2.5-10:見据える先⑩
今話で、間章2.5も10話の大台に。もう少しだけ続きます。
昼食を手短に済ませ、再び情報共有の場を再開した。ドクターとサウサンからの報告は終了したので、最後はソフィーとシャンインからの話となる。内容としては、主に要塞関連だな。ぶっちゃけ、内容はオッサンも既に知ってます。
「では、最後は私達からですね」
「先ずは、先月20日から開始された艦隊の強化についての進捗状況ですの。昨日までに改アスローン級駆逐艦24隻と、アスローン級巡洋艦(電子戦型)24隻の解体が終了。一方で、ウェクスフォード級駆逐艦24隻、シャニッド級巡洋艦16隻、フォックスフォード級空母2隻の建造が完了。それから、当初の予定を入れ替えてシャニッド級66隻と、ウェクスフォード級11隻の通常型への改良が完了しましたわ」
「艦載機用のイースキーⅡについては、既存の配備済み機体と合わせて空母2隻分120機が確保出来ました。現状では、巡洋艦が開始前に比べ8隻減の状況となっています。ですが、これ等は今後の建造で問題無くカバーは出来ると思われます。此処までの艦隊強化については以上ですが、今後の建造計画はどの様に修正されますか?」
管理者から送られる資源が、先月末から大幅に増加した。結果、空母の建造及び艦載機の生産が当初より先行する事になったのはご愛敬。まぁ、所有する艦艇数が大幅に増加した状況で、それまでの資源量では到底賄え切れないのは目に見ていたので助かった。その辺もキッチリ観察している管理者、きっと暇人なんだろうね。と言うか、管理している世界に対して下手に手を出せないから、見ているしか無いのかもしれないが。
「取り合えず、拠点艦の建造枠を確保しておきたい。それ以外は、建造計画に基づけばと言いたい所だけど、建造及び解体の間隔を狭めてペースを上げよう。それから、もし共和国側で動きがあった場合は以前にも話した通り、建造を適宜入れ替える」
「了解しました。一先ず、拠点艦2隻分のドックを空けた上で、明日より建造計画に基づき機動部隊向けのポートマギー級の建造計画を前倒しで開始します」
「いよいよ、新型艦祭ですわ。殿方は、そう言ったのが好きそうですわね?」
「そりゃ、好きなのは否定しないよ?」
新型艦とか燃えるよねって話しだよ。無論、既存艦が駄目って訳ではない。あくまで新型って言葉に心躍るってだけの事だ。実際、結果を出している既存艦の方が信用度の点では高いしさ。
「残りは、ウェクスフォード級23隻、ポートマギー級84隻、シャニッド級40隻、フォックスフォード級4隻ですね。これに加え拠点艦と任意の艦の追加建造ですか」
「要塞初期から比べたら、とんでもない数だわな。それでも、共和国戦を考えると少ないってんだから、スケール違い過ぎだわ……」
「共和国本国戦を考えると、万単位の戦闘艦艇は必要ですわね。でも、今は目の前のフォラフ自治国家解放ですの」
「勿論。一歩一歩、確実に進もう」
ドクターの開発している兵器と兵装に、サウサンの集めている情報。オッサン、ソフィー、シャンインで立案する戦術プラン。頼れる仲間が増え、戦力も増え、要塞は確実に前へと進む力を蓄えている。過去の失敗を活かし、次こそは結果を出さないとな……。
「さて、一先ず情報共有はこれ位だな。じゃ、ドクター。拠点艦の建造資源の話をしよう」
「畏まりました。現状では、金属11,500t、非金属3,000t、推進剤2,000ℓ程度ですな。クレアモリス級やフォックスフォード級より若干少ない程度と認識して頂ければ」
「4隻修理して、24隻に補給出来るって考えたら凄く少ない気もするけど?」
「ベースとした工作艦もそうですが、機関等を積載する船体自体は必要最低限のサイズです。その分、艦の機能として最も重要となる修理用のデッキ部と補給用のブリッジ部で相応に資源を消費しております。今後の新規設計艦も資源の必要量が極端には増加しないと思われますな」
「了解。取り合えず、ソフィーが空けてくれた2隻分から建造しようか。それほど必要資源量が多い訳では無いし、予定していた工作艦の建造計画を破棄して、拠点艦を増やした方が後々良さそうか?」
予定では、ドクターの持ってきた1隻に加えて3隻の工作艦を今の所は建造する事になっている。でも、拠点艦の性能から見ると建造に必要な資源を鑑みても、格下にならざるを得ない工作艦を建造するメリットは低い様にも感じるな。工作艦の修理能力もあくまで応急処置ってレベルだし、悩む所だな……。正直、拠点艦の開発をドクターに依頼した時は時間がもっと掛かると思ってたからな。結果的に、工作艦に日の目が当たらない可能性も出て来たか。
「初期工作艦であるグレンデリー級は、簡易修理が2隻で、補給は10隻まで。それに比べると拠点艦の性能は大幅に向上はしてますね?」
「ソフィーの言う通り、性能は大きく向上してるよな。建造コスト的には、1.5倍って位か……。工作艦の場合は、補給用の推進剤と弾薬はその都度、専用タンクなりに補給をする必要もあるし」
「費用対効果を考えると、拠点艦一択でわ?」
「判断は、香月司令官にお任せしますぞ?」
「香月が決めれば良い。私はどっちでも良いぞ!」
さて、どうするか。気持ち的には工作艦の建造は取り止めて、拠点艦建造に資源を集中すべきと思っている。性能や建造コストから見て、工作艦が勝っているのは1隻辺りの建造に必要なコスト位だけ。それですらも、工作艦3隻(簡易修理6隻、補給30隻)に対し、拠点艦2隻(修理8隻、補給48隻)で勝ててしまうのでほぼ意味が無くなる。護衛の艦を付ける事を考えても、より少数で済む拠点艦に軍配が上がるな。うん、工作艦は見送ろう。上位艦で性能差が縮まれば再検討の余地があるが、今の段階では拠点艦に資源集中がベストだな。まぁ、拠点艦が問題無く性能を発揮する事が前提にはなるが……。オッサンとしては、ドクターを信じようと思う。
「よし、工作艦の建造は取り止める。拠点艦を……、当面4隻を目標に建造しようか。しかし、そうなってくると工作艦とセットでの運用を考えていた補給艦も予定より早く数が要らなくなるな」
「そうですね。工作艦と異なり、要塞から拠点艦には直接補給物資を送り込めますので、補給艦も現状程の艦数は要らなくなるかと思います。今後は、拠点艦を同伴しない程に小規模な艦隊を動かす時に、必要になる程度ですね……」
「現状88隻ですので、将来的な事を考えても半分程度までならば一気に減らしても良いのでわ? その分、護衛の駆逐艦なりを追加建造した方が、戦力面でも強化に繋がりますわ」
「取り合えず、88隻から50隻まで数を減らして様子を見ようか。護衛艦の数も要調整だな」
「了解です(わ)」
元々、考えていた建造計画において工作艦と補給艦に関しては拠点艦次第な部分があった。それが今回は結果として、工作艦は差し替えで建造を中止、補給艦は前倒しで解体へ回る事になっただけだ。場当たり的って批判されそうだが、仕方が無いだろう。拠点艦の配備が此処まで早くなるとは、オッサンとしては想像出来なかったからな。ドクターが優秀過ぎたって事だよ。さて、此処までで時間も結構掛かってしまったし、纏めるとしよう。
「さて、じゃあ纏めといこう。ドクターは引き続き研究開発を継続、試験データの取り纏めも頼む。サウサンは、現地からの情報収集だな、決して無理はしない様に。ソフィーとシャンインは引き続き建造関連と外交面を頼む。俺は、全体の進捗状況を管理する。これ位かな?」
「後は、適宜関係者で調整すれば良いですわ」
「左様。さて、次は何を生みだすかの……」
「ふっ、私に任せておけば全て上手く行く」
「「「「……」」」」
「なっ!? その目は何だ!」
相変わらずサウサンは弄られ要員だな。まぁ、それでも仕事はキッチリとやりきる辺り、優秀なのは間違い無いのだが。ポンコツ疑惑は濃厚だが、良いキャラだと思う。愉快な仲間達に囲まれた、要塞での司令官生活。この笑顔が曇らない様に頑張らないと……。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。