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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2.5章:先を見据えて
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2.5-4:見据える先④

日常編は筆が進む進む。

 「サウサンの情報分析室ってのは、具体的には何をする所?」

 「読んで字の如くと言いたい所だが、実際は少し違う。分析室の設置に伴い、司令室の奥に設置されている中央管理AIの内、情報収集を専門に行っているAIが此方へと移設されている。基本的には各地の情報を収集し、解析と分析を行い行動予測等をたて香月に報告するのが主だ。一方で、意図的な情報の流布や改竄、妨害、削除等のあらゆるネットワーク上での情報戦を実施する。勿論、実際に敵地等へ潜入し様々な工作活動も行うぞ。言わば、非合法かつ非正規戦のエキスパートを束ねる部署と言えば良いだろうか」

 「なるほど。実力行使も伴う諜報機関って事か。人材は、サウサンと専用のアンドロイドだっけ?」

 「そうだ。此処の警備に当たっているアンドロイドと異なり、そう言った状況下での任務遂行に適した能力を付与されている。頼りになる存在だ」

 「なるほど。頼りにしてるよ?」

 「あぁ、泥船に乗った心算でいろ!」


 そこは大船だと思うよ、サウサン? 泥船は沈む。でも、拳で胸を叩いてドヤ顔しているサウサンが中々に可愛いので指摘するのは止めておこう。眼福眼福。オッサン、美人には弱いです。


 「サウサン達のデビュー戦は、目下フォラフ自治国家だな」

 「そうですね。パルメニア教団関連は一旦は保留して、先を目指した方が宜しいかと思います」

 「ですわね。宙賊に関しても今の陣容ならば手を出して来ないでしょうから、放置で良いかと」

 「ふむ、ならドクターに装備の依頼をしておこう。平行して情報収集と潜入工作の為の準備も開始する」

 「此方は問題ありませんな。サウサン嬢、必要な装備品の仕様書を提出して下され」

 「了解した」


 何だかんだ、此処も賑やかになって来たな。以前からナターシャ嬢やクロシバもいるけれども、秘密を共有出来るって意味では此処に居るメンツしかいないからな。後、年齢差はあれど同性のドクターが来てくれた事が地味に嬉しかったりする。クロシバだと話せない事もあったからね。さて、一先ず自己紹介も兼ねた雑談の時間は終わりだろうか。特段、今すぐ次のアクションって訳にもいかないので、暫くは雌伏の時になる。爪をしっかりと砥いでおこうじゃないか。


 「そうだ。ドクターに色々と相談したいんだけど、この後でも時間取れるかな?」

 「勿論です。此処か或いはラボで宜しいかな?」

 「では、ラボで話そうか。技術面での相談だから」

 「分かりました。では、お待ちしておりますので」

 「宜しく」


 自然な流れで解散になったので、ドクターにアポを取っておく。今回のシャングリラ宙域での戦いで色々と用立てておきたい代物が出来たからね。早めに開発を進めて次はキッチリお礼をしないと。




 「お待たせ、ドクター」

 「ようこそ、香月司令官。如何ですかな、初めて来られたラボは?」

 「勝手なイメージでは、機器類でもっとゴチャゴチャしているのかと思ってたよ」

 「ハハハッ。まぁ、そういった類のラボもあるでしょうな。此処は基本的な研究開発を行うフロア、実際の試作等を行う大型機器類は、この下のブロックに集約しております」

 「なるほど。フロア分けする事で効率も良くなるか」

 「そうですな。それで、技術面での相談との事でしたが?」


 そう、実際に此処に来た目的は、ドクターに色々と技術的な相談があったから。勿論、全部が実用化出来るかは不明だが、言うだけならタダだ。


 「此方へどうぞ」

 「ありがとう」

 「では、お話を伺いましょうか?」

 「一応、最低限の要望を纏めたレジュメを作成したんだけど」

 「拝見しましょう」


 端末に送れば一発ではあるのだけれども、何となくお願いする立場として印刷して手持ちにした。まぁ、ドクターはその辺を気にするかは不明だけどさ。礼儀って言う程の事でも無いけれど、何となくこの方が良いかなって思っただけだ。


 「1つ目は、艦艇及び兵器用の光学迷彩の開発。電子戦艦と合わせ、数的不利を覆す手札に欲しい」

 「ふむ、そうですな。開発は問題無く行えますぞ。形状としては、既存の表層装甲に装置を組み込む形が宜しいですかな?」

 「そうですね。それで良いと思います」 

 「畏まりました」


 1つ目は光学迷彩技術。元の世界では、アニメとかSF的な世界において描かれているが、現実的には未だ実用化には至っていない技術。敵のレーダー等を妨害する電子戦型は既に運用しているが、その為の妨害用装置とデコイの設置で艦自体の火力と引き換えになってしまっているだけで無く、人による目視では当然ながら友軍艦を発見されてしまう。今後は、電子戦を行う艦は前線からは下がらせ支援に徹しさせる一方で、前線艦には出来るだけ被弾率を下げる工夫をしておきたい。


 「2つ目は、電磁パルス兵器の開発。形状は、砲弾・ミサイル・魚雷を想定している。高度に機械化された軍艦を相手にする上で、最適な兵器だと思う。これまでは、艦橋やエンジンを直接叩かないと無力化とはいかなかったけれども、これならば至近弾でもそれが出来るんじゃないかと思ってさ。あくまで素人考えだけど……」

 「ミサイルや魚雷のサイズで考えるならば、有効範囲は精々半径100m前後と言った所ですな。砲弾だと更に狭まるかと。とは言え、命中すれば与えるダメージは大きいでしょう。対策を講じている艦もありますが、この世に完璧など存在しません。十分、効果は期待出来るかと?」

 「よし、これもお願いするよ」

 「お任せ下され」


 これも問題無い様だ。今回の戦闘で強く感じたのは、中々敵の数を減らせないって事。複数の命中弾を出しても、脚が遅くなる程度で火力面では脅威度が下がらない敵艦が多かった。かと言って、互いが高速で戦闘機動をしている状況では、艦橋やエンジンなどの主要部だけを狙い撃つのは厳しいのが現実。特に戦艦などの大型艦になると、複数の艦橋があったり、厚い装甲に覆われた艦内部に指揮所があったりと、無力化するまでの時間が更に掛かる。そう言った状況を打破出来る可能性が電磁パルス兵器にはあると思っている。


 「一先ずは、次で最後なんだけどね。現在、要塞に設置されている推進剤及び弾薬の生産プラントの一部機能を、外部へと持ち出す事って出来ないだろうか?」

 「此処以外のコロニー等に設置すると言う事ですかな?」

 「ん~、どちらかと言うと船体の大きい工作艦とかへの設置がベストかなって思ってる。現状の様に、要塞から前線までチマチマと補給艦で推進剤や弾薬をピストン輸送するのも良いけれど、今後更に遠くの宙域まで足を延ばす事を考えると、整備と補給に加えて生産まで可能な移動式拠点が絶対に必須だと思うんだ」


 推進剤や弾薬の補給だけなら、補給艦から行える。でも、被弾なりで損傷した艦艇や兵器類の修理は現状では要塞でしか行えない。損傷したら、その都度要塞まで艦艇や兵器を戻していたら物凄く効率が悪い。ガルメデアコロニーからですら、戦艦クラスともなると片道で1日半掛かるからな。修理に掛かる時間も考えると1週間近くは戦力外となってしまう。更に遠い宙域ともなれば、これが数週間或いは数か月になる事も十分考えられるのだ。そうなると、その無駄な時間を省きたいってなるのは自然な発想だろう。その為に、移動式の拠点をドクターには開発して欲しいと思っている。


 「なるほど。確かにこの要塞は移動出来ませんからな。必然的に遠くなる今後の前線を想定すると、艦隊や兵器類の整備・補給・生産までが一括して行える拠点艦の開発は必要でしょう。香月司令官の希望としては、整備能力と補給能力に加え、それらで必要となる物資の生産能力を持った艦艇と言う事で宜しいでしょうか?」

 「そうだね。そもそも、要塞機能の一部持ち出しが出来るのかって所から、検討する必要があるだろうけどさ」

 「では、そちらも含めて検討してみましょう」

 「サウサンの分もあるから、かなり忙しくなるとは思うけど、宜しく頼む」

 「必ずや、香月司令官の期待に応えて見せましょうぞ。開発状況は逐一、ご報告しますのでご安心を」

 「ありがとう」


 オッサンの目を見て、ハッキリと任せろと断言してくれたドクター。その姿は何と頼もしい事か。それに、今の所はマッドサイエンティストっぽい所も見えないし、これは成果に期待して良いのでは無いだろうか!? 流石に、あの管理者でもそこまで酷い人材を送っては来ないと思う。いや、信じているからね?

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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[一言] 工作艦っ!!
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