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ブロガー4

 『AIさん、書き込みありがとうございました。早速、今、AIさんのブログのファンボタンを押させてもらいました。よろしくお願いします。読書談議、楽しみにしています。因みに今、自分は宛先不明郵便というのを読んでいます。AIさんは何か読んでいますか?それと、タクシーの運転手かどうかは、記事から察していただけるかと思います』


 早速『宛先不明郵便』を読んでいることを書いた。マナがまだ読んでいない本だ。そしてタクシーの運転手かもしれないというマナの……AIの問いかけにも思わせぶりな返事を書いた。これならば、あちこちでランチをしているような記事を書いていることで、AIはタクシーの運転手さんだと思い込んでくれるだろう。タクシーの運転手だとは書かないが、否定もしない。それでいい。自分はここではタクシーだ。坂本拓也ではない。こんな場所で知り合いがいたら、AIは警戒するだろう。警戒どころか、ブログを止めてしまうかもしれない。それは避けたい。今、僕たちは始まったばかりなのだから。


 拓也はAIのブログのファンボタンを押した。そして、その記事を最初から読み始めた。


 パンナコッタにマドレーヌ……クレープだ。やはりこれは寺井愛美だろう。マナは叔母である野々山美弥にもクレープを届けにきていたじゃないか。お菓子作りが好きだと美弥も言っていた。その日付を頭の中で引っ張り出し、クレープを持ってきた少し後にクレープの記事がUPされているその日付を確認した。


 そして、その書き込みにもすぐに気付いた。MASATOだ。


 マドレーヌの記事の下は、まるでAIの独り言のようであるが、MASATOのブログで目にした記事と、AIのそのコメントの文面からここへの内緒の書き込みがMASATOであることは明白で、ついでにMASATOという人物が、同県民であることにも察しがついた。


「そうか、ここで同県民だと知り、MASATOが近づいたわけか。……チッ」


 舌打ちが出た。やはりAIのゲストページへの大量の書き込みはMASATOなんだろう。AIはそれにどんな対応をしているのだろう?さすがに身バレなどには気をつけているだろうが、なんだか面白くない。


 拓也は自分の知り得る寺井愛美の気を引けるように、寺井愛美が好きそうなミステリー本をもっと読み、紹介してみよう。そして自分だって同県民かもしれないと、タクシーのランチ記事に気付いてくれれば、タクシーとももっと親密にしてもらえるのではないか。


 『宛先不明郵便を読んでいるのですか?私も近く読む予定の本です!タクシーさんの感想楽しみにしていますね。あっ、でもネタバレはなしでお願いしますね、読むのを楽しみしているので(笑)私は今、『予感』……を読んでいます。これもとっても面白いというか、ドキドキ感があっていいですよ』


 『予感』か。知ってるさ。寺井愛美が今、借りている本だ。


 『AIさん。予感を読んでいるんですか?自分、読んでいないのですが、AIさんが面白いということは、自分が読んでも楽しめそうです。自分も読んでみます』


 自分も読んでみる。そりゃあそうさ、寺井愛美の後に予約を入れているんだから、今、マナの手元にあるその本は、もうすぐ僕の手に……


 そう思った瞬間、拓也は本の間に顔をうずめ、そこから感じた愛美の匂いを思い出し、むくむくと起き上がってくるもう一人の自分を感じ、そっと手を触れ目を瞑った。


「マナ……マナ……マナ……愛美……愛美……マナ……」


瞼の中の愛美は、拓也を誘い、拓也はその愛美の髪に、頬に、鼻先に……唇に触れ、その胸に顔をうずめて、マナの中に入り、高揚するままにその名を呼び続けた。



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