2.5-9:見据える先⑨
ストックが減ってきてしまった。執筆ペースを上げねば。
「最後が、電磁パルス兵器でしたな。此方は、先行して砲弾型を開発し試作品の少数生産を行っております。先ほどの光学迷彩同様、試験艦でのテストをお願い致します。効力としては、着弾乃至近接信管の動作で半径50m前後に影響を及ぼします。共和国の施工している対策程度ならば、現状では確実に潰せますな」
「了解。これも、同じ艦でテストしようか」
「香月。そうすると、私の艦にも積むのか?」
「お願いしようかな? まぁ、出来れば使う機会が無い事を願うけどね」
「了解した。ドクター、光学迷彩と合わせて最優先で積載を頼む」
「では、その様に。さて、私からは以上ですかな。これ等以外にも、有用性の高いと思われる兵器や兵装等も随時研究開発を進めますので、ご期待下され」
「宜しく、ドクター」
一先ず、ドクターからの報告は終了だな。依頼している物は順調だし、それ以外でも自発的に研究開発を進めてくれている様だ。これから、ますます戦闘は激しくなっていくだろうし、これからもドクターには頼る事になる。ソフィー達も含め、待遇面も更に改善していこう。
「さて、では次は……」
「では、私から先に話をさせてくれ」
「じゃ、サウサン宜しく」
「うむ」
サウサンは何度となく、オッサンに対する言葉遣いを直す様にシャンインに言われている様だが、その気配は無い。まぁ、個人的にはそれは彼女の個性だと思うので別に気にしていないのだが、シャンイン的には気に入らないらしく、度々突っかかっている様だ。何度かシャンインとも話したけれども、絶対に矯正すると言って一歩も引かない状況。ソフィーは苦笑いしつつ、何時も仲介役を買って出ている。人ならざる金属生命体である彼女達だが、個性豊かで楽しい仲間達だ。ドクターは貴重な同性枠だね。
「共和国本国関連の情報だが、帝国との間で発生したグルケニア会戦で大敗を喫し、8個機動艦隊が事実上壊滅した。艦艇の損失数は12,600隻余り、人員の損失は推定だが68万人を上回っているだろう。勢い付いた帝国の攻勢を食い止める為に、各方面から多数の艦隊戦力が引き抜かれている。恐らく、フォラフ自治国家周辺宙域に派兵されている第6機動艦隊からも、近日中に引き抜きが行われるだろうな。これで、先日の議会で可決された第6機動艦隊への増援部隊派遣は事実上取り消しになったと見て良いだろう」
「なるほど。増援が無くなっただけでなく、ある程度の艦艇が引き抜かれるとなれば、仕掛けるチャンスとなるか……」
「そうだな。とは言え、此方方面への警戒を怠っている様子は無い。ここ数週間、100隻前後の偵察艦隊が頻繁にコンラッドコロニー宙域まで進出してきている。そう簡単にはいかないだろう」
「勿論、次は慎重に行くさ。功を焦って、痛い目に遭うのはシュミレーションの中だけで良い」
「それが分かっているのならば、良い。第6機動艦隊の動向は、現地調査も含めて引き続き行うから、香月はそれを参考に戦力の強化に励め」
「頼んだよ、サウサン」
「任せろ! ッゴフっ!?」
ドヤ顔で胸を叩いて咽るサウサン。オッサン的に、やっぱり彼女はドジっ子だよね。何て言うか、必死に背伸びして大人と渡り合おうとしている子供と言うか、褒めて欲しくてがむしゃらにアピールしている犬と言うか。まぁ、可愛いから良いか。無理や無茶な行動は困るけどさ。
「それ以外に、何か情報はある?」
「ん、そうだな。例の星女だが、何ヶ所かの基地を経由した後に共和国の首星である惑星『ステッサ』に連行された様だ。恐らく、軍の研究施設に移送するのだろう」
「そこで『ルーフェス』の探索を行うって事か」
「恐らく。アレがもし手に入れば、共和国の技術レベルは大幅に向上するのは間違い無い。内部情報の解析から実用化まで相当の時間が必要ではあれど、今後の戦況を一気に自国有利にできる可能性がある以上、奴らも本腰を入れているのだろう。まぁ、その前に『ルーフェス』が自身のデータを処分する可能性が高いと思うがな」
「誰かの手に落ちる位なら、自らでって判断する訳か」
「自身の存在が戦争の更なる激化に繋がると判断すれば、当然だろうな」
『ルーフェス』が星女を通して星託を与えていたのは、あくまで人々の事を考えてだ。自身の保有するデータを軍事的に利用しようと共和国が接触すれば、永久的に使えない様に自身諸共消滅させる未来は想像に容易いか。そうなった場合、星女は用無しとして何処かへ幽閉されるか、或いは……。
「そちら方面の情報も、引き続き集めてくれ。他にも情報は何かある?」
「任せろ。後はそうだな……、占領下にあるフォラフ自治国家の各地で、駐留する共和国軍へのテロ攻撃が多発している様だ。仕掛けているのは、元自治国家軍の軍人達で構成されるフォラフ解放戦線と名乗る組織らしい」
「なるほど、所謂レジスタンスの連中か。上手く共和国の目を引き付けてくれると、ありがたい」
「元は正規軍だけあって、連携が取れている様だ。地の利も彼らに有るし、鎮圧には共和国も手を焼くだろうな」
内側からレジスタンス、外側から我々が仕掛けるのが自治国家解放の理想的な形だろうか。とは言え、保有している武装も限られているだろうから、レジスタンスに過剰な期待は禁物だな。共和国と帝国の戦闘が更に激化してくれれば、付け入る隙も大きくなるが……。
「ちなみに、帝国の情報は何かある?」
「ふむ。先ほどのグルケニア海戦の裏で、どうやら連邦と何らかの取引が行われた形跡があった。実際、海戦前に連邦との戦線から戦力が抽出されているしな。詳細はまだ掴めていないが、両国が一時的な停戦を結んだやもしれん」
「帝国としては、先に共和国を叩こうって所か?」
「その可能性はある。とは言え、その連邦もまた政府や軍が決して一枚岩では無い。明日にでも破棄して帝国と再び矛を交えんとも言えないな」
「動きは流動的か……」
帝国、連邦、共和国による三つ巴の戦争。互いが互いを討つべき敵と認識しながらも、時に利害の一致から手を組む。その辺りを読み違えると、要らぬ損害を生むか……。
「引き続き、共和国以外の動きも探ってくれ。必要なら、人員も増やす」
「分かった。人員は一先ず足りているが、私がこれから分析室を離れる事を考えると増員が必要やもしれん。頼めるか?」
「勿論。必要な人数を教えてくれれば、直ぐに手配するよ」
「分かった。後で報告する」
よし、これでドクターとサウサンの報告は終わりだな。後はソフィーとシャンインの報告を聞けば、今日の打ち合わせは終わりで良いだろう。その前に、そろそろお昼ご飯だな。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。