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第6話 恥じらいの女神

「とれんでいどらま?それはどのようなものだ?」

ウィルの転生からこれまでの経緯についての説明が終わった所で、黙って聞いていたカルデが不思議そうに首を傾げた。

ウィルは予期せぬカルデの第一声に戸惑うが何とか答えをひねり出す。

「えっと、俺が元いた世界で昔に流行った演劇のようなものです。」

「演劇か?あれはなかなか良いものだ。」

「えっ!?カルデ様も演劇を見たりするんですか?」

「ん?我が見てはおかしいか?」

カルデが演劇を見るとは思いもよらず、ウィルは驚きの声を上げるが、そんなウィルをカルデが睨みつけた。

「い、いえ!滅相もありません!あはは。」

「ふふん、まあ良い。グリドールの小僧がよく劇場に誘ってくるのでな。暇つぶしに付き合っているだけだ。」

ウィルがカルデの機嫌を損ねないように焦っているのをカルデは鼻で笑い飛ばし、さらっとマクグラン国王の名前を出した。

「グリドールって、もしかしてマクグラン国王陛下の事ですか?」

「ああ。そんな事より、おぬしの世界の演劇とやら、我にも見せてみよ。我の方へ頭を差し出し、とれんでいどらまを思い浮かべよ。」

「は、はい。」

国王を小僧と呼んだり、そんな事と斬って捨てる所を見ると、やはりカルデは神様なのだろう。

カルデの言う通りウィルが頭を差し出しとりあえず、君の瞳をロックオンという作品を思い浮かべてみる。

その頭にカルデの手のひらがそっと触れると、ウィルが柔らかな光に包まれた。

しばらくすると光は消え、ウィルは徐ろに頭を上げた。

するとそこには先程までの冷たい表情とは打って変わり、頬を赤らめ恥じらいの表情を浮かべるカルデがいた。

「な、な、な、何だ!?おぬし、我に何を見せよった!?あ、あんな、公衆の面前でひ、秘め事なぞしおって、しかも取っ替え引っ替えではないか!?なんと卑猥な!」

カルデは赤く染まった両頬に手を当てながらあたふたしている。

そこには先程までウィルを威圧していた女神の面影はなく、ただ恥じらいに顔を赤く染める一人の乙女がいた。

ウィルは、君の瞳をロックオンという空軍基地の若者たちが命令そっちのけでコンパやナンパに明け暮れるという作品を思い浮かべただけで、ちょっとしたベッドシーンはあるものの、そこまで卑猥な作品ではなかったがカルデにはそういう免疫がほとんどなく、あっても小学3年生程度のものであり、普段見に行く演劇は童話を元にしたものがほとんどでラブシーンといっても軽いキス程度しかなかった。

そう、カルデにBPOがそれほど目を光らせていない時代のトレンディドラマは刺激が強かった。

そんなカルデを知る由もなく、ウィルはふと、ある可能性を思い付いた。

「あのカルデ様、さっきのは俺が思い浮かべたもの以外の記憶も見れたりするんですか?」

「お、おぬしが思い浮かべたものしか見てないぞ!

さては、おぬし謀ったな!」

ウィルは雄介の頃にお世話になった18禁の記憶が流出したのかと心配したが、そうではないと安心したのも束の間、カルデの顔が恥じらいから怒りの赤に染まっていく。

「おぬし、神である我をあんな卑猥なものを見せて辱めるとは、こんな侮辱を受けたのは初めてだ!殺してやるぅ!」

「カ、カルデ様!落ち着いてください!

あれが俺がいた世界のトレンディドラマというものなんです。

教えてください!どこが卑猥だと言うんですか?気に入らなかったのでしたら、俺のとっておきの作品を見てください!」

「ええーい!黙れ!まだあんなものが他にもあるのか!?

我をまたも辱めるつもりか!?こ、この変態めが!」

確かにトレンディドラマを頭ごなしに派手なだけで中身が無いとか下品とか言って批判する奴は少なからずいた。

だがトレンディドラマこそ、現在の恋愛ドラマの原形であり、トレンディドラマがあったからこそ、今の恋愛ドラマがあると言っても過言ではない。

ウィルはそう信じていた。

そして、カルデの一方的な言い分にウィルの中で何かがプツンと切れた。

「黙りませんよ!カルデ様が何と言おうとトレンディドラマは俺の宝物であり人生なんです!それを作品に込められた本当の想いも分かろうともせずに卑猥の一言だけで拒否するなんて、そんな事、神様が許しても俺は絶対に許さない!!!

もし次の作品を見ても分かってもらえないなら、その時は煮るなり焼くなり好きにしてください!さあ、見てください!!!」

そう言うとウィルはカルデの手首を掴み自分の頭に押し当て、とっておきの恵比寿ラブストーリーを思い浮かべた。

ウィルが柔らかな光に包まれる。

「おぬし!な、何をする!やめ…いやぁぁぁぁぁっ!!!」

カルデの中にウィルの恵比寿ラブストーリーの記憶が流れ込んでくる。

カルデはウィルの手を払おうと抵抗するが、徐々に抵抗は無くなり、ウィルの記憶を受け入れていた。

しばらくすると光は消え、カルデの荒い息遣いだけが残っていた。

「はぁはぁはぁ…。」

カルデは恍惚とした表情を浮かべたまま、力なく玉座へともたれ掛かった。

「カルデ様、俺のとっておき、どうでしたか?良かったでしょ。何なら続編の恵比寿ラブストーリーPART2も見ますか?」

ウィルは何かをやり遂げた清々しさすら感じる、満足げな表情をしていた。

カルデはなんとか上半身を起こすと、潤んだ瞳でウィルを見た。

「お、おぬしの世界のトレンディドラマの良さはわかった。だから、今は許してくれ。我の身が持たん。」

カルデは君の瞳をロックオンにより、少しだけ免疫を獲得したおかげで、恵比寿ラブストーリーを受け入れる事が出来ていた。

そんなカルデの一言をウィルは聞き逃さない。

「今は?と言いましたよね?」

ウィルはニヤリとする。

「そ、そ、そうだ!悪いか?その、なんだ、また今度続きを見せよ…。」

カルデの声は恥ずかしそうに徐々に小さくなっていく。

そんなカルデを、ウィルが優しく笑いながら見ていると、気まずい雰囲気に耐えかねたカルデが話を変えた。

「それはそうと、おぬし無属性魔力を持っているな?それもかなり強大な魔力だ。

それがさっきおぬしが話した神からの贈り物なのかもな。」

「えっ!?無属性魔力ってなんですか?」

ウィルの記憶の中に無属性魔力という単語は存在しなかった。

それにウィルは風属性の魔力しかなく、魔力量も一般人の平均並みであった。

実際、先日ウィルが試しに魔法を使ってみたが、やはり初級の風属性魔法しか使えなかった。

「おぬし、気付いてなかったのか?それではトレンディドラマのお返しに教えてやろう。」

そういうとカルデは無属性魔力について話し始めた。



風の神カルデ

女性 ??歳

透き通るような青い髪の色をした絶世の美女で天女のような羽衣をまとっている。

見た目は20歳前後に見えるが、実際は不明。

性格は傲慢で短気だがツンデレ乙女キャラな一面もある。

マクグラン王国を加護する風の女神。



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[一言] 何かトレンディドラマが何か?、作者の好みが変態臭い
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