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出会い15 

 MASATOの履歴を見つけ、身体中に駆け上がる熱を冷ますために自分のファンの元を訪れてコメントを残してきた愛美は、自分のブログに戻ると、特に新しい書き込みがないことを確認し、もう一度、MASATOのブログへと飛んだ。


「こっちも特に変化なしか」


 そうなると、ブログを開いていても特にすることはないが、そういえば下書き機能があったなと思い出し、昨日写真に撮ったパンナコッタの記事も書いてしまおうと思い、新規作成ボタンを押した。



     パンナコッタ


   春休み中の妹のところに友達が遊びに来るというので、


   お菓子を作ってやることにした。


   前日にはその友達の家で手作りクッキーをもらったというので


   じゃあ、と、生クリームがあったのでパンナコッタを作ることにした。


   お菓子作りはわりと好きなので、めんどくさがりの私でもできるのだ(笑)


   桃缶を飾りにして、こんな感じでできました。



 そう書いて、写真を載せると、下書きに保存した。


「どうしよっかな」


 時計を見ると、10時を過ぎたところだ。ブログも1日中回っていてもそう変化はないんだし、昨日の続き、読んじゃおうかな……と、その前にもう一度MASATOのところを覗いてみよう。まあ、今日は仕事だろうけど、でも昨日有休だったからもしかしたら……そんな気持ちもあり、MASATOのブログに飛んだ。すると、またMASATOが記事を更新しているではないか。


「え?今日も休み?」


 記事の更新があったことを知り、それに目を通した。


「っていうか、また同じラーメン屋さん?二日続けて朝からラーメン?……ええっ?明日はネズミの遊園地って、えっ?まさか、うちと同じとこに行く??」


 MASATOの記事を読んで、明日、同じ場所に行くのかもしれないとわかると、愛美は向こうでバッタリとでも会うんじゃないか、でもディズニーはものすごい人なんだし、そうそう出くわすわけもないし、そもそも若手でと書いてるではないか。それだと自分のことがわかる先生が他にいるのかもわからないし……


 高校には、かなりの数の教員がおり、真崎先生のことだって、あの日、たまたま階段で荷物が降ってきたことでちゃんとした存在を知ったくらいで、じゃなきゃ自分が授業を教わったり、同じ学年にいる先生くらいしか顔はわからない。だから、もしMASATOを見かけるようなことがあっても、自分を知る先生がいなければきっと向こうも誰も気付かないはず。でも、気付くか気付かないかというより、たくさん人がいるんだから他人のことなんて、そうそうちゃんと見てはいないだろう。


 でも、本当に明日同じ場所に行くなら……


 そう思うと、愛美は明日、MASATOに会えるかもしれない、見かけることもあるかもしれない、ただでさえ嬉しい旅行が、さらに楽しみが増えた気がして、明日着ていくつもりの洋服を頭の中で自分に着せてみて、でもMASATOに会えた時、あっちの方がいいかな、やっぱりこっちかなと、デートをするときのように気分が高揚し始め、会えた時のことをあれこれと妄想して顔がニヤけることをなかなか止められずにいた。


「なんか作っちゃおうかな」


 お昼ご飯はカップ麺でいいと言ったけれど、気分がウキウキしてきた愛美は、甘いものが欲しくなり、冷蔵庫を覗くと卵もたくさんあるし小麦粉は常備しているし……うん、マドレーヌならできるなと、作り始めた。


 焼き上がるのを待っている間に、カップ麺を食べてしまうと、ブログ用の写真を撮るためにテーブルを綺麗に拭くと、食器棚から縁に青い小花柄の白いケーキ皿を出して置き、カメラの用意をした。


「こういうとき、スマホがあったほうが楽なのかもしれないな」


 愛美はスマホを持っていない。

 中学を卒業した時、多くもない親しいの友人たちと同じようにスマホを持とうかと思ったが、校則の厳しい高校では携帯もスマホも持ち込み禁止で、持ち物検査のある学校では荷物に紛れ込ませるのも難しいし、なにより愛美は中学のときスマホ持ちの人たちのゴタゴタを見聞きし、正直なところうんざりもしていたのだった。


 それよりも、パソコンが欲しかった。

 携帯やスマホを持つ友人たちとメールでのやり取りはそれで十分だったし、パソコンならばいつ読んだのかもわからないので、すぐに返事をしなくても文句を言われもしないし、その旨、友人に伝えてあるので、誘いにすぐに乗らなくてもいいので、人付き合いに関しては特にめんどくさがりの愛美には実際有り難かったのだ。


 厳しい校則で、高校でできた友達の中でも、まだスマホを持っていない子も実際それなりの数はいた。いわゆる一緒に弁当を食べる仲のいい6人グループの中でも、半分はそのどちらも持っていなかった。この5人は、偶然だろうけれど愛美と同じ市に住む子はいなく、帰宅後や休日に一緒に出掛けようという話が出るほどの強い関係性もなかったので、誘われたら断るのが面倒な愛美にとって、有り難い友人たちでもあったのだ。


 女性ばかり女子高の中で、このメンバーが3年でも同じクラスになることを、心から願っていた。



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