竜の神様と同居することになりました。
うちの神社で祀ってた神様、質問です。
「ここ、どこだ?」
そう言って、轟音と共に現れた我が家の1DKの部屋に真っ赤な長い髪、長めの前髪に、褐色肌のやたらと美形な男性が仁王立ちして部屋の中を見回しているんですけど、どういう事でしょう?!
さっきお風呂から上がって、肩まである髪を乾かしつつローテーブルにうちの神社のお守りを見て、
「テストやばいです、助けて下さい」
とは言った。
言ったけど、男性を出して下さいなんて一言も言ってない。
言ってない上に、これはどうすりゃいいんだ‥。
突然、部屋の真ん中に男性が現れて腰が抜けた私は、若干体がガクガクしてる。で、デカイ。夜だし、私は一人暮らしの身だ。こんなんどうすればいいの??涙目で私がその人を見上げていると、男の人は私をようやく見て、
「お前、誰だ?」
「それはこっちのセリフです!!」
思わぬ大きな声が出て、ハッとした。
しまった!!お隣さん、まだ帰って来てないよね!??慌てて声を潜める。
「ここは私の家です。で、出てって下さい!!」
「‥これが家?なんか倉庫かと思った‥」
「‥‥東京で一人暮らしなんてこんなもんです」
「とうきょう‥???」
突然現れたこの人は、私の前をサッと通り過ぎると、おもむろにカーテンを開ける。
「なんだ、ここ!!」
「ちょ、しーーーっ!!!声、声を抑えて!!壁薄いんだから!!」
その人は夜の街を見て、ちょっと呆然としている。
よく見たら、この人の体についてる装飾品、ものすごい高そうじゃない?
着ている服も、ゆったりした白いシャツとパンツは黒いサルエルっぽい形をしているけど、綺麗な模様が編まれているのが分かる。
も、もしかして、助けてってお願いしたけど、
何かの使い‥とか?
「‥‥あの、もしかして‥本当に龍の神様か何かの類ですか?」
「俺は、火竜の神だ」
「龍は龍でも、そっちの竜かあぁあああ!!」
「お前、竜を知ってるのか?」
‥赤い髪の男の人はちょっと目を丸くして私を見る。
知っているけど、種類は違うな。
「お前じゃないです。小都森 青葉って言います。青葉が名前です」
「青葉‥」
「貴方は?」
「ルディオミ・オズベルド・シーラスだ」
なんて?
私が全くわかりませんという顔をすると、男の人はちょっと考えて、
「ルディオミが名前だ」
「ああ、なるほど。るでおみ‥、あ〜〜オミさんでいいですか?」
「‥まぁ、いいだろう」
「ありがとうございます?‥じゃなくて、なんでその神様で、火竜なのに、ここへ現れたんですか?私は別に貴方を呼んだ覚えはないので速やかにお帰りください!!」
ビシッと、うちの玄関の扉を指差すと、オミさんとやらは私をじっと見て、
「「無理だ。お前は俺の契約者みたいだし」」
「はぁっ!!??」
神様、クーリングオフさせて下さい。
私はまだ19の乙女なんですけど!???
いきなりテストやばい助けてって言ったけど、それにしたってこれはないと思うんですよ?!涙目でオミさんを睨みつけると、オミさんが私の手の甲を指差す。
なんだろうと思って、手の甲を見るといつの間にかトカゲのようなマークが入ってる!!
「な、なにこれ!!??」
「火竜のマークだな、うちの親父がお前を契約者に選んだらしい」
「なぜ!??私は確かに龍を祀ってる神社の娘ですけど、まず竜の種類が違うし、何よりもお会いした事がないんですよ?!!」」
オミさんは、この話題に飽きたらしい。
「そうだな〜」って言って、部屋の床に座り込んで私のノートをペラっとめくっている。
か み よ !
どう考えてもおかしいこの事態に誰かどうにか終止符を打ってくれ!!
そう思っていると、オミさんが私を見上げる。
赤い髪の間から見えた瞳は、光の加減なのか、黄色や、緑にも見えるし、水色にも見える。不思議な色だなぁ‥、思わず瞳を覗き込んでしまったのか、不意に逸らされた。
「‥あ、すみません。ジロジロ見ちゃいました」
「別に」
「で、あの帰るとかは?」
「だから帰れない。親父がここで過ごせって事らしい」
オミさんのお父さん、私は一言も良いとは言ってないよ?
遠くを見つめる瞳をしたら、オミさんは私を見上げて、
「で、腹減ったんだけど?」
「水を飲んで下さい」
本当にどうすればいいの??とりあえずネットで検索すべき???
水入ったペットボトルを渡して、私は目の前の現実をどうすればいいのかと、遠い目をした。




