう思って、静かに頷くと蛇神様とまるさん、ふわさんが嬉しそうに微笑んだ。‥本当、お世話かけます。
蛇神様は、私の元気になった様子を見届けてから、またオミさんのいる修行の世界へ帰っていった。‥格好いいが過ぎる。
そうして、その晩は早く寝て明日の決戦に備えるぞ!!
そう思って、まるさんとふわさんに一緒に二階へ上がろうと声を掛ける。
「まるさん、そろそろ休みましょうか」
「そうですね!!明日は決戦!勝ちどきをあげますぞ!!」
ものすごく張り切ってくれるまるさんに小さく笑って、一緒に階段を上がろうとしたその時、
ドガン!!!と、庭からものすごい音と振動がする。
え、なに!??
雷でもなったかのような音に驚く。
体が強張った途端、まるさんがすごい勢いで私の体の周りに薄い膜を張り、ふわさんが大きな雲になる。
「「青葉様、ふわの体にお乗り下さい!!」」
「え、ええ‥??!」
まるさんに言われて、ふわさんの雲に触れるとふかっと手が乗ったので、そのまま雲の上に乗り上げる。
「よりによって、面倒臭い神がやってきてしまいました‥」
「「か、神!??」」
「目を瞑って下さい、大急ぎで逃げます!!」
「は、はい!!」
ギュッと目を瞑った途端、ものすごい力で上に下にと引っ張られて、ようやく揺れが止まった?そう思って、そっと目を開けると、言の葉の神様の鳥居の前に立っていた。
肩の上のまるさんは?!
ハッとして両肩を見るけれど、どちらにもいない。
「鳥居の中へお逃げ下さい!」
どこからか声が聞こえて、裸足で私は急いで鳥居の中へ駆け込もうとすると、私の目の前に大きな雷のような音と共に、空間がバリバリと音を立てて宙空がぱっくりと開いたかと思うと、大きな手が突然私の体をつかんで、声も出す間もなく穴に引き込まれた。




