第59話 激闘
ウィルが粉々に吹き飛ぶと、会場から割れんばかりの歓声が上がった。
白い炎の鳥から元の姿に戻ったミカエルは手を振ってその歓声に応えている。
そんな様子を観覧席から見ていたベリアルが不気味な笑みを浮かべた。
「なかなかやるじゃないですか!楽しいですね。すごいですね。でも…油断大敵ですね。」
ベリアルがそう言った次の瞬間、粉々に吹き飛んだはずのウィルがミカエルの背後に現れた。
「なっ!?」
ウィルはミカエルの一撃を磁力操作で作った身代わり人形でやり過ごしていた。
「でやぁぁぁぁっっ!!!」
ウィルの気配に気付きミカエルが振り返るより早く、ウィルの銀撃を二重掛けした渾身の拳が羽根の生えた背中にめり込んだ。
「ぐはあっっっ!!!」
ミカエルは凄まじい勢いで吹き飛び、隔離結界に激突した。
ウィルはすかさず瞬間移動でミカエルの前に飛ぶと、銀撃をかけた拳をまるでマシンガンのように浴びせた。
「はああああああッッッ!!!」
『ズドドドドドドドォォォ!!!』
そしてミカエルは成す術無く全ての攻撃を受け隔離結界からずり落ちた。
「はあ、はあ、はあ…ふぅーっ。」
ウィルが呼吸を整えているとアリエルの悲鳴が聞こえてきた。
咄嗟にウィルが悲鳴のした方を見ると、ジェレミエルの放った獄炎大柱をまともに受け宙を舞うアリエルの姿が目に留まった。
「アリエル!?」
ウィルは瞬間移動で飛びアリエルを両手で受け止めると、すかさず回復魔法をかけた。
「アリエル!大丈夫!?」
「お、お兄ちゃん…。ありがとう。」
「こんな女の子相手に2対1なんて卑怯だぞ!クラスティ!」
ウィルは近付いてきたクラスティとジェレミエルを睨みつけた。
「卑怯も何も、これはウィル兄さん達を殺す所を見せるのが目的なんですよ?
そんなのに卑怯もクソもある訳ないじゃないですか!?ヒャハハハハ!
それにしても、ミカエル様やられちゃったんですか?ダサいなぁ!それじゃあ今度は僕たちが相手ですね!行きますよ!」
クラスティが剣を構え踏み込もうとしたその時、突然白い炎の壁が現れその行く手を阻んだ。
そして、全身アザだらけのミカエルが口から流れる血を手で拭いながらウィルの前へと降り立った。
「クラスティ、凡人顔君は私の獲物なんだ。手を出さないでくれるかな?」
その顔からは先程までの爽やかな笑みは完全に消えていた。
「はいはい。わかりましたよ。僕達はそこのおチビちゃんさえ殺れれば良いので残しておいて下さいね。」
「ああ、わかったよ。」
ミカエルの身体を宝剣プロメテウスの白い炎が包み込んだ。
「アリエル、立てるかな?」
「うん、もう大丈夫。」
ウィルは抱き上げていたアリエルを地面に降ろすと銀震刃を構えた。
「しぶといですね。でもさっきよりも男前になったんじゃないですか?」
「フフッ、それじゃあ君も男前にしてあげよう!」
ミカエルはウィルへと突っ込むと斬撃を繰り出した。
『ギィィィン!』
2人が剣を交えていると、突然大爆発が起こり結界内を息苦しい程の熱量が支配した。
ミカエルから休む間も無く繰り出される斬撃を銀震刃で受けながら、ウィルは横目で爆発のあった方を見た。
「な、なんだ!?あれはテスカ!?」
ウィルの視線の先には巨大な炎の竜巻から逃れ漆黒のジャガーへと変身し咆哮を上げるテスカの姿があった。
すると、次の瞬間会場の上空に雷雲が立ち込めオグニイーナを稲妻が貫いた。
「やったか!?」
しかし、その攻撃を物ともせずにオグニイーナの放った煉獄紅龍炎がテスカを吹き飛ばした。
会場からこれまでに無い大歓声が上がる。
『ワァァァァァァァッッッ!!!!』
「テスカ!!!」
崩れ落ちるテスカを見たウィルは咄嗟に助けに向かおうとするが、そこにミカエルが割って入る。
「凡人顔君、どこを見ているんだい?君の相手は私だよ!」
テスカに気を取られていたウィルの右手をミカエルが切り飛ばした。
「うっ!!」
それでもウィルは怯む事なく重力渦を放ちミカエルの左上腕部を消滅させると更に銀撃を二重掛けした左拳で顔面を殴り飛ばした。
「邪魔だ!どけぇぇぇっ!」
「ぐはぁぁぁっっ!!!」
『ズシャァァァァッ!!!』
ミカエルは地面を滑るように転がると、アリエルに攻撃を仕掛けようとしていたジェレミエルに激突した。
すかさずウィルは、血だらけで地面に倒れているテスカの元へ向かうと上半身を抱き上げた。
テスカは先程までのジャガーの姿から元の姿に戻っている。
「テスカ!!今、回復魔法かけるから!」
「ううっ…。ウィルか…。すまないねぇ…。ごほっ!ごほっ!」
「喋らないで。大丈夫ですから。」
自分の右手が切り飛ばされている事など気にも留めずウィルが回復魔法をかけていると、頭上から息苦しい程の熱波が押し寄せそれと共にオグニイーナの高笑いが会場に響いた。
「あははははは!ウィル、ミカエルを倒すなんて、なかなかやるじゃない?
そうだわ!ここ最近、配下達が使えない奴ばかりで困ってたのよ。アナタ、ワタシの配下になりなさい。そうすれば見逃してあげるわ。どう?」
回復魔法をかけながらウィルはオグニイーナを睨み付けた。
「悪党がよく使うセリフですね。残念ですけど俺はアンタの配下にはなりませんよ。それに…。」
「それに?何かしら?」
「俺は胸は小さいより大きい方が好きなんです。」
ウィルが嘲笑うようにオグニイーナの小ぶりな胸に視線を移すと、オグニイーナの顔から笑みが消え炎の髪が燃え上がった。
「……死になさい!煉獄紅龍炎!!!」
オグニイーナの炎の羽衣が8つの頭を持つ炎のドラゴンへと変化し、ウィル達へと襲いかかった次の瞬間、突如七色に光り輝く獅子が現れ煉獄紅龍炎を引き裂いた。
そしてそれと同時に獅子の背中に跨っていた男の放った青白く光り輝く斬撃が、油断していたオグニイーナの胴体を真っ二つに両断したのだった。




