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第61話 ベーゼからの解放再び

会場を覆う隔離結界を突き破り飛び込んできたレオナルドが、煉獄紅龍炎を鋭い爪で引き裂くとその背中に跨るトーマスの放った青白く光り輝く斬撃がオグニイーナの胴体を両断した。

オグニイーナは目を見開いたまま声を上げる事なく地面へと落下すると激しく燃え上がった。

その信じられない光景に会場が静まり返る中、レオナルドを見たベリアルはすぐにその正体に気付き驚愕の表情を浮かべた。

「な、何故アイツがここにいるんですか?ツイてないですね。厄日ですね。運が悪いですね…。」

そんなベリアルとは対照的にウィルは満面の笑みを浮かべた。

「トーマス兄さん!レオちゃん!来てくれたんですね!」

トーマスはレオナルドから飛び降りると、立ち上がったウィルを抱きしめた。

レオナルドはウィルと視線を交わすとコクリと頷きアリエルの元へと向かう。

「ウィル!遅くなってすまなかった。色々と大変な事になっているみたいだな。レオナルド様やゲンさん達から聞いたよ。よく頑張ったな!」

「ゲンさん無事だったんですね!?

良かったぁ。…いいえ、頑張ったなんて、俺はテスカやアリエル、それにゲンさんも手伝ってくれたのでなんとかやって来れただけです。でも、結局俺の力不足のせいで皆を危険な目に合わせてしまいました…。」

そんな肩を落とすウィルの背中をトーマスが叩いた。

「たとえそうだとしても、ウィル、お前がボルケニアに来た事で救われた者もいるだろう?それに、お前は普通じゃ出来ない事をしてるんだ。だから、もっと胸を張れ!」

「は、はい!トーマス兄さん!」

ウィルは気恥ずかしくなり右手が切断されているのも忘れて頭を掻こうとするが、回復し話を聞いていたテスカがその右手首にそっと触れた。

「ウィル、ほら貸してごらんよ。治してやるさねぇ。」

「あっ!?あははは。必死だったので忘れてました。なんか思い出したら急に痛みが!?痛てててっ!」

「アンタがトーマスかい?話はウィルやカルデから聞いてるよ。」

テスカはウィルに回復魔法をかけながら、トーマスに話しかけた。

「貴方が闇の神テスカポリトカ様ですね。申し遅れました私はトーマス・バークリー・サウストンと申します。」

「そんなに畏まらなくてもいいさねぇ。

それよりまだオグニイーナは死んじゃいないよ。」

テスカはウィルの右手を再生すると、地面に転がり燃え上がるオグニイーナを見た。

すると、オグニイーナを包み込む炎は更に激しく燃え上がり炎の翼を持つ巨大なドラゴンへと変化し、空高く舞い上がった。

炎の翼から生じる熱風により観覧席のいたる所で火の手が上がり、逃げ惑う貴族や兵士達で会場内が大混乱になる中、オグニイーナの高笑いが響き渡った。

「あははははははははっ!!!何で逃げようとしているのかしら?ここからが本番よ!大人しく座って見てなさい!」

オグニイーナがそう言うと同時に今まで観覧席の手前までだった隔離結界の範囲が広がり、観覧席を含む会場全体を包み込んだ。

「ちっ!?オグニイーナの奴、神威を解放したみたいだねぇ。これじゃあ、あちきの手には負えそうにないねぇ。」

焦りの表情を浮かべるテスカを手で制すとウィルは前に出た。

「テスカ、オグニイーナ様は俺に任せて下さい!なんとか魔力を封印してみます!皆はララさんの救出をお願いします!」

「ウィル、出来るのかい?」

「はい!」

「そうだねぇ。アンタなら…。」

そのウィルの覚悟のこもった眼差しをテスカは潤んだ瞳でじっと見つめると、おもむろに顔を近付け唇を合わせた。

「んっ!?んぐっ、んんんっ!?…んんっ!?」

テスカの滑らかな舌がまるで生き物のようにウィルの舌に絡みつく。

あまりの気持ち良さにウィルの思考が停止しかけた、その時。

ウィルを激しい頭痛が襲い、それと同時に身体の奥底に眠っていた記憶と魔力が溢れ出す。

「こ、この記憶は!?うわぁぁぁぁああああっっっ!!!」

「テスカポリトカ様!何を!?」

突然の出来事にトーマスが困惑していると、その様子を見ていたオグニイーナが怒りをあらわに叫んだ。

「キィィィィッ、いちいちワタシを無視してイチャついてんじゃないわよ!!!死ねぇぇぇぇっ!!!」

オグニイーナの背後に五芒星の魔法陣が浮かび上がると凄まじい轟音を立てて真紅の魔力砲が放たれた。

『ドドゴォォォォォォン!!!』

亜空間障壁サブスタトロムウォンド!」

しかし、魔力砲はウィル達を直撃する事なく、ウィルの力ある言葉と共に出現した時空の裂け目に飲み込まれ消滅した。

「なっ!?何なのよ!それは!?ふ、ふざけんじゃないわよ!死ね!死ね!死ねぇぇぇ!!!」

神威を解放して放った渾身の一撃をいとも簡単に消滅させられたオグニイーナはさらに怒り狂い魔力砲を連発するが、いずれも時空の裂け目に飲み込まれ消滅していった。

「トーマス兄さん、レオちゃん、ララさんを頼みます。」

トーマスはウィルのいつもと違った大人びた雰囲気に驚きながらも力強く頷き、レオナルドとアリエルと共にララの元へと向かった。

「まさか俺がグラヴィザードの生まれ変わりだったなんてな…。イツトリ、まだ魔力は残っているか?残っていたら会場の消火を頼むよ。」

その言葉にテスカの瞳から涙が溢れ声が震える。

「あ、ああ…グラヴィザード。やっと会えた…。やっぱり、雄介はアンタの生まれ変わりだったんだね。ああ、グラヴィザード!!!」

テスカは嬉しさのあまりオグニイーナの魔力砲が降り注いでいるのも忘れウィルに抱きついた。

「イツトリ、悪いけど今は戦闘中なんだ。こういうのは後にしてくれないか?とにかく今は離れて会場の消火を頼むよ。」

テスカは名残惜しそうにウィルから離れると涙をぬぐい微笑んだ。

「グスッ、わかったよ。会場の消火はあちきに任せるさねぇ!」

テスカが会場の消火の為にその場から離れると、ウィルは亜空間障壁で魔力砲を防ぎながら片手をオグニイーナにかざした。

「うーん、この魔法も声に出さないと発動しないのか。重力操作シャワークラフト!」

ウィルが魔法を唱えるとオグニイーナの周囲の重力が通常の10倍に変化し、オグニイーナはたまらず地面へと翼をばたつかせながら舞い降りた。

「うぐぐぐぐっ!な、何よ!この魔法は!?」

「まだ動けるみたいだな。それじゃあ、これならどうかな?」

「うぐっ!?ああああああっ!!!」

ウィルが両手をかざすと更に重力が通常の100倍へと跳ね上がる。

その凄まじい重力にオグニイーナは成す術なく押し潰され、地面にめり込んで動きを止めた。

そして、ウィルは瞬間移動でその前に飛ぶと、布袋から封神石のあしらわれたロザリオのペンダントを取り出しオグニイーナに押し当てた。

「うぐっ…ううっ、や、やめて…。あ、ああ…。」

ウィルが魔力を込めようとした、その時。今まで息を潜ませ岩陰に隠れていたクラスティがウィルの背後から飛びかかった。

「ヒャハハハハハ!死ねぇぇぇぇっ!!!!!旋風龍滅斬ブラストドラグスラッシュ!!!」

クラスティが魔法を唱えると龍の形をした旋風がウィルへと襲いかかった。

しかし、ウィルは背後に防御障壁を展開し難なく防ぐと、振り向き様に銀撃ラアクションでクラスティの顔面を思い切り殴り飛ばした。

「この愚弟が!いい加減にしろぉぉぉぉっっ!!!」

『バキィィィ!!!』

「あべしっ!?」

ウィルの愛のこもった鉄拳が炸裂すると、クラスティは観覧席に激突し意識を失った。

ウィルはそれを見届けるとオグニイーナに向き直り封神石のペンダントを押し当てた。

「これで終わりだ。」

ウィルが魔力を込めると、封神石から金色の光がほとばしりオグニイーナを包み込んだ。

「あ、ああ!いやぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

みるみるうちにオグニイーナはドラゴンの姿から元の姿へと戻っていき、光が収まるとそこには一糸纏わぬオグニイーナが気を失い倒れていた。

その首には封神石のペンダントが光り輝いている。

ウィルはオグニイーナに磁力操作マグナタイシィで作った鉄の足かせを付けると身体を隠すようにマントを掛けた。

「ふぅ…。これで良しっと!トーマス兄さん達は…あれは!?」

ウィルがトーマス達のいる方を見るとそこには漆黒の鏡を天にかざし不気味に笑うベリアルの姿があった。


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