表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/165

交流3

 愛美は昨日、自分たちがどう行動したのか、どこでMASATOが自分を見かけたのかと、あれこれと思いを巡らしてみても、それがどこだったのか愛美にわかるはずもなく、せっかく同じ場所にいたのに、MASATOを見つけることができなかったことを悔やみながらも、昨日自分もそこにいたことをコメントに書くことで、AIの印象をMASATOに強く植え付けることができるかもしれないと思った。


 ちょうどいいことに、MASATOのこの記事は、ファンしか見ることができない記事なので、愛美が昨日そこにいたことを他人に知られることもなく済む。


 愛美はMASATOのその記事にコメントを書こうとして、ふと、そういえばと思い、まずMASATOのゲストページを覗いてみた。自分への返事があるかもしれないと思ったからだ。


 すると、案の定昨日自分が書き込んだゲストページに返事が入っていた。


 『AIさん、こんにちは。書き込みありがとうございました。登録もありがとうございました。これから一緒にブログ生活を楽しみましょう。これからよろしくお願いします』


 そう返事があり、一緒にと書かれたその部分がなんだか嬉しく、愛美は自分の顔がほころぶのを感じた。


 『こんばんは。MASATOさん、昨日ディズニーにいたんですか?奇遇ですね。実は私も昨日、ディズニーにいたんです!近いうちに記事にしようと思っています』


 記事の方にそうコメントを残すと、愛美は自分のホームに戻って、昨日の写真をパソコンに取り込むと、明日、いつでも記事をあげられるように写真の加工をしてパソコンを閉じようと思い、ふと、もう一度だけとMASATOのページを覗いてみたところ、書き込んだばかりのコメントに返事が入っていた。


 『AIさん、こんばんは。昨日、いたんですか!?すごい偶然ですね!わぁ、なんか嬉しいなぁ。記事、楽しみにしていますね!』


「うそっ、はやっ……って、これって今、同時にパソコンの画面に向かっていて、ブログをやっていたってことだよね」


 そう思ったら、なんだかMASATOの存在がものすごく身近なものに感じ、しかもコメントの返事に嬉しいって書いてあるし、記事も楽しみにしてくれていると思ったら、嬉しくて嬉しくて、ほころんでいた顔がさらにほころび、どんな記事を書こう、どうしたらMASATOの気を引くことができるか思いあぐね、消そうと思っていたパソコンをなかなか消すことができず、じゃあいっそ記事を書いてしまおうかと思っているところに、いきなりドアが開いた。


「ちょっと愛美、まだ起きてたの?いくら明日も休みだからって、もう寝なさい。明日はお母さん仕事なんだから、家のことも頼みたいんだからね、いつも通りに起きてもらうよ」


「はいはい、もう寝るから。ちょっと写真見てただけじゃん」


 そう答えながら見たパソコンに表示された時刻は、すでに翌日を迎えていた。


 母親が覗いた瞬間、咄嗟に画面の右上×をクリックし、見られてもいい画面にしたが、母はそのままドアを閉めて自分たちの寝室に行ってしまった。


 愛美は後ろ髪を引かれる思いがしたが、母に声を掛けられて気が抜けたのか、部屋で温まった遊び疲れた身体は、目を閉じた瞬間に眠ってしまいそうなくらいの眠気を感じていた。


 明日、記事を更新したら、きっとMASATOは読みに来てくれるはずだ。


 そう、ゆっくり進めよう。


 焦り過ぎて失敗しないように。


 自分が誰なのか、MASATOが真崎先生だと知っていることを気付かれないように、学生だともバレないように。


 愛美は思いがけず知ったMASATOという、先生じゃない人の部分としてのMASATOと交流してみたい気持ちが強くなっていた。


 それは、知った人というだけで、ちょっとした安心感があるから交流を持ちたかったというだけでなく、芽生えたものは恋に似た何かのようにも思えたし、そんな『人』としての部分と思いつつも、自分が生徒の立場では知ることができない、先生としてMASATOが知る学校内の話を知りたいという下心も、そこには確かにあるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ