表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/165

交流68 MASATO

 えっ?1週間の出張?


 そうか、1週間も愛さんに会えないんだな。


 直人は自分でもはっきりそうとわかるほど、ガッカリしていた。愛と1週間も会えないことなど考えてもいなかったのだ。


 『愛さん、出張ですか。そっかぁ、自分、今、かなり落ち込みました(笑)自分でもその落胆に驚いたくらい(笑)自分の中で愛さんの存在がそれほど大きなものになっているんだと実感してしまいました。愛さんに会えない一週間、寂しいけど自分は毎日ここに来ます。あっ、そうだ……考えてみたら、愛さんの言葉にはいつでも会えるんだった。リアルタイムでこうしたやり取りは出来なくても、ここには愛さんの言葉がたくさん詰まっている。その言葉を毎日毎日読みに来ます。……だから、あのね、……一つお願いがあるんだけど』


 どうしよう。こんなところで言葉を切ったら、愛さんは自分の頼みを断りにくくなるのかもしれないな。でも、こんなふうに愛さんと言葉を交わしていると、本当に愛さんが目の前にいるような、そんな心の高ぶりを感じているし、沸き上がった感情をそのまま伝えたくなる。


 今、本当は愛さんが目の前にいたら、抱きしめたい。……そう、そんな気持ちだ。そして愛さんも同じ気持ちでいることを……知っていたい自分がいる。


 『なんかね、そんなにガッカリしてもらえて、直人さんには悪いんだけど、ちょっとだけ嬉しいです(笑)直人さんがそんなふうに思ってくれたことが嬉しい。でもね、私もとっても寂しいんです。毎日直人さんに会いたいから。それから、お願い?……なんだろう?私にできることならば言ってください。直人さんの願い、聞き届けますよ(笑)』


 「ふっ」


 思わず笑みがこぼれた。そうだ、これだ。愛さんが自分にくれるこの感情。愛おしいと思う気持ちと、それをするりとかわしつつ、同じ想いを伝えてくれようとするその言葉。やっぱり愛おしい。そう思わせられる。そして、時々感じるこのなんともいえない心の交流の中で、これが自分の心にすとんと入り込み、愛さんの返してくる言葉が、自分が思うのと、自分が欲しいと思うその言葉がちゃんと返ってくるという不思議さ。なんだろう、この不思議な感覚。


 その昔、勾玉と勾玉が重なり合うと、丸になる。そんなふうにピッタリと当てはまれる魂を持つ相手が必ずいるものだという話を聞いたことがある。ふと、そんな言葉が思い浮かんだ。心が共鳴し合う。そう信じていいのではないかとさえ思わされる。……おかしいかな、一度も会ったことない相手なのに。


 『愛さんに、自分を……直人を想う言葉を言って欲しい』


 たった一行、そう書いた。その方が、自分の愛さんへの想いが伝わるような気がしたからだ。


 『直人さん。……大好きだよ』


 『直人さん、大好き』


 『直人さん……大好き』


 『直人さん。だーい好き(笑)』


 『直人さん……大好き……大好き』


 『直人さん。大好きだよ』


 『直人さん……いっぱいいっぱい、大好き』


 『直人さん……一週間分、書いてみました(笑)書いていたら、心の中が直人さんへの想いでいっぱいになって、何かが心の中から溢れ出てしまったように……熱いです(笑)直人さんが好き。会ったことない人だけど、……直人さんがどんな人なのか、毎日こうして話をして、理解できていると思うし、私には直人さんの顔も想像できているし……私の顔がわからない直人さん。私、自分のこと、内面じゃなく外側の私を教えないことはずるいかな?』


「ふっ」


 また笑みがこぼれた。これだ。愛さんはこんなふうに返してくる。こんなふうに、愛さんは自分の心の温かさをそれとは知らず届けてくる。やっぱり愛おしい。


 『ずるくなんかないさ。こんなふうに心を伝えてくれる愛さん、自分の欲しいものをちゃんと届けてくれる愛さん。時間って、愛だと思うんだ。あっ、この時間の「愛」は愛さんの名前の愛じゃないよ(笑)自分の時間をどう使うか、時間は当たり前だけどどんどん過ぎているもので、それはその人の命そのもので、今、こうして愛さんは自分のためだけにここで書き込みをしてくれていて愛さんの命でもある時間を、自分のために使っている。ずるくなんかないさ。前にも言ったけど、ゆっくりでいいんだ。こうして時間を使って、ゆっくり前に進んだらいいのかなと思っているよ』


 『直人さん。ありがとう。時間は愛で、時間は命そのもの……か。私が直人さんのために時間を使っているように、直人さんもその命を私のために使ってくれている。これってすごいことだね。直人さんは、自分の欲しい言葉をくれるって言ったけど、それは私も同じなんですよ。直人さんのくれる言葉に、私は心を温めているし、……それとね、ドキッてしちゃうの(笑)こんな感情、はじめて』


「ふっ」


 愛さんも、欲しい言葉をくれるって思ってたんだな。やっぱり、なんだか2人、似てるのかもしれないな。


 本当に、丸になれる2人なのかもしれない。


 直人の心の中も、とても温かいもので満たされていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ