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第90話 街づくり

ウィルは昼食を済ませるとカルデ、ミツハ、ゲン、ムスクの4人を連れて、どこぞの魔女見習いの少女が住んでそうな石畳の道とオレンジ屋根に白壁の建物が所狭しと立ち並ぶ街並みを抜け、街全体を見渡す事の出来る小高い丘の上へと来ていた。

「やっぱりここからの眺めはいいなー。ポルタ地区はだいぶ人通りが増えて賑やかになって来たみたいだし、他の地区はどうかな?」

フレイの街はウィルのいる小高い丘を中心に、南に元々漁村のあった漁業系ギルドに関係する人々の住むポルタ地区、東に商業系ギルドに関係する人々の住むニューハウン地区、北に農業系ギルドに関係する人々の住むコルマール地区、西に畜産系ギルドに関係する人々の住むミコノス地区、そしてこの小高い丘を中心にそれぞれの地区に接するようにドーナツ状にあるのがウィルの家臣や役所などで働く人々が住むエビス地区というように、大きく5つの地区に分け開発を進めていた。


ウィルは少し離れた所に広がるポルタ地区の街並みとその向こう側に広がる青い海を見てから東の方角に目をやった。

その方角では短冊状に区画整理された広大な土地に真新しい石造りの建物が立ち並び行き交う商人や客で賑わっていた。

そして、建築中の区画では大勢の職人が働いていた。

「おおっ!?ニューハウン地区の開発はかなり順調そうですね?街並みもポルタとは違って石造りの重厚感が良い感じじゃないですか!?」

「へい!ありがとうございやす!職人もかなり増えてきやして予定より早く工事が進んでおりやす。明日からは隣の区画に取りかかれますぜ!」

フレイの開発にはグリドールとロベールの協力もあって大勢の腕の良い職人が集まり、大工職人としては超級で大工のゲンさんと言う異名持ちでもあるゲンが取り仕切っている事もあり、わずか2ヶ月足らずで全体の7割近く開発が進んでいた。

「完成した区画については残りのポテパ難民の皆さんに入居してもらうようミレーヌさんに手配してもらうとして、忘れない内に新しい区画の建物の骨組み作っちゃいましょう。

カルデとミツハさんは連れて行くとまたファンの人達が集まって来て大変なので、ここで少し待ってて下さい。」

「うむ、わかった。」

「はい。承知しました。」

そもそもカルデはマクグラン王国を加護する女神であると共に大天使ハニエルと双璧を成す絶世の美女として熱狂的な信者が多く、またミツハもその美貌とドM心を擽る冷たい視線がたまらないと一部のコアな男達からドSの嬢王様と呼ばれ熱狂的なファンが存在した。

「ゲンさん、ムスクさん、俺に捕まって下さい。行きまーす。」

ウィルはゲンとムスクが腕に捕まったのを確認すると瞬間移動を使い直線距離で2km以上離れたニューハウン地区の建築現場へと移動した。

「はい、着きましたよ。」

「ウィルの旦那、相変わらず便利な魔法ですね!それなら女風呂だろうが女の布団の中だろうが行きたい放題じゃないですか?羨ましいぜ!」

『パチン!』

「このタコ助が!ウィルの旦那がそんなバカな真似する訳ねぇだろうが!?」

「イテーなぁ!親方、軽い冗談じゃねえか!?」

「うるせぇ!軽いのはお前の頭だけで十分でい!それにしても、ウィルの旦那、こないだは1回でここまで移動出来なかったはずじゃあ?」

「へへへ、気付きました?1日に何十回も使ってたらコツが掴めてきて、移動出来る距離が伸びてきたんですよ。」

当初、瞬間移動を出来る距離は50m程度だったが今では視界に入る範囲であれば移動出来るようになっていた。

「へぇー、そりゃあすげーな!俺がそんな魔法使えたらあんな事やこんな事や色々やっちまう…。」

『パチン!』

「ムスク、無駄口叩いてんじゃねぇ!とっととこの辺りの図面を広げやがれ!」

「イテーなぁ!もう、そんなに叩かないでもいいじゃねえですか。はいはい、図面開けばいいんでしょ!全く人使いが荒ぇーんだから…。」

ブツブツと文句を言いながらムスクがぶら下げていたカバンから図面を取り出し広げるとゲンが説明を始めた。

「この区画にはこんな感じの三階建ての店舗兼住宅が20戸と2階建ての住宅が40戸と大工ギルドと鍛冶屋ギルドの4階建ての建物を建てる事になってやす。」

「ふむふむ、店舗兼住宅とこの2階建ての住宅は前に隣の区画で作ったのと同じですね。でも今回のギルドの建物は結構骨組みが頑丈そうですね。」

「へい、建材や武器や防具なんかの重量のある物の倉庫もあるんで他のギルドの建物より強度を上げてやす。」

「わかりました。とりあえずこのギルドの建物の構造は初めてなので試しに作って見ましょう。2人とも足元に注意して下さいね。」

そう言うとウィルは建物の構造を思い浮かべながら磁力操作マグナタイシィを使った。

次の瞬間、周囲の路地の地面が数cm沈下すると同時に黒い粉塵が巻き上がり、みるみるうちに鉄骨の骨組みを作り上げていった。

「ゲンさん、ギルドの骨組みはこんな感じで大丈夫ですか?」

「完璧だぜ!段々と精度も上がってきてますぜ!こりゃあ、ムスクなんかよりよっぽど筋が良いぜ!」

「親方、そりゃあないぜ!」

「ははは、ここに来てからもう1000近く作ってますからね。ミツハさんも待たせてますし、残りのも建てちゃいましょう。今度はかなり地面が沈下するのでそっちの宅地の方へ行ってて下さい。」

ウィルは2人が離れると再び磁力操作マグナタイシィを使った。

すると、今度は区画を取り囲む路地全体の地面が沈下し辺り一面に黒い粉塵が巻き上がると、目の前の区画を埋め尽くすように次から次へと鉄骨の骨組みが組み上がっていき、ものの数十秒で全ての建物の骨組みが完成した。

ちなみに地面が沈下するのは地中にある鉄分を原料に鉄骨を生成している為である。

これにより、路地と宅地部分には1mほどの段差が出来るが用水路や排水路の工事が容易である事や宅地部分が高い事で水害対策にもなる事から、路地部分の沈下は色々と都合が良かった。

「ふぅー、こんなもんかな。ゲンさん、チェックしといてもらえますか?その間に石材場と木材場に行って建材取って来ちゃいますね。」

ウィルはそう言い残すと空高く舞い上がりフレイから少し離れた場所にある石材場へと瞬間移動した。


石材場では石工職人達が山から切り出した石を石材にせっせと加工していた。

そんな中、ウィルはすぐ目の前で背を向けて仕事もせずにドーナツを食べているヒョロガリのドワーフに話しかけた。

「メイソンさん、石材を受け取りに来ました。」

「うわあああああ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!りっ、領主様どすか!?いきなり現れて後ろから声掛けないでって言ってるじゃないどすか!?あー、ドーナツが喉に詰まるかと思ったどす!」

この男は、この石材場の責任者のフリーク・デルタン・メイソンである。

「あははは、すいません。ニューハウン地区の次の区画で使う石材取りに来ました。」

「それなら、そこに積み上がってるのがそうどす。」

「ここに積み上がってるので全部ですね。というか、そのドーナツ美味しそうですね?」

「ああ、これはウチのかーちゃんがおやつに持たせてくれたんどす。いっぱいあるから領主様もどーぞ。」

物欲しそうにウィルがドーナツを見ているとメイソンはドーナツのたくさん入ったバケットを差し出した。

「えっ?こんなに貰って良いんですか?」

「いいどすよ。領主様が食べてくれるなら、かーちゃんも喜ぶどす。」

「ありがとうございます。それじゃ、これはお礼という事で。」

ウィルは布袋から金貨を10枚ほど取り出すとメイソンに手渡した。

「り、領主様!こんなに貰えないどす!」

「いえ、実はこの間ゲンさんがメイソンさんから貰ったドーナツをお裾分けしてくれたんですけど、かなり女性陣に好評なんですよ。」

「あ、あの、ミツハ様も気に入ってくれてるどすか?」

「はい。ミツハさんも美味しいって言ってましたよ。」

「そ、そうどすか!?へへっ、それなら次はもっとたくさん用意してお待ちしてるどす!」

「はい、宜しくお願いします。それじゃ、石材貰っていきますね。重力操作シャワークラフト!」

ウィルは数十トンはあろうかという石材の山を浮かび上がらせると瞬間移動を使いゲン達のいる区画へと戻った。


「石材はこの辺りに置いとけば良いかな。次は木材場だな。」

石材をおろすとウィルは休む間も無く木材場へと瞬間移動した。

そして同じ要領で山の様な木材を運んで来た所で、骨組みのチェックの終わったゲンが声を掛けてきた。

「ウィルの旦那!全部問題ありやせんでした!」

「それは良かった。こっちも建材の運搬が終わったので、一旦カルデ達の所に戻りましょう。」

「へい!わかりやした!ムスク、てめぇはこの区画の現場監督と明日からの工事の打ち合わせをしてきな!」

「えっ!?親方は来ないんですか?」

「お前もそろそろこれくらいの使いは出来ないとな。職人の皆さんに揉まれて来い。」

「はい!わかりました!」

そう言うとムスクは嬉しそうに隣の区画へと走っていった。

「ゲンさん、口では厳しい事言っててもムスクさんの事を認めてるんですね?」

「へっ、まだまだひよっ子ですがね。ああ見えて筋は悪くねぇんですよ。いつかは俺っちを超える大工になりますぜ。おっと、今のはタコ助には内緒ですよ?調子に乗られでもしたら大変だ。」

「あはは、わかってますよ。それじゃ戻りますよ。」

照れ臭そうに鼻の下をこするゲンを横目にウィルは瞬間移動でカルデ達のいる丘に戻るのだった。



フリーク・デルタン・メイソン

男性 25歳

ガーデンフレイ石材場の責任者。

ヒョロガリのドーナツ好きのドワーフ。

気が小さく臆病だが何故か仕事をサボってドーナツを食べる時は堂々としている。

密かにミツハに恋心を抱いている。


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