第7話
もちろんすべてが初めての体験だった。
初めて裁判官というのを見たし、傍聴人たちもいた。彼女の両親もいた。娘の学校の先生もいた。私は背中で様々な熱を帯びた、様々な視線を受けた。それだけで足が震えて、止まらなかった。
検察官が読み上げていく、私のやったことを私はそこで知った。
妻と娘を殺した。
無期懲役で当然だと思った。むしろ死刑でよかった。
しかしそれは叶わなかった。
願い?
願いすら自分には不当だと思った。
無期懲役。
死を待つものだとずっと思っていた。ひたすら死に向かって同じ事を繰り返しながら死んでいくだけだと思っていた。でも逆だった。ひたすら生きていた。死ぬことが許されずにただただ生きるしかできず、本当にいつか死ぬことができるのか?本当に寿命なんてあるのかなどと、まるで小学生が先生に質問しているようなことを真剣に考えてしまう。
毎日、小窓から日が差した。
でも、いつかは死ぬ。
少し寒くなってきたと、冬が来たんだと感じた。
でも、いつかは死ぬ。
ちょうどここに来て、五年が経ったある日、53歳。
自分を「月」にした。夜、太陽の残り火に照らされる月。遠くにいる地球の周りをただただ回っている月。自ら光ることができない月。
そして世界が無になった。
そしたら羊が現れた。