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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2.5章:先を見据えて
88/336

2.5-1:見据える先①

今回から間章となります。グダグダな日常をどうぞ!


※誤字報告、ありがとうございます。

 「一馬さん、少し良いでしょうか?」

 「ん?」


 ソフィーに声を掛けられたのは、あの敗戦から5日が経過した9月18日の昼過ぎの事。既に全戦力も要塞に帰投し、大規模な修理待ちが発生している。資源がガリガリと減って、オッサンの精神も併せて削られた。私室で今後の艦隊強化や資源のやりくりに頭を悩ませていたが、彼女に呼ばれるまま司令室へと顔を出したのだった。そこには、ソフィーとシャンインの他に、見知らぬ2人の男女が待ち構えていた。向かって左側の人物は、白衣と片眼鏡が特徴的な年配の男性。見た感じ、思わず教授かドクターって同じ意味だけどつい呼びたくなる風貌をしている。一方、右側の人物は褐色の肌に、青味掛かった黒髪の若い女性。眼光はソフィーやシャンインと比べると結構鋭く、何となく此方の一挙手一投足を観察されている気がする。でも、ソフィーとシャンインに並ぶ美人なのは間違いない。間違いない!


 「一馬様。新しく要塞に着任する2人を紹介しますわ。左がドクター・ラクランで、右がサウサンですわ」

 「初めまして、香月司令官。私はドクター・ラクラン。気軽にドクターとお呼び下され。私の着任に合わせて解放される幾つかのシステム上の機能や要塞設備についての運用と保守、それから工作艦の操艦を担当しますぞ。着任のご挨拶に工作艦を1隻持ってきましたので、是非とも有効活用して下され」

 「初めまして、ドクター。ちなみに、工作艦の操艦とは?」

 「文字通り、工作艦は私にしか操艦が出来ない様に管理者によって制限が掛けられる特殊な艦種ですな。勿論、香月司令官の指示に従って動かしますので、そこはご安心下され。後、解放されるシステムについては後ほどご説明の時間を頂ければと思います」

 「分かりました。よろしくお願いします」

 「此方こそ」


 如何にも好々爺って感じの穏やかなドクター・ラクランと握手を交わす。それにしても、工作艦が彼にしか操艦出来ないとはね。もし、彼が着任する前に工作艦をアンロックして建造したとしても、動かせなかったって事なのか……。何と言う地雷案件。


 「主に諜報活動を担当するサウサンだ。基本的に、直接現地へと潜入し、情報収集から破壊工作までを担当する。活動を支援する専用アンドロイドと、母艦となる潜航艦を持参した。香月には我々を有効活用して欲しい」

 「サウサン! 苗字とは言え、一馬様を敬称も無しに呼び捨てにするのは聞き捨てなりませんわ?」

 「シャンインに言われる筋合いは無いな。彼をどう呼ぶかは、私が決める事だ」

 「なっ!? 貴女ね……!」

 「シャンイン。ストップ、ストップ。ゴメンね、サウサン。呼び名は好きにしてくれて良いから」

 「一馬様!?」

 「シャンインの気持ちも嬉しいけど、俺としては別に構わないよ。此処は軍事組織みたいにお堅い場所じゃないから。勿論、組織としてある程度の上下関係みたいなのも、大事だとは思うよ? でも、彼女から特段軽視されているって訳じゃなさそうだしね」

 「むぅ……」


 膨れっ面のシャンイン可愛いよね!? サウサンとは初対面ではあるが、彼女の視線にオッサンを蔑む様な色は見えない。ただ単に、そういった性格ってだけなのだと個人的には感じる。恐らく、管理者の趣味だな。


 「先ずは、2人の着任を歓迎するよ。正直、人手が欲しいと思っていた所だしね? 工作艦に潜航艦も、今後の事を考えるとありがたい戦力だよ。で、取り合えず要塞で暮らす上で2人から何か要望とかあるかな?」

 「では、私から。詳しくは後ほど説明しますが、システム上で解放された『研究開発』及び『解体』の為の専用ラボに加え、解体場と再資源化設備の設置をお願いしたい」

 「研究開発拠点となる専用ラボに、解体場と再資源化設備ですね。サウサンは何かある?」

 「では、情報分析用の専用ルームの設置。それから、潜入工作用の各種機材の開発をドクターには頼みたい」

 「専用ルームに、ドクターに各種機材の開発と……」


 ソフィーやシャンイン達からは折を見て要望等を聞き出し、主に各自の私室や共有スペース関連を充実させている。その流れで2人にも聞いた心算だったが、帰ってきた答えは完全に仕事向けの要望だった。まぁ、2人がこれから業務に取り掛かる上で必要って事ならば、勿論設置しますけどね。


 「他にプライベートでは何か無い? 私室関係とかさ?」

 「特にありませんな。現状で、十分ですぞ」

 「同じく。メインが潜入工作ともなると、私室より機材や母艦の能力向上の方が遥かにありがたい」

 「なるほど。了解」


 ドクターは現状で十分で、サウサンはどちらかと言えば長く過ごす可能性のある母艦の充実を望むと。まぁ、此処で生活していく中で何か必要な物が見つかるかもしれないし、今後も時折要望を聞き出すとしよう。


 「後で、2人を他の要塞メンバーにも紹介するから。まぁ、彼らはお客さん的な立場だから絡みは少ないかもしれないけどね? それでも、立ち話位は出来る仲にはなって欲しいかなって個人的には思っているから」

 「分かりました。宜しくお願い致します」

 「香月の願いならば、従おう」

 「うん。2人共宜しく」


 改めて2人とそれぞれ握手を交わす。ドクターは柔らかく、サウサンは少し強張っている感じがした。表情には出さないけど、彼女なりに緊張とかしているのかもしれないな。まぁ、その辺は追々改善されていくと思う。


 「さて、一馬さん。2人の紹介はこれ位にして、次に進めても宜しいでしょうか?」

 「次って?」

 「管理者より、今回の一連の出来事に対する総括乃至総評が届いております」

 「前回あったヤツか。今回は評価低そうだな……」


 前回は確か着任した5月の末の事だった気がする。それから随分と時間が経ったものだな。さて、どの様な評価下されるのだろうか? 流石に、完敗しているし厳しい評価を受けるよな……。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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