竜の神様、朝から殺気ダダ漏れ。
チーズパンを非常に気に入ったらしい神様。
目をキラキラさせながらチーズパンを頬張っていた。‥3日は食べられるかなって思ったけど、1日でなくなったな‥。
「これまた食いたい!!」
「‥葉月さんのお店でバイトすればお金を貰えます。それで買いましょうね」
「‥面倒くせぇ」
「神様が多分言っちゃいけないワードですね」
「人間界だからセーフだ」
「だからどんな了見だ」
神様とは美味しいものは好きだけど、働くのは嫌なのか?
ちょっと遠い目をしつつ、オミさんを見る。
「オミさん、私は今日は大学で勉強をします!今日は夕方まで講義があるんです!だから‥どうするんですか?!」
「ああ、どうにかするって言ってたな」
「「考えてなかったんですか!!??」」
私の悲痛な叫びに、オミさんがちょっと目を逸らす。
ガッデム!!オーマイゴッド!!
三時間しか離れられないのに、どうすればいいんだよ!??
「‥大学って、どれくらいの距離だ?」
「駅だと2つ‥。5キロくらいですね」
「じゃあ、大学まで行く」
「「えっ!!??」」
「心配すんな。そっからはどうにかする」
「本当ですね!??絶対ですよ!!」
わーったよって言うけど、本当に頼むよ?
お皿を手早く洗って、カバンを持って玄関へ向かう。
‥まだお隣さんは出勤の時間じゃないから、大丈夫なはず。ちょっとドキドキしながら慎重にドアノブを回して外へ出る。
すると、まだ出勤時間じゃないはずなのに、お隣さんの扉が開く音がして、どきりと胸が鳴る。
「‥青葉」
「え?」
「こっちにいろ」
そう言って、オミさんは自分の体を盾にして私の手から鍵を受け取ると、代わりに鍵を閉めてくれた。そうして、私の手を握るとスタスタと階段の方へ歩いていく。
ちょっと呆然としながら、オミさんを見上げる。
だって、さっき初めて私の名前を呼んだような気がしたから‥。
そう思っていたら、オミさんが私を見る。
黄色のような、緑のような、見るたび色が変わる不思議な瞳の色だ。
「‥青葉、」
「は、はい!!」
また名前を呼んだ!!
驚いて、返事をすると、オミさんが少し考えつつ話す。
「昨日の葉月だっけ?言ってたけど、お前の気は確かに色んな世界の奴らに好かれるものが流れてるがな、変なのも寄せやすい。気をつけろよ」
「「えええええ、自分ではどうにもできないのに?!」」
「だから俺がいる」
お、おう?
まぁ、オミさんがいれば安心かな?
オミさんが私の後ろをジロッと見るので、私も後ろを振り返ろうとすると、オミさんが私の繋いでいる手を引っ張る。
「後ろは見るな。生き霊がいる」
「生き霊!??」
「しつけーなぁ。あれぶっ殺してぇ」
「生き霊って事は生きてる人の一部なのでは?殺して大丈夫なんですか?」
私の言葉に、ちょっと宙を見たオミさん。
「「多分?」」
「じゃあダメですね‥。大学行きましょう」
「怖くないのか?」
「‥多少は。でも、オミさんいてくれるし‥」
神様がそばにいてくれれば大丈夫かなって思って、そう話すとオミさんは私の言葉を聞いて、ニヤ〜っと笑う。あ、これは調子づかせた??
「仕方ねぇなぁ。おら行くぞ」
「‥オミさん、分かりやすいって言われません?」
「あぁ!?」
「あー、はいはい、分かりずらいです」
オミさんに引っ張られるように駅まで行く。
切符を買って、オミさんに渡して改札の通り方を説明する。
切符が吸い込まれて、また出てくるのを見て、ものすごく驚いていたし、私がスマホで通ったのを見て、「俺もそれが欲しい!!」って言うけど、稼いでください。
そうして満員電車を見て、再び驚いていた。
「‥毎朝、修行してるのか?」
「そんなもんですね。これに痴漢なんかも出てきた日には、苦行ですよ」
「痴漢?」
「動けない車内で、女性、男性関係なく不埒な行為をする不届きな輩です」
「お前も遭遇したのか?」
「‥‥たまに?」
そう言うと、オミさんは指をバキバキと鳴らして、私を見る。
「言え。殺してやる」
「朝から殺意の波動を高めないで下さい。ちゃんと安全ピンでブッ刺してやりますから、大丈夫ですよ」
私がそう言うと、私達の周囲にいた人達が朝だと言うのに、ザッと避けた。だ、大丈夫ですよ??多分‥。




