第13話 紅龍炎
「話は終わりよ。焼き殺してあげる!」
オグニイーナが両手を広げると、ウィルの足元がドロドロに溶けて陥没した。
ウィルはとっさに空中に浮かびかわすが、それを読んでいたようにオグニイーナは巨大な火の玉を放った。
「おっと!?」
ウィルは左手に銀色の刃を出現させると巨大な火の玉を真っ二つに切り捨てた。
二つに分かれた火の玉はウィルの両脇を通り過ぎて爆発した。
『ドゴォォォォォン!!』
次の瞬間、その火の玉の後ろに隠れていたヘルガルムが大きな口を開きながら襲いかかってきた。
「ガオォォォォッッ!!!」
ウィルは右手に銀色の渦を瞬時に作り出すと、ヘルガルムの大きく開いた口の中に押し込んだ。
ヘルガルムが口を閉じようとした瞬間、頭部が銀色の渦に吸い込まれ消失し、頭部を失った胴体をウィルは切り捨てた。
「ふう、危なかった。これはなかなか使えそうだな。」
ウィルの使用した銀色の渦は、引力すなわち重力を極限まで高めたブラックホールであり、あらゆる物質を吸い込み消滅させる無属性神級魔法の重力渦という魔法であった。
また、ウィルが先程から使用している銀色の刃は、銀震刃という刀身が超振動している聖剣並みの切れ味を誇る無属性神級魔法であった。
「ヘルちゃん!!!」
オグニイーナは無残に地面に転がるヘルガルムの残骸に走り寄るとその前で両膝をつき、優しく触れた。
「ヘルちゃん…。許さない!私の大事なヘルちゃんを殺すなんて。八つ裂きにしてやる!!!」
オグニイーナの炎のような髪の毛が逆立ち、全身を真紅の炎が覆い始めた。
そしてオグニイーナがゆっくりと立ち上がりウィルの方を振り向くと、全てを焼き尽くすような熱波がウィルに押し寄せてきた。
「ヤバい!」
ウィルは防御障壁を展開し防ぐが熱波が周囲の草花を焼き尽くした。
オグニイーナはドレスの裾を無造作に引きちぎると、その布切れに魔力を込めた。
「はあああああっ!」
布切れは燃え上がると数十メートルはあろうかという龍の形をした真紅の炎へと変化した。
それは20年前の大戦でマクグラン王国の兵士1万人を焼き殺した、火の神オグニイーナの代名詞とも言われる神級魔法の紅龍炎であった。
「燃え散りなさい!!!」
『グワァァァァァッッ!!!』
紅龍炎が咆哮を上げながらウィルに襲いかかる。
ウィルは横に飛び避けようとするが、その動きに紅龍炎は難なく反応しウィルを捉える。
「逃がさないわ!」
「うわっ!?」
ウィルは咄嗟に防御障壁を展開するが、紅龍炎は障壁ごとウィルを押しながらさらに突進してくる。
そして、防御障壁の耐久力が限界に達しヒビが入り始めた。
「くそっ!耐えられないか!?」
「あはははははっ!死になさい!!!」
防御障壁が砕け散る。
『パリィィィィィン!!!』
防御障壁が割れた直後、ウィルはかろうじて紅龍炎の上顎を銀震刃で受け止め切り捨てようとするが紅龍炎の再生力が上回り、勢いそのままにウィルを飲み込もうとしたその時。
『ズガガガガガァァァァンン』
空に雷雲が立ち込め耳をつんざく雷鳴が轟くと稲妻を帯びた巨大な竜巻が発生し、紅龍炎を空高く巻き上げかき消した。
「チッ!あと少しだったのに邪魔してくれたわね。」
ウィルは竜巻の風圧で吹き飛び地面を転がるが、なんとか起き上がり片膝をつきながら辺りを見渡すと、少し離れた空中に見覚えのある女神の姿を見つけ思わず叫んだ。
「カルデ様!」
カルデはフッと笑うと羽衣をなびかせながらウィルの近くに着地し、片手をウィルに差し出した。
「待たせたな。我の分身体をよく守ってくれた。感謝する。」
「いえ、カルデ様のおかげ、あっ!?」
ウィルはその手を取り立ち上がろうとするが、足がもつれカルデに抱きついてしまう。
「あんっ!」
カルデの口から普段からは想像できない艶っぽい声が漏れる。
それもそのはず、ウィルが抱きついたその先は、カルデの豊満すぎる胸の谷間であった。




