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交流51

 ゆっくりとした休日を過ごし、夜22時を過ぎた頃にブログを開くと、MASATOから書き込みされたばかりのコメントが入っていた。


 MASATO来てくれたんだな、今夜は来られないかもしれないと書いていたのに、ちゃんと来てくれた。愛美には、なんとなく来てくれるような予感があった。MASATOの気持ちがAIに向いている実感を、その言葉から感じ取っていたからだ。


 『AIさん、こんばんは。今ね、電車の中からです。飲み会が終わって日曜のこの時間の電車はね、やはり空いています。飲み会の喧騒の中、ふとしたときに、今頃AIさん何しているかなって考えていました。だから、今、AIさんからのコメントを読んで、胸がポッとあったかくてね……。電車が走る音、それが心地いい静かな中にいると、なんだか人恋しくてAIさんのことを思っています。ははっ、なんかちょっと酔ってるかも(笑)帰ったらすぐにシャワーして寝ますね。AIさん、おやすみなさい』


 MASATO……心でそう呟くと、目頭が熱くなり涙が滲んできた。愛美はMASATOのこんな気持ち、大人の男の人のこんな気持ちが自分に向いている実感をその文章から感じ、胸がつまるほどのMASATOへの想いがどんどんと膨れ上がるのを感じていた。


 『MASATOさん、MASATOさんのそんな言葉を読んで、ドキドキしています。知らない人なのに、MASATOさんに自分の気持ちが全部向いて行きそうで、少しだけ怖いです。嬉しくて怖い、そんな感情です。明日も来てくれますか?会合のことも聞きたいです。MASATOさんの話、もっと聞きたいです。今日はお疲れでしょう?ゆっくり休んでくださいね。おやすみなさい』


 これで今日はもう寝よう。明日は学校だし、今、顔もこんなだし、明日、目に赤みが残ったら髪を切ったばかりでみんなに何か言われそうだし……愛美はとうとう零れ落ちてしまった涙をティッシュで拭うと、鼻をかみ、パソコンを消す前にもう一度と思い、MASATOのクリニクラウンの記事を開いた。そこにいるNAOの顔を見るために、そこにMASATOを重ねて目に焼き付けるために。


 愛美はMASATOがNAOになっている姿を目に焼き付け、その姿を瞼の奥にいる真崎先生の顔と重ね、今夜、MASATOの夢を見られたらいいな……そう思いながらパソコンを消そうと、ログアウトのために自分のブログのホームを開いた。すると、書き込みのある表示が点灯していた。


「えっ、まさか……」


 『知らない人?……その言葉が今は少し悲しいです。でもね、顔を知っているから、誰だか知っているからその人とのことわかってるって思ったら、それは違うと思うんだ。よく知っているはずの人なのに、全く知らない一面をいきなり見せられるってことも経験しています。よく知る人からの裏切りもありました。顔を知らない、心と心の交流だからこそ、知らない人だからこそ見せられる心の中ってあって、それって……知ってる人よりも深く知ってるってことになるのかなって、AIさんとの交流で感じているんです。AIさんの顔も名前も知らないけど、AIさんが誠実で優しく、心配りのできる人だなっていうことは知っていますよ。もしかしたら自分が知らない面がまだあるのかなとは思いますけど、そうしたまだ知らないAIさんのこと、もっと知りたいって、今は思っています。明日また会いに来ますね。おやすみなさい』


 一度は止めたはずの涙がまた零れ落ち、膨れ上がったMASATOへの想いをどう処理していいのかわからず、愛美はベットに入ってからもしばらくMASATOの言葉を丸々と反芻できるほどに何度も思い浮かべ、眠ろうと閉じた目からも涙は流れ落ち、なかなかそれを止められずにいた。


 


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