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交流52

 ピピピッ……ピピピピッ……ピピピピッ……ピピピピピ……


「んっ……と、今日は……昨日は図書館に行って……ヤバッ、月曜だ!」


 深い眠りから無理やり現実に引き戻され、まどろみの中で今日を探した。まだ頭がボーっとしている。ボーッとした頭で、愛美はなぜこんなに眠いのかと、頭を巡らせると、昨夜のMASATOの書き込みを思い出し、そうだなかなか寝付けなかったんだと、思いっきり寝不足になっていることを感じながら、ベットの宮棚に置いてある折りたたみできるコンパクトミラーを手に取ると、それを開いて目を映した。


「うっわ、ヤッバッ……どうしよう、大丈夫かな」


 鏡に映った自分の顔、目の辺りが腫れぼったく見え、少し赤味も帯びている。だからといって、休むわけにもいかず洗面所に向かうと、ちょうど父の和弘がそこから出てくるところに鉢合わせた。


「愛美、遅くないか?」


「ううん、ちょっとだけ寝坊。急ぐし、大丈夫だよ」


 愛美は入れ違いに洗面所を出た和弘の背を見送りつつ、特に何も気づいた様子がないことにホッとした。ちょっとくらい目が赤いくらいじゃ気にもならないか。


 洗面所で顔を洗いながらタオルを冷たい水で濡らし、しばらく目に当ててからリビングに入ると、「おはよう」という母の美穂の声掛けに「おはよう」と返すと、「なんか目が赤くない?遅くまで本読んでたんでしょ。急ぎなさいよ」との声。さすがに気付くんだな。でもよかった、そのくらいにしか思わないよなと胸を撫で下ろしていると、「お姉ちゃん、上手くできない~~」と、スカーフを持った美菜がやってきた。


「ダメよ、お姉ちゃんギリギリだから、ほら、やってあげるから」


そう言って、母が美菜のスカーフを受け取ると、あーでもないこーでもないと2、3度結び直して、「はい、綺麗にできたわ」と、いつもと変化のない朝の様子を目に移しながら、急いで朝食を済ませた。


 急いで自転車を漕ぎ純との待ち合わせ場所に着くと、純も丁度来たところだった。純がのんびり屋さんでよかった。毎日のことだが、待たせることは愛美は苦手だ。


 自転車置き場に着き、そこを出て裏校門に向かって歩きはじめると、すぐにその姿に気付いた。真崎先生が金曜にそこにいた先生の一人と共にそこに立ち、登校する生徒を迎えていた。


「おはようございます」「おはようございます」


来る生徒にそう声をかけ、生徒もそれを返しと流れ作業のようににこやかな顔を見せていた真崎先生が愛美に気付くと、一瞬、その表情が愛美の顔で止まったことに愛美は気付いた。


 その表情は、声に出さずとも、『ん?』と言っているように見えたが、愛美は他の生徒たちと同じように、表情を変えずに「おはようございます」と、チラッと真崎先生のほうを見やると目の前を通り過ぎた。


 自然にできただろうか?


 不自然だっただろうか?金曜に事務室の前で話をしたのだから、ちゃんと顔を見て微笑みを返しながら挨拶をしたほうがよかっただろうか?そんなことが頭の中を駆け巡り、ピロティ―に入る寸前、ふと、振り返ってしまった。


 目が……合った。


 真崎先生がこちらを見ていた。視線が一瞬合い、愛美はその視線を何も気づかなかった風を装って前を向きながらピロティ―に入って行った。不自然ではなかっただろうか?


 なぜ今日もそこにいたんだろう?いや、そういえば時々そこに『先生』が立っていることは、ままあることで、今までそのこと自体、あまり気にしたことがなかったが、まさか金曜に続いてまた真崎先生がいるなんて、全く気にもしていなかった。胸の鼓動がまだ止まらない。


「マナ、なんか変だよ。顔、赤いし……って、よく見たら目もちょっと赤くない?熱でもあるんじゃないの?」


 そう言ったかと思うと同時に、純の手の甲をおでこに感じた。幼稚園から一緒の純とは、他人じゃやらないようなこんな仕草もお互いできるほどに身近な存在だ。


「いや、大丈夫。昨夜ちょっと遅くまで本を読んじゃって、実はかなり寝不足」


「うん、そうだね、熱はなさそう。授業中寝ないように気をつけなよ~」


笑いながら下駄箱に向かう純の後について、愛美は後ろ髪を引かれつつ下駄箱に向かった。


 

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